高エネルギー実験、原子核実験、宇宙線実験、放射線検出器に携わる皆様、 京都大学 谷森 達 ASDアンプ、ワイヤーチェンバー用改良型ASDチップの製造について、 数年前にレクロイが放射線検出用の製品の販売を中止してしまい、 現在、ワイヤーチェンバー、PMTなどの高速シグナル処理用のアンプ 特に、IC化されたアンプで市販のものが全くない状態になっています。 最近、KEKの佐々木氏がアトラスのThin gap chamber用に開発した ASDアンプチップ(4chアンプとLevel comparatorが入っているIC)が 安価で高性能であるため、使用が広がりつつあります。 ただ、このASDチップはLHC用のため、時定数が16nsと非常に短く、 ワイヤーチェンバーの信号のごく一部しか使用出来ないようになっています。 京大の私のグループで開発している高密度プリント基板技術を 用いたMicro-Pixel Chamber(mu-PIC)においても、陽極と陰極の 電極間隔が100ミクロン程度あり、50nsぐらいの間イオンが移動するので、 ASDアンプでは実際の3分の1程度の信号しか捉えることが出来ません。 それで、佐々木さんの指導のもと、時定数を80nsに変更し、立上り時間や コンパレーター等の性能が劣化しないように、全体の回路を調整した ASDチップを設計し、マスクを起こし試作し、性能評価を行ない、 mu-PICの場合、パルス高が2倍強となることを確認しています。 立上り時間、ノイズレベルなど従来のASDとほとんど変化していないことを 確認しています。 パッケージサイズ、ピン配置、電源電圧などは全く既存のASDと同じです。 イオン移動の距離が大きい ワイヤーチェンバーの場合では3倍以上の利得改善が期待できるはずです。 ただ、製造会社であるソニーがこのバイポーラASICの製造工程を 中止したい希望があり、現在の約束では量産を何度も行なうことが できません。また一回の製造も2万個(1チップ、約千円)という大きな 単位でしか発注できません。 ですので、関心のある方、必要な方を集めて集団で購入できればと思っています。 さらに、市販でこのようなワイヤチェンバーやPMT読みだし用の高速アンプICが 全く存在しないという問題があります、 今後、KEKなどが責任を持って汎用ICアンプを製作してくれるのか、どうかなど 日本の放射線分野の大きな問題だと思っています。 少なくともこのASDアンプをある程度KEKなどで保持すれば、当面なんとか なると思われます。4chで千円と非常に安いので、ある程度のストックも 可能かと思われます。 6月末までにソニーに注文する製造個数を決めなければなりません。 現在ばかりでなく、近い将来必要とする人もぜひ、お知らせ下さい、 具体的財源がなくても、大きな利用ポテンシャルがあれば、 KEK、理研などにバッファになっていただけるよう働きかけることも出来ます。 時定数16nsと80nsの二つのタイプのアンプICがあれば、高速PMTから、 ドリフトチェンバーのアンプまでかなりの多チャンネル信号を処理する 検出器に当分の間対応できます。JHFなどでは、是非必要と思われます。 とにかく、要望、関心があれば、なんでも、お聞かせ下さい (谷森、窪 両方に連絡下さい)。 さらに詳しい性能データも用意してあります。 6月末と期限が迫っていますので、よろしくお願いします。 京都大学 大学院理学研究科 物理第2 谷森 達 電話 075-753-3858, Fax 075-753-3799 E-mail: tanimori [at] cr.scphys.kyoto-u.ac.jp 同 窪 秀利 (特に技術的な面) E-mail: kubo [at] cr.scphys.kyoto-u.ac.jp