科学研究補助金 特別推進研究  (平成27年度~平成31年度)

拡張テレスコープアレイ実験-最高エネルギー宇宙線で解明する近傍極限宇宙
(TAx4)

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 研究目的

 背景

 宇宙線は宇宙を飛び交う高エネルギーの陽子や原子核であり、地球には宇宙線が絶え間なく降り注いでいる。宇宙線のエネルギースペクトルは、1010eVから1020eVまで10桁以上にわたってエネルギーのほぼ3乗のベキ関数で減少している。1019eVくらいまでは一様等方的に地球に到来しており、確認されている異方性は0.1%程度に過ぎない。人工の粒子加速器では決して到達しえない1019eV以上の宇宙線の起源は、現在の宇宙物理学における謎であり、最も重要な未解決テーマの一つである。

 本科研費の研究者等は、北半球で最大の宇宙線観測施設であるテレスコープアレイTelescope ArrayTA)を用いて観測中である。5年間の地表検出器(SD)データを用いた解析では、5.7×1019eV以上の最高エネルギー宇宙線の到来する方向が特定の領域に集中(約400%の異方性に相当)するホットスポットの兆候を見出したまた、5.7×1019eV付近以上で宇宙線の強度が急激に減少するカットオフを観測した。これは、最高エネルギー宇宙線が宇宙背景放射光子などと相互作用しシールドされて、その発生源が約2億光年(GZK地平線)以内に限られることを示唆し、GZK地平線内で最高エネルギー宇宙線の起源天体が同定できる可能性を示す、世界で初めての観測結果である。

目的 

 本研究では、最高エネルギー宇宙線に対する有効観測面積を現TA4倍にするTAx4計画を進め、特に地表検出器(Surface Detector: SD)の拡張建設を遂行する。TAx4は高い統計精度で北天のサーベイ観測を行い、エネルギースペクトルと質量組成の測定とあわせて、最高エネルギー宇宙線の到来方向の測定を行う。これにより最高エネルギー宇宙線を生む宇宙の極限現象・極限天体の研究を推進する。現TA507台のSD1.2km間隔で設置して約700km2をカバーする。現TAを運用しつつ、500台のSD2.08km間隔で設置して、合わせて約3000km2をカバーする。

TA5年間の観測で得た最高エネルギー宇宙線は72事象である。本研究では、これまでのデータと合わせて、研究期間内に現TAの約20年分に相当する約300事象を観測する。これにより以下の項目を明らかにする。

 方法

TAx4の配置図