イラスト:Sora

重力波初検出

重力波は、アインシュタインの一般相対性理論により予言され、2015年9月に Advanced LIGOにより初検出された。これは、地球から13億光年離れたところで起こった、太陽の30倍程度の質量を持つブラックホール連星の合体から発生した重力波だった。

重力波とは?

重力波とは潮汐的な時空のひずみが光速で伝わる横波である。重力波は加速度運動をする質量から放射され、重力波がやってくると空間がひずみ、物体間の距離が変化する。

重力波天文学

重力波の初検出により、中性子星やブラックホールの連星合体、超新星爆発、パルサー、初期宇宙などを重力波を用いて観測する、いわゆる重力波天文学が産声を上げた。天体現象から発生する重力波は、その天体現象に特有の情報を持っており、重力波観測によりさまざまな貴重な情報を取り出すことができる。今後も、重力波により、電磁波や宇宙線では見えなかった天体現象が観測され、我々に新しい宇宙の姿を見せてくれることが期待できる。特に、初期宇宙に関しては、電磁波とは違い、重力波によって宇宙誕生の瞬間まで直接観測することが可能である。

レーザー干渉計による重力波検出

現在考えられている最も有力な重力波検出方法はレーザー干渉計を用いたものである。重力波によって引き起こされる、吊り下げられた鏡の間の距離の変化をマイケルソン・レーザー干渉計を用いて測定するのである。マイケルソン干渉計は、垂直な2本のアーム長の差動成分に感度があるので、空間の潮汐的ひずみを引き起こす重力波の検出に適している。そして、レーザー干渉計型重力波検出器の最大の利点は、アーム長を長くすればするほど感度を向上させることができる点にある。

大型低温重力波望遠鏡 KAGRA

現在、日本ではKAGRA (大型低温重力波望遠鏡)の建設が進められている。KAGRAでは、重力波検出を可能にする究極の感度を実現するために、地面振動の小さい地下への設置(神岡鉱山の地下200 m)、熱雑音低減のための鏡の低温化(20 K)という非常にユニークな特徴を持つ。

標準量子限界を破る

KAGRAの目標感度達成には数々の究極的技術が必要であるが、その中でも、物理として非常に面白いのが、量子雑音の低減技術である。レーザー干渉計の特質を利用すると量子雑音を低減し、不確定性原理で規定される標準量子限界をも破ることが可能である。我々は、20mgの超軽量鏡を使ってこの技術の開発を行っている。

クラックリング雑音

KAGRAの防振システムの幾何学的縦防振ユニットにはクラックリング雑音が存在しKAGRAの目標感度達成を阻むのではないかという懸念がある。そこで我々はこの雑音の評価と低減方法の開発実験を、ミニサイズの幾何学的縦防振ユニットとレーザー干渉計を用いて行っている。

スペース重力波アンテナ DECIGO

KAGRAにより重力波が発見されたあとは、干渉計をスペースに持っていきさらに感度を高め、重力波天文学をより一層発展させることが考えられている。特に日本の将来計画であるスペース重力波アンテナDECIGOでは、宇宙が誕生した瞬間を重力波によって直接観測することが目的であり、また、ダークエネルギーの解明、ダークマターの探査も視野に入っている。

21世紀は重力波の時代!

さらに将来的には、重力波の観測により余剰次元の存在が確認できる可能性もある。このように、重力波天文学は無限の可能性を秘めた分野であり、21世紀に最も成長する分野の一つであると考えられる。そしてKAGRAの建設はその輝かしい未来の第一歩となるものである。