【トピックス】第15回(平成30年度)日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞の授賞式 大内正己准教授がダブル受賞

第15回(平成30年度)日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞の授賞式 大内正己准教授がダブル受賞

ー観測的宇宙論グループ

2019.2.7

 日本の学術研究の将来のリーダーに授与される日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞の授賞式が2月7日、東京・台東区の日本学士院で行われ、観測的宇宙論グループの大内正己准教授(銀河天文学)が両賞をダブル受賞しました。受賞理由は「ライマン・アルファ放射体を用いた初期宇宙の観測研究」で、東京大学宇宙線研究所に所属する研究者の受賞はいずれも初めてのことです。

秋篠宮同妃両殿下の前で日本学士院学術奨励賞の表彰を受ける大内准教授

 日本学術振興会賞は2004年、創造性に富み優れた研究能力を有する若手研究者の研究意欲を高め、研究の発展を支援することで、日本の学術研究の水準を世界のトップレベルに発展させることを目的として創設されました。人文学、社会科学及び自然科学の全分野が対象とされ、トップレベルの学術研究者で構成される審査会が選考を行い、毎年25人ほどが受賞者に選ばれます。また、中でも優れた業績をあげ、今後の活躍が特に期待される6人に贈られるのが、日本学士院学術奨励賞です。本年度は全国の学識研究者から推薦を受けた候補者426人の中から厳正な審査が行われ、日本学術振興会賞はおよそ17倍、日本学士院学術奨励賞は71倍という高倍率の中、受賞者が決定されたということです。

秋篠宮殿下がおことば「さらに充実した研究を進め、世界的に活躍を」


 日本学士院2階の式場で開かれた授賞式には、25人の受賞者や審査委員、随行者ら約100人が集まり、秋篠宮同妃両殿下もご出席されました。

関係者100人が出席し、厳かに挙行された日本学士院での表彰式

 まず、日本学術振興会の里見進理事長が式辞を述べ、野依良治審査会委員長から審査経過が報告された後、受賞者が一人ずつ登壇し、日本学術振興会賞の表彰状と賞牌、副賞の研究奨励金110万円を授与されました。続いて、塩野宏・日本学士院長が式辞を読み上げ、江頭憲治郎選考委員会委員長から審査経過が報告された後、大内准教授ら日本学士院学術奨励賞の6人が一人ずつ登壇し、賞状、賞牌、記念品が授与されました。

 秋篠宮殿下は「このたび受賞の栄誉に浴された皆様は、これまで大変優れた業績を上げておられますが、この受賞を一つの契機として今後もさらに充実した研究を進められ、世界的に活躍されることを願っております」などと述べられました。

 このあと受賞者を代表し、大内准教授が登壇し、あいさつを行いました。あいさつ全文は以下の通りです。

大内准教授あいさつ全文「この上なく名誉な賞をいただき、大変光栄」


 「秋篠宮同妃両殿下はじめ御臨席の皆様、受賞者を代表いたしまして、一言、お礼とご挨拶を申し上げます。本日は、私どもの研究に対して、この上なく名誉な賞をいただき、大変光栄に存じます。野依審査会委員長をはじめとする日本学術振興会賞審査会委員の先生方、江頭選考委員長をはじめとする日本学士院学術奨励賞選考委員の先生方、そして私どもを御推薦いただきました皆様方に、深く感謝申し上げます。また、先ほど来、暖かい激励のお言葉を賜り、ありがとうございます。重ねて御礼申し上げます。」

あいさつに聞き入る秋篠宮同妃両殿下ら

 「さて、私は、宇宙の進化を調べる研究をしています。宇宙は138億年前にビッグバンで始まり、長い時間をかけて現在の宇宙へ進化したと考えられています。ビッグバンが起こった頃の宇宙は高温高密度で、星どころか、原子すら存在しませんでしたが、現在の宇宙には私たち生命を育む地球や太陽といった豊かな構造が存在します。私は、すばる望遠鏡などの大型望遠鏡を使い、130億年前の古代の宇宙から発せられた光を、広い範囲で観測し、どのように宇宙が形作られたかを調べてきました。その結果、古代の宇宙にも、今と同じような星や銀河が織りなす大規模構造があることが分かりました。さらに、この中で巨大な天体を見つけました。この天体は、日本のすばる望遠鏡の探査天域で見つかり、古代の宇宙にあり、際立つ存在でありながら謎に包まれているため、いにしえの女王卑弥呼にちなみ ヒミコと名付けました。古代の宇宙にも現在の宇宙と同じような大規模構造があり、ヒミコのような巨大な天体があることから、宇宙は早い時期に構造を作り進化を遂げたと理解されるようになりました。」

 「私は、主にすばる望遠鏡を使ってこの研究を行いました。すばる望遠鏡は、ちょうど私が大学院に入学した年に完成しました。すばる望遠鏡ができる前の日本では行えなかった宇宙進化の研究を私は選び、手探りで研究を始めました。しかし、研究をリードする欧米諸国の研究者から、私は見向きもされませんでした。私は、研究結果を手に一人で国際会議に乗り込み、まるで道場破りのように欧米の研究機関を行脚して自身の研究を知ってもらうと共に、世界の最先端の研究を学びました。この20年間、私は諸外国で真似できない、日本発のオリジナルで、人々に感動してもらえる研究を目指して努力を続けてきました。この努力が実を結び、欧米を含む世界で、私も主要な研究者の一人として、重要な仲間として、受け入れられるようになり、国内でも本日のような栄誉に預かる日が来たことは誠に感慨深いです。」

受賞者を代表し、あいさつを述べる大内准教授

 「最後になりましたが、すばる望遠鏡の主焦点カメラを開発し、私を導いてくださった恩師の岡村定矩先生をはじめ、この研究へと誘い、長きに渡り惜しみない支援をくださった山田亨先生と嶋作一大先生に心より感謝申し上げます。さらに、知的好奇心による自由な研究活動を支えて下さる梶田隆章先生、世界最高峰を共に夢見て、日々努力を惜しまず研究に励む大学院生と研究員の皆さん、常に私を支えてくれる妻と家族に厚くお礼申し上げます。本日はご列席を賜りまして、誠にありがとうございました。」

              

平成31年2月7日 
                  東京大学宇宙線研究所 大内正己

式典が開かれた東京・台東区の日本学士院