手嶋 政廣 Prof. Dr. Masahiro Teshima

 
 

 超高エネルギーガンマ線天文学1

 

超高エネルギー宇宙ガンマ線(100GeV - 10TeV) による宇宙の研究は、HESS, MAGIC, VERITAS などの現在稼働中の地上チェレンコフ望遠鏡によりおよそ150の高エネルギー天体が銀河系内、系外に観測され、ここ数年の間に大きく進展した 新しい天文学の一分野です。電磁波の最も高いエネルギー領域であり、宇宙観測のエネルギーフロンティアと呼ぶのが相応しいといえます。











 チェレンコフ宇宙ガンマ線望遠鏡


宇宙からの超高エネルギーガンマ線は地球大気中に突入すると電磁カスケードを起こし、多数の電子・陽電子を作り出します。チェレンコフ宇宙ガンマ線望遠鏡は、これらの二次粒子からのチェレンコフ光を検出します。チェレンコフ光の光量はもとのガンマ線のエネルギーに比例し、現在の望遠鏡ではおよそ100GeV 以上のガンマ線が観測可能となります。検出面積は、およそ10万平方メートルと巨大です。ガンマ線の到来方向は 0.1度で、エネルギーはおよそΔE/E ~10%で決定することができます。下のアニメーションがガンマ線観測の原理をしめしています。




 観測対象天体


  1. 1.シェルタイプ超新星残骸殻

我々の近傍数kpc 以内にある、およそ10のシェルタイプ超新星残骸から、高エネルギーガンマ線が観測されている。銀河系内宇宙線の起源天体として注目されている。左の写真はカシオペア-Aで300年前に爆発を起こした超新星の残骸です。MAGIC, VERITAS は、カシオペア-Aから加速された宇宙線が相互作用し生成されたと考えられる高エネルギーガンマ線を観測しています。右の図は HESS で観測した高エネルギーガンマ線のイメージで、およそ3000年前に爆発した超新星の残骸RX J1713 です。

  


  1. 2.パルサー、パルサー星雲



3. 連星

 


4. 銀河中心大規模構造(Fermi バブル)



  1. 5.活動銀河核


   


6. ガンマ線バースト




 次世代チェレンコフ望遠鏡

この分野の研究を飛躍的に発展させるため、国際共同により従来の装置の10倍の感度と高精度を達成する究極的ともいえる超高エネルギーガンマ線観測施設チェレンコフ望遠鏡アレイ(CTA)の建設へむけて、その準備研究ををすすめています。2012年より特別推進研究 (高エネルギーガンマ線による極限宇宙の研究、研究代表者 手嶋政廣)により1台目の CTA 23m 大口径望遠鏡を建設することになりました。

 

                            CTA 23m 大口径チェレンコフ望遠鏡(3D-CAD)。2012 年からおよそ3年で建設予定。

                            ガンマ線検出エネルギー閾値を 20GeV まで拡げ、深宇宙の超巨大ブラックホール、

                            ガンマ線バーストを観測します。また、暗黒物質の対消滅からのガンマ線を探索します。



CTA は北半球と南半球に設置される2ステーションからなり、全天を観測できるAll Sky Observatory です。人類の宇宙観測におけるエネルギーフロンティアといえる高エネルギー宇宙ガンマ線を観測し、極限的宇宙の姿を明らかにします。研究目的は多岐にわたりますが、以下のようです。

  1. 1)超新星残骸、超巨大ブラックホール、ガンマ線バースト等の高エネルギー天体研究

  2. 2)高エネルギー天体での粒子加速、ガンマ線放射メカニズムを解明、宇宙線起源の研究

  3. 3)光・赤外背景光のエネルギー密度を測定し、宇宙における星と銀河の形成史の研究

  4. 4)宇宙を満たす暗黒物質の対消滅からのガンマ線を探索

  5. 5)究極の物理理論である量子重力理論の検証(相対論の精密検証)



[ 参考資料 ]

CTA-Japan パンフレット(2011)

CTA-Japan 計画書


 

現在までに発見された >100GeV ガンマ線源(銀河座標)。およそ150 の天体が超高エネルギーガンマ線により観測されています。中央が銀河中心であり、銀河面に沿って多くのガンマ線源が観測されている事がわかります。これらは、パルサー星雲、超新星残骸、ガンマ線連星などである。高緯度の天体は活動銀河核であり、銀河の中心部に巨大なブランクホール(太陽質量の1億倍程度)をもっているような天体である。(TeVCat より)

MAGIC ガンマ線望遠鏡(スペイン領カナリー諸島ラパルマ)。口径17m チェレンコフ望遠鏡2台からなる世界最大のチェレンコフ望遠鏡装置。手嶋は、研究代表者、共同研究チームの責任者をつとめてきています。