第19期物研連原子核専門委員会議事メモ                  文責 渡辺靖志


日時 平成15年11月11日(火)13:30-17:00
場所 日本学術会議
委員 二宮正夫、藤川和夫、小林誠、土岐博、堀内昶*、大塚孝治*、谷森達、
      福島正己*、鳥居祥二、木舟正*、吉村太彦*、駒宮幸男、高崎史彦、西川公一郎、
      渡辺靖志、武田広*、黒川真一、酒井英行*、本林透、橋本治、延与秀人、
      上坪宏道(4部会員)、
      村木綏*、小山勝二*、山中卓、永宮正治*(IUPAP専門委員) (* 欠席)
1.議長、幹事選出
  上坪第4部会員の司会のもとに委員長の選出を行ない、二宮正夫委員(京大基研)
  を選出した。
  次いで、新委員長の司会の下に、各グループの幹事として,理論は土岐博(阪大核理
  センター)、実験核物理は橋本治(東北大)、素粒子実験は渡辺靖志(東工大)、宇宙線
  は鳥居祥二(神奈川大)の各委員を選出した。原子核専門委員会の幹事として渡辺委員
  を選出した。
2.報告
  1)研究所、センター、コミュニティ報告
     基研(二宮:添付1.)
     KEK素核研(小林:添付2)
     RCNP(土岐:添付3)
     宇宙線研(吉村:添付4)
     素粒子センター(駒宮:添付5)
     理研(本林:添付6)
     CRC(鳥居:添付7)
     高エネルギー(西川:添付8)
     核談(延与:添付9)
     理論(二宮:添付10)
  2)IUPAP(山中)
   アメリカのVISA審査の遅れの影響が出ているので、アメリカ政府宛て要望書を提出
   する。
3.討論
・大学附置研究所及びセンターは大学法人化後は省令化されないため、全国共同利用
   及び国際協力を含め、役割は各大学の中期目標において決められ、財政は運営交付
   金で運営することになる。この場合、これまでのような共同利用は困難となる危惧
   がある。
・比較的高額の実験計画の概算要求が出来る方策について議論があった。
・JーPARCに関する文部科学省の評価が実施中で、11月中に方針案が出る予定。
・総合科学技術会議の査定に対し、高エネルギー委員会が要望書を送付した。
・今期の核専委において、引き続き大学附置研の共同利用と財政問題を検討すること
   とした。


添付資料
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添付1
基研報告(二宮正夫委員)
1.人事異動(4月1日より)
  着任:九後太一所長、佐々木節教授(宇宙)、戸塚圭介助教授(物性)、
          杉本茂樹 助手(素粒子)
          また、2004年に太田教授(統計物理)が広大より転任予定。
    退官:益川教授(前所長)
  転任:古崎助教授 -> 理研
2.国際会議
    Strings2003は無事終了した。2004年11月に「強相関電子系の物理」の
   滞在型国際会議を開催予定。
3.所員公募
   宇宙物理助教授公募(10月15日に締め切り)審査中
4.創立50周年記念行事
   12月8、9日に記念シンポジウム
   12月8日午後に記念講演会(南部、佐藤)、式典、祝賀会
5.21世紀COE
   物理学教室、宇宙物理学教室とともに「物理学の多様性と普遍性の探求」
   (拠点リーダー;小山勝二)が採択され、PDF、ビジターの受け入れ、
   国際会議開催等で活動中。
6.将来計画アンケート
   将来計画について議論中、50周年シンポでディスカッションを予定。
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添付2
素粒子原子核研究所報告(小林誠委員)
1.人事異動
   着任 6/1 助手(BELLE) 西田昌平
           9/1 助手(BELLE) 中村 勇
          10/1 助手(ZEUS) 長野邦浩
          10/1 助手(J-parc) 豊田晃久
      昇任 5/16 教授(BELLE) 幅淳二
      配置換 5/1 助教授(PS実験) 千葉順成(推進部へ)
      転出 8/1 助手(PS実験) 応田治彦(理研研究員へ) 
2.法人化関係
  文部科学省のもとに大学共同利用機関法人化準備委員会が置かれ、この下の高エネ
  ルギー加速器研究機構検討委員会でKEKの法人化に関する重要事項を審議することに
  なった。検討委員会の委員長は山崎敏光氏、副委員長は松下正氏。この検討委委員
  会で初代機構長の選考や主な組織の検討を行ってきた。
  また、KEK内の準備委員会のもとに多くのタスクフォースが置かれ、準備作業を進め
  ている。9月末に中期目標・計画の素案を提出した。従来の運営協議会に相当する
  機能をもつ運営会議を各研究所、加速器・共通施設に置く。
3.研究活動
  KEKBはデザイン値である1034s-1cm-2を越えるルミノシティを記録した。BELLEグルー
  プは夏のシャットダウンまでに158.7fb-1のデータを収集した。φKsモードで標準
  模型からのずれを示唆。ψ(3872)の発見など。
  K2Kは再開後、夏のシャットダウンまでに1.5x1019POTのデータをとり、16 events
  を観測。振動無しの場合の期待値は26.6+2.3-2.6。νμ→νe appearance 1事象
  (期待値2.4事象)を観測。
4.総研大
  数物科学研究科は来年度より3研究科に分割する。KEK関係は、素粒子原子核専攻、
  物質構造科学専攻、加速器科学専攻よりなる高エネルギー加速器科学研究科となる。
5.日米科学協力事業
  5年ごとの評価を今年度実施する。評価委員会を設置した。(委員長:中井浩二、
  委員:井上真、潮田資勝、小林富雄、吉村太彦、渡辺靖志)
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添付3
大阪大学核物理学研究センター報告(土岐博委員(センター長))
 1. 報告に先だって、学術会議の全国共同利用研究所・センターについての重要性を
    訴えた声明に心から感謝します。
 2. 21世紀COEは理学研究科の物理学専攻科に協力して採択された。主に補助金は大学
    院の学生の研究活動に使う予定である。
 3. 16年度概算要求としてサイクロトロンの更新が大阪大学からの申請事項として財
    務省に要求されている。
 4. 5つのクォークで出来たバリオンを発見した。ネイチャー・サイセンスに特別記事
    として取り上げられた。世界からの注目を集めている。
 5. 入射サイクロトロンの更新のための開発研究で、その加速の様子を理論的に記述
    することが可能になり、分解能を2倍あげることが出来た。
 6. 原子核の記述にパイ中間子の重要性が理論的に指摘された。
 7. 21世紀COEに伴って。ポストドクター2人とRA2人を採用した。
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添付4
宇宙線研究所報告(文責 吉村太彦委員)
・人事関係
 カンガルー教授 森、神岡助教授 森山、SDSS助教授 安田の各氏が既に着任済み。
   COE 研究員2名を教官人事選考に準じて行い、竹田、難波の両氏が既に着任済み。
・次期所長の選考: 共同利用運営委員による推薦を11月7日しめきりで受け付けた。
   次期共運委(11月27日開催予定)で審議予定。
・乗鞍50周年記念式典が9月20日に行われ、約130名の参加をえて盛会であった。
・10月2日に柏アミュゼで小柴教授ノーベル賞受賞記念一般講演会が開催された。
   約7倍の競争率で抽選に残った、中高生、一般市民が押し掛け盛況であった。
・平成16年度の文科省から出た概算要求は、附置研究所にとって厳しく、新規事業
   はほとんどゼロ査定だった。宇宙線研のSK全面復旧は継続で順調に進んでいる。
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添付5
東京大学素粒子物理国際研究センター(ICEPP)(センター長 駒宮幸男委員)
  素粒子物理国際研究センターは平成15年度末2003年度末)に時限を向かえ、平成16年
  度からはGenevaのCERNで新たに建設されているLarge Hadron Collider (陽子・陽子
  衝突型加速器 LHC)での実験ATLASを中軸に据える新たな組織に改組転換する予定で
  ある。
(1)LHC実験地域データ解析センターR&D
  素粒子センターは2004年度には改組し、CERNのLHCでの実験を主な目的とする組織と
  なる。特に、日本(及びアジア)の地域データ解析センターを素粒子センターに構築
  する。昨年度末に導入された地域解析センターパイロットモデル計算機ファーム(現
  在のところdual-CPU PC 39台)を用い、データチャレンジ1と呼ばれるATLAS実験全体
  規模でのシミュレーションデータ生成・転送テストを進めてきた。今年度はこれら
  を更に増強し、また各種ソフトウエアの導入、LHC実験全体で運用が予定される LHC
  Computing Grid導入に向けての開発研究などを行なっている。
(2)人事
  LHCなどの将来計画を行なうための助教授人事が一件終了したが、まだ発令されてい
  ないので詳細は省く。現在、更に助教授一名応募中。
(3)ICEPPシンポジウム
  恒例のICEPPシンポジウムを2004年2月16日~19日、白馬にて開催する。
  大学院生を含む若手研究者の方々の参加を希望する。
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添付6
理化学研究所(本林委員)
・理化学研究所は、10 月 1 日付けで独立行政法人となった。
   同日付けで、野依良治氏が理事長に就任し、上坪宏道氏が和光研究所長および中央
   研究所長に就任した。和光研究所は理研の和光地区の中央研究所をはじめとする研
   究組織群の総称である。
・独立行政法人理化学研究所の目的の中に、施設の共用や人の育成が含まれることと
   なった。それにともない、大学等の外部研究機関との連携や学生に対する支援の
   あり方についての検討が始まっている。
・RI ビームファクトリー計画は、2006 年に最初の不安定原子核のビーム(RIビーム)
   を得、2007 年より実験を開始することを目指して建設が進んでいる。この RI 
   ビームをさらに高度に利用し、研究を進展させるための実験装置建設計画を策定中
   である。
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添付7
CRC報告(鳥居祥二委員)
1. 平成15年度CRC実行委員の選出
  鳥居祥二(神奈川大、委員長)、村木綏(名大STE研)、谷森達 (京都大)、
  福島正己(宇宙線研)、木舟正(信州大)、鈴木洋一郎(宇宙線研)、梶野文義(甲南大)、
  吉田滋(千葉大)、瀧田正人(宇宙線研)、川上 三郎(大阪市大)、宗像 一起(信州大)、
  水谷 興平(埼玉大)、藤本眞克(国立天文台)
2. 宇宙線将来計画シンポの開催
  宇宙線の将来計画について幅広く議論するため、CRC主催の宇宙線将来計画シンポジ
  ウムを平成15年6月26日、27日の両日にわたって東京大学宇宙線研究所において開催
  した。発表テーマ数は19あり、活発な討論が行なわれた。来年度以降も、このような
  シンポジウムを開催して、将来計画の考え方について議論をすすめる予定である。
3.物理学会の領域化
  物理学会における素核宇分科の領域化について、物理学会からの要請をもとにCRC会
  員への広報を行い、秋の物理学会のCRC総会で担当理事から趣旨の説明を受けた。
  今後は、宇宙線分野の分科代表(森正樹氏)を中心に、素核宇のWGと共同で対応を協
  議していく。
4.日米合同物理学会
  日米の合同物理学会については原則的に賛成の立場から、委員会(村木委員長)をつ
  くり米国側で宇宙線の各分野に対応する参加グループの確認、依頼を行なっている。
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添付8
高エネルギー物理学研究者会議(西川委員)
1. 高エネルギー委員の交代(任期2003.9 ー 2005.8)
  新委員:相原(東大),浦川(KEK),生出(KEK),大森(KEK),住吉(都立大),
          西川(京都大),野崎(神戸大,委員長),日笠(東北大,理論),森(東大),
          山内(KEK),山下(東大)
  Ex-officio:戸塚(KEK機構長),小林(KEK素核研所長),神谷(KEK加速器施設長),
          駒宮(ICFA委員)
2. 物理学会の領域化
  大会運営における分科を,物性と同じような領域とすることについて,素核宇の関係
  者(高エネルギーからは住吉,野崎,渡邊)で「領域問題検討会」をつくり対応を協議
  している。
3. J-PARC
  総合科学技術会議の「大強度陽子加速器計画の推進(第2期計画前倒し分)」に関する
  評価に対して,2003年10月28日付けで科学技術担当大臣及び有識者議員宛に
  要望書を送付した(資料)。
  (注:これとは別に物理学会,天文学会,地質学会の連名で声明文が送られ「基礎科
  学の軽視」に対する危惧が表明されている。)
  文部科学省の元にJ-PARC計画全体とニュートリノ計画の「前倒し」についての評価を
  行う「大強度陽子加速器計画評価作業部会」が評価委員会が設置された。
4. Bファクトリー
  5月に世界最高のルミノシティ1034cm-2s-1を達成し,順調に運転を続けている。
  Belle実験は,φKsへの崩壊過程の研究によって標準理論では説明の難しい現象を発
  見し,今夏の国際会議で発表した。
5. リニアコライダー
  2月にACFAシンポジウムを開催し,リニアコライダーの計画書である「GLC (Global
  Linear Collider) プロジェクトレポート」を発表した。
  まもなくILCSC (International Linear Collider Steering Committee) の元にITRC
  (International Technology Recommendation Committee) が発足する。アジア,欧州
  ,米国の3極から選ばれる各4名がメンバーとなり,2004年末までにリニアコライダー
  の技術を選択する。
  その後,GDO (Global Design Organization) が結成される予定。
  7月には財政当局間の非公式協議が開始された。
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添付9
原子核談話会報告(延与委員)
・日本物理学会2003年秋季大会に於いて総会が開かれ、日本物理学会の領域制移行に
   つい大会担当理事より説明を受け、質疑および議論を行った。
   今後、実験核物理分科プログラム委員会や核物理委員会などで検討し、次の総会で
   引き続き議論することとした。
・研究機関報告は原子核談話会通信167(事前配布)を参照。
・阪大岸本氏を中心にRCNPに関連する核物理の将来検討委員会を立ち上げている。
   議論の経緯についての報告があった。
・ハワイで日米合同学会が2005年9月20-24日に開かれる。これに関し、
   日本側、米国側の組織委員、アブストラクト投稿日程等が報告された。
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添付10
  原子核専門委員会への素粒子論グループの報告(二宮委員が代行)
  ・素粒子論グループは内部に素粒子論サブグループと核理論サブグループを含む各
    サブグループに委員会が設置され委員長、幹事がいる。
    対外的には素粒子論グループは一体として対応する。グループの現議長は加藤光
    裕氏(東大大学院:素粒子論)、副議長は初田哲男氏(東大理系大学院:核理論)。
  ・2005年秋に核理論は米国との物理学会合同セッションをハワイに於いて開催の予
    定。
  ・2006年秋に素粒子論は米国DPFとの合同セッションをハワイに於いて開催の計画
    を立案中。
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以上