吉村太彦 (岡山大学)
ニュートリノ質量分光実験

ニュートリノ質量分光実験(通称 SPAN, SPectroscopy of Atomic Neutrino) は、実験標的を原子または分子に絞り、その脱励起として存在が確実視される、 光子+ニュートリノ対放出 (RENP, Radiative Emission of Neutrino Pairs) を発見し、その光子スペクトルや偏極度などの測定により、次のニュートリノ 質量行列要素を決定することを目的とする:

  1. ニュートリノ質量絶対値、または最少質量の決定
  2. 質量混合パターン、 inverted or normal hierarchy の決定
  3. 質量タイプ、マヨラナ型かディラック型かの決定
  4. マヨラナ的CP位相を含むCP非保存の確定

当セミナーでは、その実験原理、そのために必要なレート増幅のマクロコヒーラ ンス機構、ニュートリノ質量情報の決定方法、を説明する。 マクロコヒーランス増幅機構はニュートリノ質量分光計画にとり核心的コンセプ トと位置付けられるが、これを量子電磁力学過程である二光子対超放射過程(PSR, Paired Super-Radiance)を用いて実験的に検証した。これにより、第一段階目標 である原理検証実験は終了し、 今後PSRの増幅度増大やその制御及びRENPへの 移行過程研究、更には原子ニュートリノ検出実験へと進展する。当セミナーでは、 添付の公表実験結果(*)に加えて最新の進捗状況及び今後の実験戦略を報告したい。

(*) “Observation of coherent two-photon emission from the first vibrationally-excited state of hydrogen molecules”, arXiv:1406.2198v1 [physics.atom-ph] 9 Jun 2014