銀河および大気宇宙線の絶対流束の測定


灰野禎一


東京大学理学系研究科物理専攻


Abstract


気球を使った宇宙線観測実験 (BESS) での測定エネルギー範囲を拡大し、 銀河宇宙線陽子、及び、大気宇宙線ミューオンのエネルギースペクトルを、 それぞれ、1-540 GeV、及び 0.6-400 GeV/c の範囲で得た。 運動量分解能を一桁近く向上させるため、新しい飛跡検出器(ドリフトチェンバ)を 開発し、BESS-TeV 測定器としてアップグレードさせた。 2002年にカナダ北部 Lynn Lake で約一日間の気球観測を行ない、 測定器は設計通りの性能を発揮し、Maximum Detectable Rigidity (MDR、運動量分解能が 100% になる rigidigy を指す) として 1.4 TV を達成した。 これは MDR が 200 GV であった 以前の BESS 測定器を含め、 過去の宇宙線観測用スペクトロメータの中で、最高の性能である。 今回得られた結果は、カロリメータやエマルジョンを用いた、TeV 領域に おける銀河宇宙線直接観測結果と相補的な役割を担い、宇宙線の起原と伝搬を研究する上で、 重要なデータとなるばかりでなく、大気ニュートリノの入力スペクトルを 精度良く決定する為にも大きな貢献となる。