グラムスケール鏡のOptical CoolingとTrapping
科学技術振興財団・戦略的創造事業・さきがけ「光の創成・操作と展開」委託研究
(2007/10-2011/3)
研究者:三代木・森岡(黒田・大橋・奥富)


実験の目標

従来から、物質をマイクロ、ナノケルビンまで冷却し、エネルギー基底状態を作り出すことにより、その物質の量子性を顕在化させ、その振る舞いを観察することは、量子力学研究の王道であり、実際、原子やその集団に関して言えば、レーザー冷却の方法で、例えばBECなどが実現されてきた。しかし、それは逆に言えば、その方法に依存する限り、普通のグラムスケールの物質(固体)においては、量子力学的基底状態の安定的継続はおろか、その基底状態の実現そのものが不可能ということでもあった。しかし、2007年4月にT.Corbitt達により、一般相対性理論がその存在を予測する「重力波」という極めて微小な時空の歪みを直接検出するために研究されてきた、レーザー干渉計を用いた極限的微小変位計測技術を応用することにより、「新しいレーザー冷却」とい形で、しかも、「超巨視的物体」に対しても、将来的に可能であることが示された。この方法では、レーザー輻射圧による力が優勢な光共振器系(鏡で構成されるFabry-Perot共振器)に特異的に出現する「光ばね効果(位置比例力)」と「光粘性効果(速度比例力)」を利用することで、その「光ばね共振周波数」でのグラムスケール鏡を含む系の共振振幅のOptical Cooling とDampingを行うのだが、その共振振幅を10^-18 [m rms]程度まで下げることができれば、そのモードの実効温度を2桁マイクロケルビンまで下げ、結果、モードの量子数で1000付近を達成することが可能となる。本研究では、まずこの段階の実現を目指している。将来的には、冷凍機などを使用した古典的な冷却技術などにより、古典的な熱雑音によって制限されているその共振振幅をさらに低減し、現在、世界各地で建設されている重力波望遠鏡ですでに達成されている10^-19 [m/rHz] 台に突入できれば、その実行温度は1桁マイクロケルビン、量子数も1〜2桁程度になり、「グラムスケールの物体(10^22個の原子!)」の量子性を顕在化させることも夢ではなく、本研究の究極の目標でもある。

この実験の創案者であり、最初の成功者はアメリカのMITのT.Corbitt達(Phys. Rev. Lett. 98, 150802 (2007) )であり、彼の所属するLIGOグループは、アインシュタインの一般相対性理論から予測される「重力波」という時空の歪みが波動となって伝播する現象の直接検出を目指している。

実験の背景

準備中

実験手法

準備中

実験成果

準備中