ダークマター(暗黒物質)

ダークマター(暗黒物質)とは、宇宙に存在すると考えられている、光などの電磁波で観測できない未知の物質を指す言葉です。
2013年に公表された観測結果によると、宇宙全体のエネルギー密度のうちダークマターは約27%を占めています。Planck衛星による宇宙背景放射の観測に基く宇宙のエネルギー密度(2013年3月発表) さらにダークエネルギーと呼ばれる未知のエネルギーが約68%あり、私たちの知っている通常の物質は約5%でしかありません。

その正体はいまだ謎に包まれています。
最有力候補とされているのが超対称性理論によって予言されているニュートラリーノという粒子です。 ニュートラリーノはマヨラナ粒子(粒子と反粒子が同一であるフェルミ粒子)であり、ニュートラリーノ同士が衝突・対消滅を起こして電子・陽電子対やガンマ線を生成する反応が起こっていると予測されます。ニュートラリーノの対消滅から中間状態の粒子を経てガンマ線や各種の粒子・反粒子対が生成される様子
理論的に、ニュートラリーノの質量は100GeVから数十TeVの範囲であることが期待されており、対消滅によって発生するガンマ線はまさにCTAが狙うにふさわしいターゲットと言えます。 近年の観測によって約10GeV以上のエネルギーにおいて、標準的なモデルでは高エネルギーになるほど小さくなるはずの陽電子のフラックスが増大していることが明らかにされました。 しかしこれがダークマターによるものなのか、それともパルサーなどの天体に由来するものなのかは分かっていません。 ガンマ線による観測であれば、磁場の影響を受ける陽電子と異なり発生源を突き止めることができるため、この問題に決着をつけることが出来ると期待できます。