<<<<<<<<<<<<<< CRC News 2022年 9月16日 >>>>>>>>>>>>>> CRC会員 各位 CRC事務局 *********************<三宅三郎氏逝去の御報告>********************* 訃報 三宅三郎先生(東京大学宇宙線研究所初代所長、元神奈川大学学長)は定年後大坂に戻られて久しくなりますが、2012年2月5日にお亡くなりなった事が判明しました。満88歳でした。 これまで多くの方々から先生の近況に関しての御問い合わせなどを頂いていたのですが、今日やっと判明致しましたので、ここに謹んでご報告させて頂きます。 永年にわたる宇宙線研究発展への献身的な努力とその貢献に対し、心からの感謝と哀悼の意を表します。ご冥福をお祈り申し上げます。 川上三郎(大阪市立大学名誉教授) 三宅先生略歴 三宅三郎先生は台湾に生まれ(1924)、大阪帝国大学物理学科を卒業後(1945)、大阪市立大学理学部(1949~)に勤務し、「中間子の多重発生」の究明を目指し、乗鞍岳において超高圧水素霧箱(150気圧)による宇宙線実験を開始しました。次に加速器を超える超高エネルギー領域の相互作用研究のため、同じく乗鞍岳で「空気シャワーの観測」を開始しました。この実験では、世界最大の大型マルチプレート霧箱を自作し膨大な写真の解析や電磁成分の観測等を総合して、観測された空気シャワーの多様性は一次宇宙線の「大気中での第一衝突高度の揺らぎの影響」と結論し、「突っ込みの理論」を提唱しました。 1961年の訪印で、「コラー金鉱の深度の異なる4カ所のミューオンの強度測定」を行い(1961~1963)、最深部でミューオンが検出されなかった事から、大気ニュートリノ現象の観測が可能であることを確信しました。 そこで「地下深部における大気ニュートリノ現象の観測」(大阪市立大学、タタ研究所、ダーラム大学による共同研究)を開始し、世界で初めて大気ニュートリノの相互作用の観測に成功しました(1965)。F. Reines等も同年直ぐあとに報告しています。この後、同実験結果の解析から「ニュートリノ相互作用の全断面積がエネルギーに比例して大きくなる」ことが宇宙線のエネルギーでも成立することを確かめ弱いボゾンの質量の下限を求めています。これらのニュートリノ研究とミューオン研究の成果により、仁科記念賞(1965)、東レ科学技術賞(1979)を受賞しました。 東京大学宇宙線乗鞍観測所長に就任(1972~)後は、同観測所から宇宙線研究所への改組に尽力し、同研究所初代所長に就任(1976~1984)しました。その間、明野観測所、ミュートロン実験、富士山エマルション実験などの国内研究やインド、ブラジル、中国における国際共同実験を支援し、また、カミオカンデ建設に当たっては同研究所が地下実験室を分担し、東大理学部、KEKと協力して、その他の理論研究も含めた研究の総代表者として科研費の獲得(1982~1984)に尽力するなど、広く宇宙物理学の発展に貢献しました。 またIUPAPの宇宙線部会(C4)の日本代表委員を12年間、同部会長を3年間勤め、世界的な宇宙線研究の発展に努力し、第16回宇宙線国際会議(京都、1979)では議長としてその成功に尽力しました。 宇宙線研究所の定年退職後は神奈川大学工学部教授(1986~)、学長(1993~1994)を勤め広く教育に貢献しました。 1987年には永年の宇宙物理学発展への功績に紫綬褒章を叙勲されました。先生のご活躍を偲ぶとともに、ご冥福を心よりお祈りします。 荒船次郎 (東京大学名誉教授) 川上三郎 (大阪市立大学名誉教授)