長滝重博 (京都大)
 "数値シミュレーションによる高エネルギー宇宙線/天体物理学"
宇宙では謎に満ちた様々な高エネルギー天体現象が観測されています。今回のセミナーでは、スーパーコンピュータ─の発展により、数値シミュレーションによって高エネルギー天体、宇宙線現象の理解が大きく進んでいることを紹介したいと思います。宇宙線を含めた、高エネルギー天体現象の少なからずが非熱平衡にある系の現象である一方で、従来の数値シミュレーションでは熱平衡を仮定した計算が行われていることが少なくありませんでした。それ故、高エネルギー天体現象と数値シミュレーションは必ずしも相性の良いものではないと言えるかもしれません。しかしながら、私はスーパーコンピューターの発展を背景に、数値シミュレーションによって高エネルギー天体現象の理解が現在大変深まっていること、そして今後もその進展が期待されることを述べます。本セミナーでは、一般相対論的磁気流体コードの開発とガンマ線バーストジェット形成シミュレーション、ガンマ線バーストジェットからの熱的放射、超新星ジェットに於ける爆発的元素合成、ガンマ線バーストからの高エネルギーニュートリノ、最高エネルギー宇宙線、Be星-パルサー連星からの高エネルギー放射など、時間の許す限り数値シミュレーションによる高エネルギー天体物理学を紹介したいと思います。



図1.一般相対論的磁気流体計算による、トーラスからのジェット形成 シミュレーション



図3.Be星-パルサー連星系に於ける、星風の相互作用シミュレーション

 

図2.銀河団形成シミュレーションに於ける衝撃波形成の様子