銀河系内の粒子加速

宇宙線は宇宙空間を飛び交う高エネルギーの荷電粒子(主成分は陽子)で、スペクトルは非熱的分布をしていて、ベキ型関数でよく表され(宇宙線の項参照)、およそ1015 eVよりもエネルギーが低い宇宙線は銀河系内で加速されていると考えられています。

超新星残骸(SNR)

 宇宙線陽子の起源は主に超新星爆発の後に残る超新星残骸(SNR)だと考えられています。超新星爆発は恒星の最後に起こる自身の大部分の物質を吹き飛ばす大爆発のことで、吹き飛ばされた物質の速度は光速の10%にまで及び、星間空間に強い衝撃波を形成します。この衝撃波中では衝撃波統計加速(フェルミ加速)という機構によって高エネルギーまで粒子が加速されていると考えられており、SNRの衝撃波付近から高エネルギー粒子からの放射が検出されています。RX J1713しかし、加速機構の詳細やどの程度の量の宇宙線が加速されているかについては分かっておらず、長年の議論が続いています。

パルサー・パルサー星雲

かに星雲 宇宙線電子•陽電子については、超新星爆発で形成される中性子星で強い磁場を持つパルサーが起源だと考えられており、パルサーから吹き出した電子•陽電子プラズマが周囲の物質と衝突して衝撃波を形成し、そこで加速されていると考えられています。パルサー星雲は非常に効率よく粒子を加速していることが分かっていますが、その機構や空間構造についてはきちんとした理解が得られていません。磁場とともに回転するパルサーの図

 加速された粒子からの放射は陽子と星間物質の衝突によって生じるパイ中間子の崩壊ガンマ線や、電子起源の制動放射や逆コンプトン散乱があり、CTAによる高感度のガンマ線観測によってスペクトルを調べることにより、加速されている粒子種の判別や加速機構が明らかになると期待されています。