東京大学 宇宙線研究所

チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ

ガンマ線観測プロジェクト

 当研究室では、ガンマ線観測によって様々な物理現象を解明することを目的として研究を行っています。現在、我々はチェレンコフ光によるTeVガンマ線観測プロジェクトに参加しており、また人工衛星で得られたGeVガンマ線観測データの解析も行っています。

地上TeVガンマ線望遠鏡 MAGICMAGIC
TeV(=1012 eV)という非常に高エネルギーのガンマ線を観測することが出来るチェレンコフ望遠鏡で、鏡の直径が17mと世界最大を誇ります。
フェルミ宇宙ガンマ線望遠鏡Fermi
GeV(=109 eV)というエネルギー帯域のガンマ線を観測できる人工衛星で、地球を周回しながら全天観測を行っています。
次世代超高エネルギーガンマ線天文台CTA (Cherenkov Telescope Array)CTA
CTA計画は、100台近くのチェレンコフ望遠鏡を3-10 km四方に配置するという大規模な超高エネルギーガンマ線天文台を建設する計画で、2020年頃からの本格的観測を目指している国際協力プロジェクトです。現在稼働中の望遠鏡よりも感度が10倍も向上し、数10GeVから100TeVという幅広いエネルギー帯域を観測することができるようになり、1000を超えるガンマ線天体が発見され、高エネルギー天体現象や宇宙の進化、さらには暗黒物質の正体などに大きく迫ることができると期待されています。

TeVガンマ線の検出原理について

ガンマ線の中でも更にエネルギーの高い、超高エネルギーのTeVガンマ線は、大気を検出器とし、地上の望遠鏡で観測することができます。これには空気シャワーという現象を利用しています。(高エネルギーの宇宙線やガンマ線が大気に入射すると、大気の原子核と衝突して2次粒子が生じます。この2次粒子が再び衝突を繰り返して粒子数が増殖していく現象を空気シャワーといいます。)TeVガンマ線が大気との相互作用で生まれた電子-陽電子対から始まる空気シャワーは、多数の高速荷電粒子を短時間の間に一度に放出します。この時大気中でチェレンコフ光が重なりあって発生し、可視光のフラッシュとなります。
これを観測するのが大気チェレンコフ望遠鏡の原理です。

続きを読む→

CTA

CTA完成予想図 CTA感度シミュレーション CTA(Cherenkov Telescope Array)計画とは、100台近くの 大気チェレンコフ望遠鏡 (観測原理→) を数km2に設置し、大規模な高エネルギーガンマ線天文台を建設しようというものです(図1はCTAの完成予想図)。現在、代表的なガンマ線天文台としては、宇宙空間において約100GeV以下のエネルギー帯域を観測しているFermi衛星が、地上においてTeV帯域を観測している大気チェレンコフ望遠鏡 MAGIC, VERITAS, H.E.S.S.などがありますが、CTAでは既存の大気チェレンコフ望遠鏡の感度を10倍以上向上させ、エネルギー帯域を20GeVから100TeV以上まで拡大することを目標としています。
これにより、1000を超えるガンマ線天体が見つかると予想され、ガンマ線天文学が大きく躍進すると期待されます。他にも、銀河系外宇宙線の起源、宇宙の星形成史、銀河系内外の様々な高エネルギー天体現象の解明や、現在観測されていないダークマター対消滅ガンマ線 (ガンマ線天体→) の観測、ローレンツ不変性の破れの検証など、天体物理学はもちろん、宇宙論、基礎物理学の発展にもCTAは重大な貢献をもたらします。
 現在、CTAの実現に向け、約30ヶ国から1000人を超える科学者が参加して開発や議論を行っています。CTAでは幅広いエネルギー帯域で高感度観測を実現するために、口径が異なる3種類の望遠鏡を用いますが、日本のグループは最も低エネルギー側を担当する大型望遠鏡LSTの開発を主導して行っています。LSTは直径が23mもある非常に巨大なものですが、重量が約50トンと軽量化されて機動性を備えており、突発天体の観測にも力を発揮します。開発の内容としては、鏡やその支持構造など光学系の開発、チェレンコフ光を検出するカメラ部で採用される光電子増倍管やその信号処理回路の開発や、モンテカルロシミュレーションによる感度計算などがあります。CTAは2020年頃に本格的な観測が始まりますが、2013年に設計デザインが固まり、その後試験観測に向けたプロトタイプ望遠鏡の建設開始が行われるという重要な時期にあり、学生のみなさんの活躍が大いに待ち望まれています。