High Energy Astrophysics Group Seminar




Date Presenter Contents/Abstract
15.03.11
15:00-
木坂 将大
(KEK素核研)
"ショートガンマ線バーストの中心エンジンは長時間活動する"
ショートガンマ線バースト (SGRB) はガンマ線放射の継続時間が比較的短いガンマ線バーストの種族であり、その起源としてコンパクト星連星合体などが考えられている。中性子星連星、中性子星-ブラックホール連星合体の場合は強い重力波を伴い、次世代の重力波望遠鏡により直接観測が期待されることから、SGRBはその電磁波対応天体として注目されている。
SGRBはガンマ線放射の継続時間が短いにも関わらず、残光には長いもので ~10^4 秒のプラトー成分が検出されている。これは中心天体が同程度の活動時間を持つ可能性を示唆している。しかし、連星合体直後にブラックホールになってしまう場合の活動の特徴的タイムスケールはだいたい数秒以下と考えられている。そこで現在マグネターモデルが有力であると考えられている。
本研究では、中心天体がブラックホールの場合でかつ継続時間の長い放射を説明するモデルを提案する。連星合体後に形成するブラックホールは、合体前の中性子星の持つ ~10^12G 程度 のポロイダル磁場は維持していると考えられる。このとき、Blandford-Znajek機構により中心天体の回転エネルギーが引き抜かれ、ポインティングフラックスとして流出することが期待できる。この活動の継続時間はブラックホールを貫く磁束を維持できるかで決まり、合体後に放出される物質の一部が降着することによる圧力で決まる場合、~10^4s 程度の活動が継続される可能性があることがわかった。以上の挙動に加え、プロンプト放射、拡張放射(extended emission)なども含めたショートガンマ線バーストのエンジンに対するモデルを構築した。
14.06.25
15:00-
白川 慶介
(東大本郷)
"無衝突降着円盤における磁気回転不安定性と磁気リコネクションの相互作用"
磁気回転不安定性(MRI)は降着円盤円盤中において乱流を駆動し,乱流粘性による効率的な角運動量輸送に寄与する現象として1990年代より盛んに研究が行われている。従来の降着円盤研究では主にMHD近似が用いられ,円盤を構成するガスの無衝突性は考慮されていなかった。 しかしながら,近年の観測により我々の銀河中心に位置するSgrA*を構成するブラックホール周縁の降着円盤などでは,イオンと電子の温度が異なる事が指摘されており,それゆえ円盤を構成するプラズマの無衝突性が重要であると考えられている。
無衝突プラズマに置いてはクーロン衝突による粒子速度分布の等方化が有効に働かない為,磁場の平行方向と垂直方向の温度が異なる場合がしばしばみられる。この温度異方性がMHDスケールでは磁気張力に修正を加えるため,MRIの線型・非線型発展にもまた修正が加わると考えられてき た。 現在までにこうしたプラズマの無衝突性を考慮したシミュレーション研究は,状態方程式を修正した"無衝突MHD"計算と,プラズマを構成する全粒子の運動を計算するPICコードによって行われてきた。 いずれの計算でもMRIの発展は確認され,特に無衝突MHD近似では長時間の計算によって角運動量輸送効率が評価されている。このように無衝突MHD計算は大規模かつ長時間の計算に適しているものの,プラズマの無衝突性は適当なモデルを通してしか取り扱うことができない。 一方でPICコードはプラズマの無 衝突性を自己無撞着に取り入れられるものの,取り扱える時間/空間スケールが限定されるため,MRIのような大規模かつ長時間の計算が要求される問題に対しては,計算資源の観点から依然として困難がある。
本研究ではPICと無衝突MHDのスケール差を埋める回転系Hybridコードを新たに開発し,MRI並びに回転系における磁気リコネクションの数値実験を行っている. 2次元子午面のMRI数値実験からは,従来のMHD計算と同様に非線型段階でチャネル流が形成される一方で,チャネル流が磁気リコネク ションによって壊れ,磁気島が形成されるというPICコードと調和的な結果が得られている。 また2次元子午面の回転系磁気リコネクションの数値計算からは,回転の影響によって磁気リコネクションが非対称に発展していく様子が観察されている。セミナーではこうした結果を紹介し,それらが無衝突系における磁気回転乱流に与える示唆について議論したい。
14.06.12
15:00-
横山 修一郎
(理論グループ)
"インフレーション理論と原始重力波;BICEP2の結果が示唆すること"
先日のBICEP2による、原始重力波発見か?という報告を受けて、様々な分野から一躍注目を浴びた、宇宙マイクロ波背景輻射(CMB)の偏光観測による原始重力波探査ではあるが、今後、今秋にはPlanck collaborationによる偏光観測の報告などが予定されておりますます目が離せない状況である。 本セミナーでは、まずその原始重力波の生成メカニズムとして有力なインフレーションについての簡単なレビューから始め、原始重力波の生成、どのように観測されるか?、そして今回のBICEP2の結果がもたらすインフレーションへの示唆について紹介したい。
14.05.28
15:00-
寺木 悠人
(理化学研究所)
"相対論的電子からの放射スペクトルへの乱流電磁場の影響"
天体の放射領域では乱れた電磁場が様々なプラズマ不安定で発生していると考えられているが、乱流電磁場が放射スペクトルに与える影響については十分に理解されているとは言い難い。本発表では乱流電磁場中を運動する電子からの放射スペクトルについて現状の理解を概観する。乱流のスケールが非常に小さい場合の放射である”ジッター放射”のレビューから始め、 近年私が研究してきたより一般的な乱流電磁場の場合の放射スペクトルの数値的計算の結果を紹介する。乱流の空間スケールが放射スペクトルの特徴的振動数の光子形成長に近い場合、または乱流の時間変動のスケールが光子形成時間に近い場合には放射スペクトルの形状はこれまで考えられていたよりも豊かなバラエティをもつ。このようなパラメータレンジでの放射スペクトルは今まであまり分かっていなかったが、一連の研究により明らかになった。解析的手法を用いたこれらのスペクトル形状の物理的解釈も合わせて紹介する。