High Energy Astrophysics Colloquium







Date Presenter Contents/Abstract
21.07.21
15:30-
荻原 大樹
(筑波大学)
"活動銀河核ジェットの準解析的一般相対論的電磁流体モデルで明らかにする物質密度分布"
活動銀河核(AGN)ジェットはVLBI電波観測により多くの空間分解撮像観測がされてきている。特にM87銀河に付随するジェットはEvent Horizon Telescopeによるブラックホールから数シュバルツシルト半径の領域の観測が計画されており、最上流の駆動領域の観測的制限が期待される。しかし、駆動領域においてシンクロトロン放射を担う加速電子の注入・加速機構は未だ不明である。本研究の目的は、この問題の解決に向けたアプローチとして、ジェットの理論モデルと最新の輻射輸送計算、そして高分解撮像観測を組み合わせることでジェット内部の物質分布を明らかにすることである。AGNにおける相対論的ジェットの駆動機構として銀河中心ブラックホールの回転エネルギーを電磁的に引き抜くモデルが有力視されている(Blandford & Znajek 1977)。近年、一般相対論的理想電磁流体 (GRMHD) シミュレーションが盛んに行われているが、加速電子の非熱的な注入・加速過程は未だ取り入れられていない。また、ジェット内部は超低密度になるため、数値的な不安定性が発生するためシミュレーションで扱うことは不可能である。そこで本研究では新たに準解析的な手法を用いてジェットの定常軸対称GRMHD近似解を構築した。シミュレーション結果と整合的な電磁場構造を用いてGRMHD基礎方程式系の磁力線に並行方向の成分を解析的に、垂直方向の成分を数値的に解くことでジェット駆動領域での物質密度分布を求めた(Ogihara, Ogawa, Toma 2021)。本発表ではこの研究結果について紹介する。この研究で得られたGRMHDデータをもとに輻射輸送計算を実行すれば、ブラックホール近傍のジェット撮像観測と直接比較し、加速電子の注入・加速機構が精査できると期待される。