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天体から飛来する超高エネルギー(1TeV=1000GeV=1012eV領域)のガンマ線を観測し、天体における超高エネルギー現象の正体を探ることが研究の目的です。高エネルギー粒子はどこでどのように加速されるのか、宇宙線の起源は何なのか、ということを解明しようとしています。
口径3.8mのガンマ線望遠鏡が、1992年からオーストラリアのウーメラで稼働しています(図1)。1999年
から口径 7mの望遠鏡も運転を開始しました(図2)。超高エネルギーガンマ線が大気中で放射するチェレンコフ光という青白い微かな光を、望遠鏡の主焦点に置いたカメラ(光電子増倍管)で捉えます。光電子増倍管の数は、口径3.8m望遠鏡で256本、口径7m望遠鏡で512本です。

図1 3.8m口径望遠鏡 |
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図2 7m口径望遠鏡 |
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研究の現況

パルサ−星雲からの超高エネルギーガンマ線の発見:
かに星雲からも、ガンマ線パルサ− PSR1706-44の星雲からも、帆座パルサ−の星雲からも、超高エネルギーのガンマ線が見つかりました(図3)。
ガンマ線はどうやら、超高エネルギー電子が宇宙背景放射のマイクロ波や赤外線をはね飛ばしてこれらにエネルギーを与える、「逆コンプトン効果」と呼ばれる現象から生まれているようです。ぶつかった電子自身もX線程度の領域の光子を放出していて、これをX線衛星が観測しています。我々が観測する子粒子の放出するガンマ線と、X線衛星が観測する親粒子の放出する光子とを比較研究することによって、さらにいろいろのことがわかるようになってきました。パルサー星雲では、磁場の強さや加速される電子の最高エネルギーが推定できるようになりました。かに星雲からは今まででもっとも高エネルギーの50TeVのガンマ線が検出されましたが、これは超高エネルギー陽子がそこで加速されて生まれたものであるらしいことが分かってきました。
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図3 |
帆座パルサ−からの超高エネル
ギーガンマ線の強度マップ |
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超新星残骸からの超高エネルギーガンマ線の発見:
西暦1006年に爆発した超新星SN1006 の残骸からも超高エネルギーガンマ線を見つけました(図4)。超新星残骸の起こす衝撃波で電子が加速されてガンマ線を放出したと考えられます。従来より、超新星残骸が宇宙線の起源ではないかと考えられてきましたが、初めてその証拠を捕まえたことになります。
カンガルー計画2:
1999年4月 から、7m口径望遠鏡によるカンガルー計画2が稼働を開始します。目標は、活動銀河などの激しく時間変化する天体を調べること、現在約100個見つかっているガンマ線の正体不明の源を探ること、新たなガンマ線バーストを見つけることです。現在までに見つかっている超高エネルギーガンマ線源は約10個ですが、これを桁違いに増やし、新しいタイプの超高エネルギー現象を見つけます。
カンガルー計画3:
1999年から、次期カンガルー計画3の準備が始まります。これは、10m口径望遠鏡を4台つないで、ガンマ線の検出精度を飛躍的に上げようという計画です。今まで難しかった、広がったガンマ線源の検出が容易になり、また、今までは銀河系内に限られていた超高エネルギー現象の研究を、銀河系外にまで広げることが可能になります。 |
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