High Energy Astrophysics Group Seminar




Date Presenter Contents/Abstract
17.03.09
15:00-
松本 達矢
(京都大学 天体核研究室)
"銀河系内のisolated Black Holeの検出可能性"
我々の銀河系内には、ブラックホール(BH)候補天体がおよそ20天体ほどX線連星として観測されている。一方、理論的には銀河系内には約10^8個のBHの存在が予言されており、これらのほとんどは現在まで我々の観測を逃れている。我々は特に銀河系内に単独で存在するBHに注目し、その観測可能性を調べた。単独BHの場合、BHは星間物質の降着により周囲に円盤を形成して輝くと考えられる。形成される円盤は降着率が低いため、いわゆる標準降着円盤とならず、光学的に薄い移流冷却優勢の円盤となる。我々はこの移流優勢円盤からのX線を評価した。そして、銀河系内に存在する様々な星間物質の相などを考慮し、単独BHのX線光度函数を計算した。本発表ではこの計算結果を述べ、観測が期待されるBHの個数、また他天体との識別方法などについて議論する。さらに時間があれば単独BHが突発天体を起こす可能性についても議論する。
17.02.16
15:00-
川口 恭平
(京都大学 基礎物理学研究所)
"Numerical Relativity Simulation on Black Hole Neutron Star Mergers"
Black hole-neutron star (BH-NS) binary mergers are among the most promising sources of gravitational waves, and the information provided by the detection of gravitational waves will surely open the door to the new aspects of the universe. Because the BH-NS binary contains a NS, electromagnetic counterparts would associate with the merger events.The simultaneous observation of electromagnetic counterparts and gravitational waves would provide rich information about the merger events. To maximize the scientific outcome for the merger events, the nature and the diversity of the BH-NS mergers should be clarified. Particularly, numerical-relativity simulation is the unique method to study the merger phase of BH-NS mergers quantitatively. In this talk, I’d like to briefly review the recent works on BH-NS mergers performing numerical-relativity simulations.
16.09.29
10:30-
川島 朋尚
(国立天文台)
"コンパクト天体への超臨界降着の輻射流体シミュレーション:超高光度X線源への応用"
超高光度X線源(以下ULX)の光度は、恒星質量ブラックホールのエディントン光度を有意に超えている。そのためULXでは、恒星質量ブラックホールへの超臨界降着(エディント限界を超える降着)が起きているか、あるいは中間質量ブラックホール(100 - 10,000太陽質量程度のブラックホール)への亜臨界降着が起きていると考えられていた。一方で最近、X線衛星NuSTARにより ULX M82 X-2において周期1.37秒のパルスが発見され(Bachetti et al. 2014)、少なくとも一部のULXでは中性子星への超臨界降着が起きていることが明らかとなった。ULXの中心天体が全て中性子星か、あるいはブラックホールであるものも混ざっているのか不明であるが、M82 X-2におけるパルスの発見により少なくとも一部のULXでは超臨界降着が起きていることが明らかとなった。しかしブラックホールや中性子星への超臨界降着流のダイナミクスや輻射スペクトルについては、未解明である。
そこで、われわれは軸対称2次元輻射流体シミュレーションを実施し、ブラックホールや中性子星の超臨界降着流のダイナミクスや輻射スペクトルを調べている。ブラックホール超臨界降着流に関しては、その輻射スペクトルがULXの観測的特徴をよく説明できる。そして中性子星極冠へ超臨界降着するガス柱は、その側面がエディントン光度の100倍程度で輝くことが可能でありM82 X-2の光度を説明できることがわかった。本発表では、超臨界降着とULXの研究に関する今後の展望についても述べたい
16.05.26
15:00-
加藤 ちなみ
(早稲田大学)
"前兆ニュートリノの親星依存性とその観測~超新星ニュートリノの包括的な研究へ向けて"
超新星爆発は、初期質量が太陽の8倍以上の重たい星が進化の最期に起こす爆発現象である。現在、どのような構造の星が爆発を起こすのか、どのようなメカニズムで爆発が起きるのかが主に議論の焦点になっている。1987年の超新星爆発の際に、爆発に付随するニュートリノが観測され、ニュートリノ天文学が幕を開けた。当時から30年経った現在、ニュートリノ観測の技術はめざましい発展を遂げ、より詳細な観測が可能となった。近い将来近傍で起きる超新星爆発の際に、未だに残された謎を解決すべく、より現実的な超新星ニュートリノの理論的な予想が求められている。本研究では、これまで独立に行われてきた大質量星の進化の3つの段階、親星の進化段階、超新星爆発段階、原始中性子星段階における超新星ニュートリノに関して、定量的に矛盾がなく、一貫した計算を目指す。
今回のセミナーでは、その一環として親星の進化段階において、どのような構造の星が超新星爆発を起こすのかに注目し、この段階に放出されるニュートリノである「前兆ニュートリノ」の観測が構造決定方法の有力な手段の一つであることを紹介する。