***< 共同利用のための国立大学附置研究所、施設、センターに関する要望書 >*** 文部科学省 研究振興局長  殿 高等教育局長  殿                    日本学術会議・物理学研究連絡委員会 原子核専門委員会   委員長   矢崎 紘一 共同利用のための国立大学附置研究所、施設、センターに関する要望書 我々物理学の研究に携わってきた者は、これまで長年にわたり共同利用機関や 共同利用型の大学附置研究所、施設、センターに支えられてきた。このような 共同利用研究の施設が北は北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々の研究者 の研究水準向上に果たしてきた役割は極めて大きい。  共同利用研究の制度は戦後間もなく限られた資源を最大限に生かして、 大きな研究成果を上げるために導入された。全国の研究者が集まり、直接議論 をたたかわし、あるいは装置を持ち寄って共同実験を行うことにより研究を進め、 その成果を論文にまとめるという効率のよい方法であり、多大な成功を納めてきた。 これは今から50年前、京都大学基礎物理学研究所と東京大学乗鞍宇宙線観測所 (現東京大学宇宙線研究所)の開設に始まるものである。半世紀を経た今、共同利用 という研究システムの必要性を見直してみるとき、研究はますます国際化し、又国内 の各大学にまたがる研究者の共同研究も一層盛んになっていて、その必要性は さらに増し、規模も大きくなってきている。この共同利用研究所等にも、大学の 法人化の波が押し寄せている。特に大学附置の組織の場合には、各大学の予算に 対する自由裁量権の増加により、当該大学に直接みかえりの少ない共同利用関係 経費が軽視される危惧がある。全国の研究者は大学附置の研究所等による共同 利用研究が法人化の波で消えてしまうことを真剣に憂慮している。無論法人化に際し、 そのシステムを評価すべきであるとは我々も考えているが、上で述べたように、 その必要性はさらに増大したと判断している。  原子核専門委員会は、このような研究者の心配をできる限り払拭し、今後ますます 必要となる国際共同研究や大型の共同利用研究が、法人化後も、共同利用機関のみ ならず共同利用型の大学附置研究所、施設、センターにおいても十分に行えるよう、 強力な財政的なシステムを構築することが不可欠と考える。具体的には、全国共同 利用研所長懇談会(10月18日)の共同利用研究所への特定交付金というシステムの 導入を求めた提言を支持するとともに、大学附置の研究所等であっても大型研究が 可能となるような財源の確保と制度の導入を強く要望するものである。