手嶋 政廣 Prof. Dr. Masahiro Teshima

 
 

 超高エネルギーガンマ線天文学2

 

CTA (Cherenkov Telescope Array) は、超高エネルギーガンマ線による宇宙・素粒子の研究を飛躍的に進展させます。従来の望遠鏡と比べ高感度であるだけでなく、角度分可能、エネルギー分解能も向上し、銀河系内、系外に1000 を超える天体が発見され、より高い質のデータにより詳細な研究が可能となります。






 超新星残骸殻







 
 
 
 







 活動銀河核


宇宙には極めて高い活動性をしめしている銀河が存在します。このような銀河は活動銀河と呼ばれ、相対論的なプラズマジェットをその中心部から放出しています。これらの銀河のうち、太陽の1億倍の質量をこえるような巨大なブラックホールを持った天体からは、大量のガンマ線が放射されています。中心ブラックホールに落ちてゆくガスの重力エネルギーが運動学的なエネルギーに変換され、極めて効率よくプラズマジェットが放出されています。これらのプラズマ流で衝撃波が発生し、宇宙線が加速され、それらが周囲の輻射場と相互作用し、ガンマ線が生成されます。このような天体は宇宙線を極めて高いエネルギー(10^20電子ボルト)まで加速している可能性があると考えられます。下図(左)は活動銀河中心核の想像図。  下図(右)は >100GeV ガンマ線源である活動銀河中心核M87。相対論的プラズマジェットが観測されている。


 



 ガンマ線バースト


宇宙では、1日に数回ガンマ線で極めて明るいバーストが起こる。継続時間は数秒の短いものから数時間という長いものまで観測されている。多くのガンマ線バーストは宇宙論的な距離で起こっています。「ビッグバンに次ぐ宇宙の大爆発」と称されるとおり、その放出エネルギーは極めて莫大であり、どのような天体が、どのようなメカニズムでこのような大爆発がおこすのか、未だに多くの謎に包まれています。CTA では、今までにない高精度でガンマ線バーストを検出することを目標としています。チェレンコフ望遠鏡では、今までの衛星実験と比べ1万倍以上の検出面積を有し、10GeV領域で、極めて高い統計でエネルギースペクトル、時間変動を観測し、ガンマ線バーストの謎に迫ります。

ガンマ線バーストそのものの研究以外にも、宇宙論的な距離を飛来する超高エネルギーガンマ線を使うと様々な研究ができます。宇宙を満たす赤外背景放射量の測定が可能となり、宇宙での星形成史の研究ができます。さらには、ガンマ線が伝播してくる真空の構造を研究(高精度での相対性理論の検証)をおこなうことができます。


下図はガンマ線バーストの想像図




 

上は HESS望遠鏡 による銀河面サーベイ。下はCTA による銀河面サーベイのシミュレーション。より多くの天体(超新星残骸等)のより詳細な形状が観測されることになる。

超新星残骸からのガンマ線放射のスペクトル。数百年(黄色)、数千年(赤色)、数万年(青色)と年齢をへるにつれて、ガンマ線のスペクトルが時間とともに変遷していることがわかる。このような結果を、超新星残骸のシミュレーションと比較することにより、超新星残骸での宇宙線加速のメカニズムが解明されつつあります。

>100GeV ガンマ線で観測されたシェル型超新星。左から CAS-A (300yr), RX J1713 (1000年), IC443(1万年), W51(3万年)。これら超新星では、超新星衝撃波により加速された宇宙線が、周囲のガスと衝突し超高エネルギーガンマ線を放出しています。これらの超新星は比較的、近傍のものですが、CTA では銀河内の主な超新星が観測対象となり、銀河内を占める宇宙線を超新星ですべて説明できるのかという疑問に応える事になります。