CRC会員各位  3月1日のCRC実行委員会で議論され、宇宙3機関へ送った要望書です。                                平成15年3月1日 文部科学省宇宙科学研究所 所長 松尾 弘毅 殿 宇宙開発事業団 理事長 山之内 秀一郎 殿 独立行政法人航空宇宙技術研究所 理事長 戸田 勧 殿                             宇宙線研究者会議(CRC)                             実行委員長  村木 綏 新宇宙機関における宇宙科学についての要望書  本年10月に、貴三機関の統合により新宇宙機関(以下新機関)が発足するに際して、 わが国における宇宙の研究、開発の新たなる発展が期待されています。我々は、 「宇宙開発が人類の知的資産の形成」にとって重要な分野であるという認識から、 新機関における宇宙科学は、これまでに加えて、より一層充実したものになる必要が あると考えています。宇宙線の研究は、神岡グループによるニュートリノの研究の例 にも見られるように、これまでに多くの成果をあげ、今後も宇宙における未知なる現 象の解明に大きな成果を挙げることが期待されている分野です。新機関では、これま での宇宙科学研究所の優れた機能を維持しながら、積極的に新分野のテーマを開拓し、 宇宙科学研究に新たな展開を生み出すことができるよう、下記の事項について御考慮 頂きますことを要望いたします。 1.宇宙科学研究所は、X線、赤外線天文学、太陽物理、地球近傍および惑星間空間  物理学の分野において、これまでに世界に誇る優れた成果を挙げています。その原  動力ともなっている、1)全国共同利用機関、2)公募ならびに評価委員会による  観測ミッションの選定、3)大学院生等の教育、4)外部機関との人事交流、など  の機能が新機関でも引き継がれる必要があると考えております。  加えて、新機関ではこれまで各宇宙機関で実施されてきた、大学等の共同研究機関  に対する資金も含めた共同研究の実施、人材、設備の利用などの準備研究の支援が  一層充実されることを期待いたします。 2.これまでは、「科学はISAS、実用はNASDA」という枠組みで進められてきましたが、  月探査衛星「SELENE」や国際宇宙ステーションにおける宇宙、地球科学ミッション  の例があるように、すでにこの枠組みは変化しており、より統一的に扱われること  になるものと理解しております。これに伴い、予算上や打ち上げ機会の制約などに  より、これまで宇宙科学研究所がカバーしていなかった大型観測装置による科学ミ  ッションについても、新機関では積極的に推進していただけることを期待しており  ます。 3.宇宙線分野では、超新星、ブラックホール、最高エネルギー宇宙線、宇宙反物質  や暗黒物質といった、物理学の基本課題である宇宙と素粒子の問題にかかわる重要  なテーマが研究されています。今後は、宇宙環境の一環としての高エネルギー宇宙  線の研究も重要なテーマになると考えられます。このため、欧米では重量がトンを  越す多くの大型科学衛星ミッションが実現、計画されているにもかかわらず、わが  国では大型観測装置の打ち上げが困難なために、これまで宇宙線観測に関する本格  的ミッションは行われて来ませんでした。新機関では、国際宇宙ステーションを含  む新たな搭載機会を駆使して、今後発展が期待される宇宙線を含む新分野を育成し  、部門を横断して最適なミッション実行チームが組織されるような体制を構築して  いただけることが不可欠と考えております。 以上   注)宇宙線研究者会議 1953年に、日本の宇宙線研究を推進するために結成された宇宙線研究者の唯一の 組織です。全国共同利用研究所である東京大学宇宙線研究所を核として、現在は全国 で約100の研究、教育機関に所属する345名の研究者が参加しています。