チベット ASγ 実験

TeV ガンマ線の観測

宇宙線はどこで、どのような機構で高エネルギーまで加速されているのでしょうか? この問いに答える一つの方法がガンマ線の観測です。 宇宙線のほとんどは電荷を持っています。そのため地球で宇宙線到来方向を測定しても星間磁場により曲げられる ため方向の情報は失われてしまいます。しかし電荷の無いガンマ線は磁場により曲がりません。宇宙線の加速現場 近くでは相対論的エネルギーを持った電子や陽子等核子が近くの物質と相互作用し、ガンマ線が作られていると予 想されます。そこでそのガンマ線を観測できれば観測方向が宇宙線加速現場となります。 空気シャワー観測装置は、天候等の気象条件に左右されず広視野 (約πsr.) で天空を常時監視できます。そのため 定常的に高エネルギーガンマ線を放射する天体だけでなくフレア的にガンマ線を放射する活動天体の観測に大変適し ています。 我々の装置は空気シャワー観測装置としては世界で初めて超新星残骸 "かに星雲"の観測に成功しました。 又フレア天体、活動銀河核 "Markarian 501"、 "Markarian 421" からの数 TeV ガンマ線の検出に成功しています。 Markarian 421 のフレアでは常時観測の利点を生かし、人工衛星による X 線観測結果との相関をみる研究もしています。


超新星残骸 (SNRs)

かに星雲 からの数 TeV ガンマ線の検出:

かに星雲は最も有名な超新星残骸の一つであり、多波長で明るく、常に観測対象とされている天体です。 長期観測することでより詳しいスペクトルを求め、かに星雲の TeV ガンマ線加速機構や磁場・物質構造への理解が 深まることを期待しています。(図 1, 2)。

図 1 かに星雲からの TeV ガンマ線 図 2 かに星雲からの 3 TeV ガンマ線
図 1 かに星雲方向の宇宙線分布 図 2 かに星雲の TeVγ線スペクトル


活動銀河核 (AGNs)

Mrk501 からの数 TeV ガンマ線の観測:

1997 年春から活発にフレアを起こした活動銀河核 "Markarian 501"(図 3, 4) 。

図 3 Markarian 501 からの TeV ガンマ線 図 4 活動銀河核 Markarian 501 からの 3 TeV ガンマ線
図 3 Mrk501 方向の宇宙線分布 図 4 Mrk501 の TeVγ線スペクトル

Mrk421 からの数 TeV ガンマ線の観測:

2000 年、2001年フレアを起こした活動銀河核 "Markarian 421" からも TeV 以上のガンマ線を検出しました (図 5, 6, 7)。 Mrk421 のようなフレア現象を常時観測し、他波長の観測との相関を取ることにより、ガンマ線放射機構について 理解が深まると考えています。(図 7)。

図 5 Markarian 421 からの TeV ガンマ線 図 6 活動銀河核 Markarian 421 からの 3 TeV ガンマ線
図 5 Mrk421 方向の宇宙線分布 図 6 Mrk421 の TeVγ線スペクトル

図 7 活動銀河核 Markarian 421 からの 3 TeV ガンマ線
図 7 Mrk421 の TeVγ線の変動 (30 日の移動平均)。
X 線衛星 RXTE、チェレンコフ望遠鏡による TeVγ線観測結果と比較