1987年2月23日、今からちょうど30年前、地球から16万光年離れた大マゼラン星雲でおきた超新星爆発SN1987Aにともなうニュートリノが地球に到来しました。スーパーカミオカンデの前身の検出器カミオカンデは、SN1987Aから放出されたニュートリノを11個検出しました。超新星爆発からのニュートリノを検出したのは世界初であり、この検出により、超新星爆発の仕組みの解明が大きく前進しました。また、2002年には小柴昌俊 東京大学特別栄誉教授がこの功績に対し、ノーベル物理学賞を授与されました。
超新星爆発ニュートリノとは?超新星爆発SN1987Aの爆発前(右)と爆発後(左)
© アングロ・オーストラリア天文台/Daved Malin撮影
カミオカンデ検出器は、岐阜県吉城郡神岡町(現 岐阜県飛騨市神岡町)の地下1000mに設置された、直径高さ16 mの円筒形の検出器で、内壁に1000本の世界最大の光電子増倍管(光センサー)が取り付けられていました。(現在はその跡地にKamLAND検出器が置かれています。)小柴昌俊先生が計画、主導され1983年から観測を開始しました。本来、陽子崩壊を検出する目的で建設されましたが、太陽ニュートリノの観測もできるように検出器の改造に取り掛かりました。改造を終え、太陽ニュートリノの観測を開始したのは、1986年の暮れ頃のことでした。
カミオカンデ検出器内で作業する小柴先生
" SENSATIONAL NEWS ! "
超新星爆発SN1987Aが肉眼で観測された2日後の2月25日、一通のFAXが届きました。ペンシルバニア大学から東京大学へ超新星爆発を知らせる内容でした。戸塚洋二先生はすぐに、カミオカンデのデータが記録された磁気テープを送るように神岡の研究者に連絡しました。(当時はネットワークが発達していなかったので、データは物理的に宅配便で送られていました。)
ペンシルバニア大学から届いたFAX
データのプリントアウト(赤と青と灰色のサインを加筆)。横軸は時間(右から左へ流れ、1列は10秒に相当)、縦軸は各事象の光を検出した光電子増倍管の本数(事象のエネルギーにほぼ比例)を表す。赤で示したピークがSN1987Aのニュートリノからの信号。その数分前にメンテナンスのため運転を止めた空白がある。
3月2日朝、解析を終えた中畑先生が小柴先生に報告すると、「他に同じような信号がないか全てのデータを解析せよ」との指示がでました。そして箝口令がしかれた中、3月2日から6日にかけて43日分のカミオカンデのデータを解析し、このようなピークは超新星爆発SN1987Aからの信号しかないことを証明し、論文として発表しました。論文作成に携わった研究者のサインが残っています。
カミオカンデの超新星爆発ニュートリノの発見がきっかけとなり、ニュートリノ研究の重要性が認識され、タンクを巨大化したスーパーカミオカンデの建設が認められました。1996年からスーパーカミオカンデは観測を開始し、1998年にはニュートリノ振動を発見しました。その功績により2015年には梶田隆章教授がノーベル物理学賞を授与されました。また、K2K実験、T2K実験、KamLAND実験など、現在日本を始めとして世界中でニュートリノ研究が盛んに行われるようになった発端は、SN1987Aだったのです。
今銀河系内で超新星爆発が起これば、30年前の約1000倍のニュートリノをスーパーカミオカンデでとらえることができます。そうなれば、超新星爆発のメカニズムの詳細が明らかになり、星や宇宙についての理解が進むと期待されています。超新星爆発は私たちの銀河内で30年〜50年に1回の頻度で発生すると考えられています。もう間もなく、次の瞬間にも超新星爆発が起きるかもしれません。超新星爆発ニュートリノがやってくるのはわずか10秒間のみ。その一瞬を逃すまいとスーパーカミオカンデは休むことなく観測を続けているのです。
24時間休むことなく観測を続けるスーパーカミオカンデ
2017年2月11—12日、ハイパーカミオカンデなど次世代のニュートリノ検出器で超新星爆発ニュートリノ検出を目指す研究者が集まり、課題や成果を発表する国際研究会が東京大学本郷キャンパスで行われました。そのときの様子はこちらからご覧ください。
国際研究会「Supernova at Hyper-Kamiokande」を開催しました Workshop on Supernova at Hyper-Kamiokande