ガンマ線バースト(GRB)

0:概要

ガンマ線バースト(GRB)とは、宇宙論的距離で発生している宇宙最大の爆発現象です。電磁波で観測すると、ガンマ線の領域が中心として観測されるため、このように呼ばれています。10^53ergに及ぶ莫大なエネルギー(水爆10^30個分以上、または太陽が一生に発する全エネルギーにも勝る量)を、たった数ミリ秒から数十秒の間に放出し、それにともなって放出されるジェット流(細く絞られたプラズマガスなどが一方向または双方向に噴出する流れ)は光速の99.9999%という超相対論的な速さになります。

1:観測の歴史

1967年の発見以来、宇宙で最も謎に包まれた天体現象の一つですが、1991年に打ち上げられたコンプトン衛星に搭載されたBATSE検出器などの活躍により研究が進展し、現在、もっとも活発な宇宙物理学の研究分野の一つに成長しました。
数十億光年以上先の非常に遠方の宇宙で起こっており(そのため等方に見られる)、速度差を持ったジェット中の噴出物が衝突することで生じる衝撃波(内部衝撃波)で粒子が加速されると考えられています。
爆発の継続時間が2秒以下とそれ以上で性質の異なる2種類の種族に別れ、継続時間の長いものは研究が進み、大質量星の崩壊時に起こるとみられることが現在までに分かってきています。
継続時間の長い爆発は、爆発からおよそ数百秒以内に主にガンマ線の帯域で起こる即時放射の後、電波からX線領域までも伸びる広い波長域で数日以上掛けて徐々に減光する残光放射を伴います。残光放射は周囲の物質との衝突により衝撃波を形成してそこで高エネルギーに加速した電子からの放射とみられます。
一方で、中心駆動天体の正体、超相対論的な速さにまでなるジェットの形成機構と組成、エネルギー散逸・粒子加速・ガンマ線放射の物理的機構、その宇宙論的な進化、異なる種族の起源など、多くの基本的な点が未解明のままであり、大問題となっています。

継続時間の長いガンマ線バーストの模式図。大質量星の崩壊時に超相対論的ジェットが生まれ、ジェット内部からの即時放射、周囲の物質との衝突による衝撃波からの残光放射という順に反応が進む。継続時間の短いものについては最近研究が進展し始めたところだが、中性子星同士、または中性子星とブラックホールの衝突を起源とする説が有力である。

2:今後の展望

GRBのスペクトルはガンマ線領域にかぎらず、より高エネルギー側はGeVガンマ線、より低エネルギー側はX線、可視光、電波と、広範囲にわたり観測されます。また、最高エネルギー宇宙線の起源として期待され、また重力波の検出も期待されています。 可視光域での残光放射の発見によって距離が決定できるようになるなど、これら様々な波長域で 観測することにより、研究の発展が見込まれます。
現在、2008年に打ち上げられたフェルミ衛星に搭載されているLAT検出器(20 MeV-300 GeVを観測できる)により、プロンプト放射の光度曲線やスペクトルの時間変化などが詳しく調べられ、観測される放射のピークエネルギーが時間とともに低エネルギー側にシフトすることなどが判明しています。しかし、暗いGRBではLATだけでは光子統計が不足するため、系統的な研究を行うには広大な有効面積を持つCTAとの連携観測が有効です。
CTAでは低エネルギー側を担当する大型望遠鏡(LST)はフェルミの1万倍以上の圧倒的な有効面積を持ち、20 GeV以上でも多くの光子を検出することが可能となるため、GRBの正体に大きく迫れると期待されています。