1暗黒物質とは何か? どのような証拠があるのか?
暗黒物質は、光を出したり吸収したりしないため望遠鏡では直接見えません。しかし、星やガス、銀河の運動、光の曲がり方、初期宇宙の温度ゆらぎを調べると、見える物質だけでは説明できない重力源が必要になります。
通常の物質は原子でできていますが、暗黒物質はそれとは異なる未知の粒子である可能性が高いと考えられています。宇宙全体では、物質成分の大部分を占める重要な存在です。
暗黒物質は「光で見る」のではなく、「重力の効果から推定する」物質です。

銀河の回転曲線
銀河の外側でも星やガスの回転速度があまり落ちません。見える物質だけなら速度は下がるはずなので、銀河を包む暗黒物質のハローが必要になります。

宇宙マイクロ波背景放射
CMBの微小な温度ゆらぎには、宇宙の物質量の情報が刻まれています。その解析から、通常の物質だけでなく、非バリオンの暗黒物質が必要であることがわかります。

銀河団衝突
銀河団同士が衝突すると、高温ガスと、重力レンズから推定される質量分布がずれることがあります。これは、暗黒物質が通常物質とは異なる振る舞いをすることを示す強い証拠です。
2WIMPの熱残存仮説とは?
WIMPは、弱い相互作用をする重い粒子で、暗黒物質の最有力候補です。初期宇宙が高温だったころ、WIMPは生成と対消滅を繰り返し、熱平衡にありました。


最終的に残る暗黒物質の量は、WIMPの質量と対消滅の強さ、すなわち断面積に依存します。対消滅断面積が約 3 × 10−26 cm3 s−1 のとき、観測される暗黒物質量と一致します。一方、WIMPの質量がGeV-TeVくらいだとすると、弱相互作用から期待される対消滅断面積も10−26 cm3 s−1 程度になり、この一致はしばしば「WIMPミラクル」と呼ばれます。
3CTAO北サイトのLST4台で、銀河中心を300時間観測すると、検出できる可能性がある
WIMP同士が銀河中心付近で対消滅すると、ガンマ線や電子・陽電子などが生じる可能性があります。銀河中心は暗黒物質密度が高いと期待されるため、間接探索の重要なターゲットです。

LST(Large-Sized Telescope)は20 GeVから10 TeVまでのガンマ線に高い感度を持つ望遠鏡です。4台を組み合わせることで、暗黒物質探索に必要な感度を高めます。さらに、小さい仰角での観測をすることで、1 TeV以上の感度をさらに向上させることもできます。

青い破線は熱残存仮説で期待される代表的な対消滅断面積です。SUSY Higgsinoは1 TeV, SUSY Winoは3 TeV程度の質量であるという宇宙論的な示唆があります。3 TeV Winoの場合、低速になった現在ではSommerfeld 効果が効き、対消滅断面積は増大します。対消滅CTAO北サイトのLST4台で銀河中心を約300時間観測すると、SUSY HiggsinoやSUSY Winoのような特定のWIMPの場合検出が可能です。
4WIMP以外の暗黒物質候補もTeVガンマ線で探索可能
暗黒物質の正体には、非常に軽いAxion-Like-Particle (ALP)から、原始ブラックホールまで、さまざまな可能性があります。それらもTeVガンマ線で探索可能です。