平成11年度第1回宇宙線研究所共同利用実施専門委員会議事要録 日時 平成11年7月31日(土) 場所 宇宙線研究所会議室 出席者 村木綏(委員長)、松原豊、倉又秀一、櫻井敬久、梶野文義、田坂茂樹、 水谷興平、鳥居祥二、手嶋政廣、黒田和明、福島正己、湯田利典、 木舟正、中畑雅行(幹事) オブザーバー 戸塚洋二、佐々木真人、吉田滋 報告 1. 研究所の近況報告(所長) --------------------------- 平成11年4月にニュートリノ情報融合センターができ、センター長に梶田助教授が 任命された。センターのために新たに教授、助教授、外国人客員教授、助教授、国内 客員教授、助教授のポストがついた。6月にTAの責任者として福島氏が着任した。4月 にカンガルー将来計画(10m望遠鏡4台)がCOE拠点形成として認められた。また、 カンガルーのために新たに助教授が決定された。 来年度の概算要求では、TAを一番大きな項目として要求している。 宇宙線研究所の外部評価を来年2月1,2日に行う。そのために11月末までには、 研究所の体制のプロポーザルを完成させる。 2. 研究所付属施設の近況報告 ---------------------------- (a) 明野観測所(手嶋) AGASAは、順調にデータを取得しており、10^20 eV以上の現象は、7event観測 されている。共同利用として他に、大阪市大、山梨大、AUGERのR&D、TAのR&D、 東工大が利用している。平成11年5月からCOEの研究支援推進員が一人増員された。 (b) 乗鞍観測所(湯田) 観測所は、順調に稼働している。コロナ観測所は、冬季閉鎖を試行しており、検査等 のために乗鞍観測所を使用している。研究支援推進員の増員が1名認められたが、現 在候補者を捜している。太陽中性子での研究成果を期待している。 (c) 神岡宇宙素粒子研究施設(戸塚) スーパーカミオカンデは順調に観測を続けており、10編近い論文が書かれた。 1998年6月に高山でNEUTRINO 98国際会議が開かれ、大気ニュートリノ振動の証拠 を発表した。KEKからニュートリノを飛ばす実験(K2K)が始まり、6月に最初のニュ ートリノ現象が観測された。現在、太陽ニュートリノにおいてニュートリノ振動の証 拠を見つけるべく努力している。旧カミオカンデの実験場所で東北大学のKamLANDプロ ジェクトは順調に進んでおり、2年後に観測を開始する。 (d) 田無微弱放射能測定施設 柏の地下20mに低バックグラウンドの施設ができる予定であり、設備更新で計3台 のゲルマニウム検出器が置かれる。施設の有効利用を櫻井客員教授にお願いしたい (戸塚所長)。田無地下実験室から柏へ持っていく物を現在大橋氏と検討中である。 柏の地下および共同利用室(クリーンルーム等)のデザインを検討中である(櫻井)。 3. 共同利用成果報告書の公開について(中畑) -------------------------------------------  平成10年度共同利用成果報告書を以下の方法により公開した。 (1)小冊子としてまとめ、宇宙線研究所の図書館に置いた。 (2)ホームページ(http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/houkoku)に載せた。 議事 4. 共同利用研究会の開催について -------------------------------- 平成11年度は、共同利用研究会を開催することとなった。組織委員会は、実施専門 委員で構成し、組織委員長は村木氏、幹事は中畑氏が務める。研究会は、12月中旬 に二日間の期日で行うこととなった。 発表者の選出に関しては、以下のような議論があった。 前回の委員会議事録には分野を定めてとあるが、話をしたい人が多いのではなかろ うか。 今回は、初めての試みなので各分野に分かれてすべての発表を行い、レビューをす る人が各分野をまとめたらどうか。 目玉になるようなテーマがあってもいいのではないか。 共同利用を行った場合、その報告の義務がある。そのような場としてこの研究会を 考えるならば、各研究の評価をするために興味の有無に関わらずすべて聞く必要が あるのではないか。 出された意見を踏まえて、委員長と幹事とで原案を作り委員にe-mailで諮ることに なった。今後の準備日程は、以下の通り。 8月10日頃 研究会の第1回広報をする。  9月10日頃 発表者の候補者選出(主任、委員長、幹事) 10月 組織委員会で発表者の議論。 10月末 第2広報(preliminary program付き)を送る。 12月中旬 研究会(二日間)。 5. 宇宙線国際会議について(村木) --------------------------------- 2003年か2005年に日本で宇宙線国際会議を開催する件が議論された。 6. 将来計画準備状況について(TA他) ------------------------------------ 6.1 重力波 黒田氏により資料「Large-scale cryogenic gravitational wave telescope」に沿っ て説明があった。低温鏡の開発は、順調に進んでいる。TAMAの現在のノイズレベルは 目標値の約3桁高いが、今後2年半位で目標値まで下げる予定である。低温鏡の開発 とTAMAとは平行して進める。 6.2 Telescope Array 手嶋氏より、AGASAの最近の結果、HiResとの比較、TAの重要性について説明があった。 HiResの視野は、当初予想されていたサイズの1/3程度しかないようである。また、 AUGERは、2004年にAGASA程度のサイズの物ができ、本格的な装置は2006,7年 になるようである。したがって、AGASAはTAが始まるまで運転を続ける必要がある。 佐々木氏より、TAの問題点と解決について説明があった。各部分部分の開発はほぼ完了 したと思われる。今後は、10万チャンネルという数をいかに動かすかということが焦 点である。 吉田氏より、測定器のシュミレーションにより、装置の配置の最適化を行っているとい う説明があった。 福島氏よりTAプロジェクト全体に関する今後の課題について説明があった。TAが使う技 術はexisting proofであるが、砂漠という環境でmaintenance freeの10万チャンネル というシステムを作るためには、今後何ステップかのR&Dを進めて行く必要がある。概算 要求は4年計画だが、3年目から一部の試験観測を始めるということ、エレクトロニク スは後の時期に集中させたいという両者を満たす予算配分で考えている。場所について は、ユタに作ることには決まっているが、装置の具体的な配置に関しては、各ステーシ ョンの周りの環境、装置全体の最適化を考慮して現在検討中である。