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宇宙線研究所

私と科研費 若手研究者インタビューInterview

チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ 助教 大石理子さん

CEO

私はCTAのシミュレーションワーキンググループで、空気シャワー現象と装置の応答の部分をシミュレーションして、この観測対象をCTAを使って観測するとこのように見えるはず、という定量評価の研究をしています。なので、モノづくりというよりは、計算機を使って性能評価をやっています。宇宙線研の計算機資源が大変役に立っていてありがたいです。CTAは空気シャワーの検出器でガンマ線だけではなく他のものも見えるので、今回採択された若手(B)はCTAで観測できる空気シャワーのイメージパラメータを使って宇宙線電子成分を選り分けてスペクトルを測るというテーマ、2014年採択の若手(B)はダイレクトチェレンコフ光と空気シャワーのパラメータを使って原子核の組成を測るというテーマ、どちらもCTAのシミュレーションスタディではあるのですが、王道ではない、ちょっと個性あるものをあえてやっています。日本はLSTを主に担当していますが、装置分担とは別にCTAの中で物理テーマがいろいろあるわけです。CTAの各装置にテーマを絞っている方もいますが、ガンマ線でも天体の種類がいろいろあるし、私はどちらかというとガンマ線以外の宇宙線の測定という物理テーマに絞ってやっています。今はシミュレーションチームにいますが、ちょうど大学院に入ってオーストラリアで実験していたときはモノづくりもかなりやりました。結構好きなので、願望としてはやっぱりやりたいですね。

採択までの道のり

以前の応募では、私の連敗記録を抜くことはないだろうと後輩に言っているくらい取れなかった時期があり、その頃はテーマが悪いと思って毎年変えていましたが、今から思うとゼロスタートになるのでなかなかクオリティが上がらなかったのだなと。そこで絶対これをやりたいというものを選んで、落ちてももう一回ブラッシュアップしていく形にしました。今回も昨年不採択だった同じテーマで申請書を少し変えました。今、直接に飛翔体で実験しているCALETなどでTeV領域の電子の測定がホットな話題になっているので、周辺研究環境が追い風になってくれた部分もあります。もちろん数字を詰め切れていないと思ったところは、数字を入れるということもやりました。あとはシミュレーション研究の場合はお金がなくてもできると言われてしまいがちなので、サイエンス的には面白いんですよということと、シミュレーション研究だからこそお金がつく前にもう手をつけて、ちょっとやった結果ではこうなっているけれどもお金をつけてくれたらもっと推進しますよとアピールできるような図を入れるようにしています。今回のテーマは申請が通る前に学会でも一度発表していますし、準備をしているということですね。やはり手つかずだとあまり印象がよくないという感じです。

今後の抱負、研究環境について

科研費は研究者のアイデアを生かしたチャレンジングなことをやるのにはありがたいです。ひとつの実験が道筋ついて走り出したら、若手は次のことを考えていないとだめなので、具体的なアイデアがあるわけではないんですが、できればCTA以外の次の事を考えたデザインまで含めたものを出せるようになりたいなと。願望ですね、だいぶ先の話ですけど。自分の研究テーマに関連した他のグループの研究者では、例えばCALETでは森先生は私の指導教員だったし研究代表者も日本人で鳥居先生なので、日本の宇宙線コミュニティの中でのコミュニケーションはあります。今私がやっているのはガンマ線ではなく 宇宙線の方なので宇宙線のコミュニティでもネットワークを広げたいと思って、空気シャワーのシミュレーションの部分では、テレスコープアレイとか、LHCf実験の方とかと一緒の活動に入れてもらったりしています。
CTAでは女性は少ないわけではないし最近は国内でも女子学生が増えている印象です。しいて言えば女子学生を扱い慣れていなくて、過剰に気を使ってお客さん扱いの先生もまだいるので、厳しくしてへこまれてもと考えているんだと思いますけど、他の学生と同じように扱ってあげればいいんじゃないかなと思いますね。私自身が学生の時は助教も女性だったので特別だという感覚もないし、バンバン仕事を投げて働かせてくれたので、そこはラッキーだったかなと思います。

チェレンコフ宇宙ガンマ線グループ 特任助教 齋藤隆之さん

CEO

今年の4月に京都大から赴任してきました。手嶋先生のグループは大きいので何をするにしても楽しいですね。チェレンコフ望遠鏡には、焦点面にカメラがあって画素数は1855、一つ一つの画素は光電子増倍管(PMT)です。これら1855個を265に分けて、7個のPMTの信号を一つの読出しボードで読み出します。この開発が私の担当です。ドラゴンボードと呼んでいます。望遠鏡は全部で8台作る予定で、1台目分のボードはすでに完成していて、2、3、4台目分の発注をかけているところです。1台目と2台目以降は少し技術的な変更点があり、今変更した部分が期待通り動くかどうかテストしているところです。宇宙線研の学生、京都大の学生と連携して担当しています。7個のPMTセットが265個並ぶのですが、カメラのど真ん中にくる7つのうち、真ん中のPMTを抜いて代わりにCCDカメラを入れて、鏡そのものの写真を撮るというのが今取り組んでいる若手(B)の研究です。鏡も6角形のミラーパネルの集まりなのですが、その一つ一つのミラーパネルが正しい方向を向いているかチェックします。つまりひとつのPMTをCCDカメラに置き換えて補正に使おうという研究ですが、現状、プロジェクトの方が重くて遅れ気味です。でも今年中にある程度目途をつけて、いずれ1台目からCCDカメラに置き換えていきたいです。実は同じデジタルカメラを使って可視光のパルサーという、ピコ、ピコとパルス照射をしている天体の観測もしたかったのですが、撮像の時間分解能からそちらは諦めることになりました。1ミリ秒で連続して写真を撮りたいのですが、30ミリ秒に1枚しか取れなくてパルスを取れないのです。速いCCDカメラも探したのですが適当なものがなく、またそっちをやると補正が出来なくなるので補正の方を重要視することにしました。

科研費採択のコツ

申請書はひとつには分かりやすく書くということですよね。読む人は専門家ではないということを意識して、正確に書くことよりも、正確性を少し犠牲にしてでも分かりやすく書くということ。あとはパッと意味のわかる絵、この絵を見れば大まかにやりたいことのイメージがわくという絵を入れることは大事だと思います。あとは文章を練るということだと思いますね。たぶん研究スタート支援も、若手(B)も4,5回は書き直したと思います。1、2か月かけて、一回書いてはしばらく寝かせて、読み直して文章がスムーズではなかったら大幅に書き直したりしました。どちらも京大の頃でしたが、上司の窪先生に読んでもらって助言をもらいました。経験豊富なので的確なコメントを下さって大方反映させました。助言は大事だと思います。今年も基盤(C)か若手での応募を考えています。手嶋先生にもざっと見てもらえると思いますし、だいぶ経験も積んだので大丈夫かなと思います。

(斎藤さんは2019年9月に助教になられました。)

           

科研費と私 過去

     
2015年インタビュー
重力波推進室助教 山元一広さん(2017年2月より富山大学理学部物理学科准教授)
2016年インタビュー
神岡宇宙素粒子研究施設 准教授 関谷洋之さん     

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