牧島一夫 (東京大)
   "「すざく」による超強磁場天体マグネターの観測 "
  マグネターは特殊なパルサーの一種で、銀河系内とマゼラン雲に、15天体ほどが知られている。パルス周期は数秒と遅いが、周期の減少率はきわめて高く、磁気双極子放射で自転エネルギーが減衰すると考えると、磁場は 1014-1015 G にも達する。X線光度は、自転エネルギーの減衰率よりはるかに高く、質量降着の徴候もない。よってマグネターは、磁場エネルギーを解放して輝いていると考えられる。これまでマグネターは、温度 0.5 keV 程度の、ほぼ黒体放射的なスペクトルをもつことが知られていたが、2005年頃からINTEGRAL衛星により、100 keV に達する光子指数〜1の、異常に硬いパルス放射成分が、数個のマグネターから検出され始めた。
 そこで我々は「すざく」の広帯域特性を活かし、約10個のマグネターを統一的に観測した結果、硬軟2成分からなるスペクトルは、これらの天体に普遍的で、しかも特性年齢が大きくなるにつれ、硬成分の光度は相対的に下がるものの、そのスペクトルはより硬くなることを発見した。これらの観測結果を、磁気圏での電子陽電子対生成、星表面での陽電子の対消滅、511 keV 光子の超強磁場中での「光子分裂」などの立場から、説明を試みる。