梶田 隆章 (Takaaki Kajita)

     東京大学 宇宙線研究所
     宇宙ニュートリノ観測情報融合センター

〒277-8582 千葉県柏市柏の葉3-2-1
東京大学 宇宙線研究所 203号室
Tel : 0471-36-5104
Fax : 0471-36-3126
E-Mail :
kajita@icrr.u-tokyo.ac.jp


現在の研究分野


現在の研究は主に宇宙線が大気中で生成する大気ニュートリノの観測、そのデータをもちいたニュートリノ振動と質量の研究です。この研究のために50000トンの純水をもちいたスーパーカミオカンデ装置で大気ニュートリノを観測しています。ご存じの方も多いかもしれませんが、既にこの観測によってミューニュートリノとタウニュートリノ間のニュートリノ振動の画期的かつ決定的な証拠が得られています。今後はよりデータを増やし、またデータ解析の方法を改良して、より精度よくニュートリノの質量やニュートリノ間の混合角を決定し、大統一理論などの素粒子物理学の本質的な発展に貢献したいと考えています。

今後、ニュートリノ振動と質量の研究の精度を飛躍的に高めるため、茨城県東海村に建設中のJHF加速器と、スーパーカミオカンデをもちいたニュートリノ振動実験の準備研究を行っています。この実験が始まれば、ミューニュートリノとタウニュートリノ間の質量差や混合角の決定精度が格段に上がり、大統一理論の発展に大きな貢献をするでしょう。また、この実験では、今まで全く測られていない電子ニュートリノとタウニュートリノ間の混合角も測定されることが期待されてます。これも測られれば画期的な成果です。

ところで、この宇宙には物質はありますが、反物質はありません。この謎を解く鍵がニュートリノ振動の研究のなかにあることが近年わかってきました。もし、ニュートリノ振動の様子がニュートリノと反ニュートリノで違えば、この宇宙の根本的な問題を解決できるのです。しかしこれは簡単な実験ではなく、おそらくスーパーカミオカンデよりさらに20倍くらい大きいニュートリノ検出器(ハイパーカミオカンデ)が必要だと考えています。この研究のための基礎研究も行っています。

また、大気ニュートリノの観測データをもちいて素粒子の大統一理論で予言されている陽子の崩壊も探索しています。現在のところまだ陽子崩壊は観測されていませんが、理論的にはもういつ観測されてもおかしくないはずで、今後の観測が期待されます。また、上で述べた更に大きな測定器(ハイパーカミオカンデ)ができれば陽子崩壊を観測できる可能性が飛躍的に高まると期待されています。

最後に、長年問題になっている「消えた太陽ニュートリノの問題」もおそらくニュートリノ振動が原因で観測されたニュートリノの数が少なかったのであろうと考えられています。この問題を決着させるため、低エネルギー太陽ニュートリノ実験の基礎研究にも参加しています。

 

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