研究所紹介
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所長挨拶

2016年4月1日

平成28年度当初にあたり、ご挨拶申し上げます。

宇宙線研究所は宇宙から飛来する宇宙線の観測と研究を様々な角度から行っています。研究所の歴史は1950 年に朝日新聞学術奨励金で乗鞍岳に建てられた宇宙線観測用の「朝日の小屋」に始まります。その後1953 年に東京大学宇宙線観測所(通称、乗鞍観測所)となりました。この観測所は、わが国初の全国共同利用の施設でした。そして1976年に旧原子核研究所の一部の部門の移管とあわせて現在の名称の東京大学宇宙線研究所となり、全国共同利用の研究所として宇宙線の研究を進めてきました。

研究所は宇宙粒子線を研究手段として、動的な高エネルギー宇宙を解明するとともに素粒子物理のフロンティアを開拓する研究を行っています。そのため研究所には、宇宙ニュートリノ、高エネルギー宇宙線、宇宙基礎物理学の各研究部門があり、研究スタッフはどれかの研究部門に所属して研究を行っています。研究所は東大の柏キャンパス内にありますが、それと共に研究所は国内に4か所の観測施設(神岡宇宙素粒子研究施設、重力波観測研究施設(以上、岐阜県飛騨市の神岡地下)、乗鞍観測所(乗鞍岳2,770メートル地点)、明野観測所(山梨県の明野高原))と海外に4か所の観測拠点(チベット・ヤンパーチンの高原(4,300メートル)、アメリカ・ユタの砂漠、スペイン・カナリー諸島ラパルマ、ボリビア・チャカルタヤ山)を持っています。神岡は超新星ニュートリノやニュートリノ振動(質量)を発見したことで特に有名なのでご存じの方も多いかと思います。このように研究所では観測しようとする宇宙線の観測に最も適した場所を世界中から探し、そこで研究を行っています。

現在宇宙線研究所は平成22年から始まった国の共同利用・共同研究拠点制度のもとで、全国及び海外の宇宙線研究者と共に共同利用研究を進めています。毎年100件以上の共同利用研究が全国の宇宙線関連研究分野の研究者の方々によっておこなわれています。したがって、宇宙線研究所の研究成果は全国の宇宙線研究者との共同研究の成果であると言えます。また、宇宙線研究所の研究のほとんどは国際共同研究です。これらの共同研究を通して素晴らしい成果があがっていますが、それらについては各研究グループのホームページをご覧ください。

近年の宇宙線研究分野の発展はめざましく、世界中の研究機関から本当にエキサイティングなニュースが飛び込んで来ます。宇宙線研究所は今後も世界の宇宙線研究の中核をなす機関として世界の宇宙線や関連する研究に貢献していくつもりです。宇宙線研究所では節目ごとに外部の有識者を多く含む将来計画検討委員会を組織して、研究所の将来の中核となる研究を検討してきました。なかでも重力波の観測研究は、研究所として1990年代半ばからの悲願であり、科学的にも極めて重要なテーマとの認識を持ってきました。このようななか、平成22年度文部科学省の「最先端研究基盤事業」による補助対象事業の1つに大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)プロジェクトが選定され、また現在では文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業によって重力波装置の建設が進められています。これらは皆様からの強いご支援によるものです。皆様のご支援に感謝いたします。これを受けて、研究所ではKAGRAプロジェクトをホスト研究機関として、また共同推進機関である高エネルギー加速器研究機構及び自然科学研究機構国立天文台と協力しながら強力に推進するため、神岡に重力波推進室を設置し、国内外の共同研究者とともにKAGRAの建設を行い、重力波の観測と重力波天文学の創成を目指していきます。2016年2月にはアメリカのLIGOによる重力波の初観測が報じられ、重力波天文学がいよいよ幕開けすると期待されています。今年度KAGRAは干渉計運転を経て本格的な装置の組み込み作業に入り、約2年後には最初の低温鏡を使った運転に入る予定です。今後も一層のご支援をお願いいたします。

重力波プロジェクトが建設段階になったことを受けて、研究所ではその先の将来のことを検討すべき段階になりました。そのため平成23年度には将来計画検討委員会を設置して、1年以上かけて研究所の基幹の将来計画をどうすべきかの検討がなされました。その結果超高エネルギーガンマ線天文台プロジェクトCTAをはじめ複数のプロジェクトが高く評価されました。また外部評価委員会を平成24年度に設置して、研究所のこれまで6年間の研究活動などを主に評価してもらいました。これらの委員会の報告書は宇宙線研究所のホームページに掲載されていますので、是非ご覧ください。これらの委員会からの報告を受けて、宇宙線研究所ではCTAプロジェクトの推進などの新たな展開を図っていきました。幸いにもCTAプロジェクトの日本分担のうち、北半球について予算化がなされました。CTAも研究所の基幹計画の一つとしてしっかり進めてまいりますので、ご支援のほど、よろしくお願いいたします。

宇宙線研究所の研究計画を進めていくためには、今後も宇宙線関連分野の研究者の皆さんの支持、大学からの支持・支援が必要なことはいうまでもありません。また国からの支援もますます重要になっていきます。今後とも、宇宙線研究所の研究活動にご支援をお願いしますとともに、本研究所からの研究成果にご注目下さい。