(資料); [CRC関連大学の活性化についてのアンケート] [ 設問 ] 1) 長期に渉って、CRC関連の伝統的な大学の研究室が他分野に変わったり、関連研究 者が一人もいなくなったりしている傾向が見られます。しかし一方では、活発な 展開をしている大学や、新しい大学でCRC関連研究者が地道に研究・教育を広げつ つある事も確かです。そこで、貴委員から見てCRC分野及びCRC関連大学が「活性 化している状況」とはどの様な状態の事と考えられますか? また、各大学におけ る「活性化」の現状はどう評価されますか? 2) この様ないろいろな状況にあるCRC関連大学にとって、今後明るい未来があると考 えられますか? CRC関連分野として、研究課題の枯渇の心配はどうでしょうか? または全くその逆の追い風・隆盛でしょうか? 具体的に言って、より「活性化」 できる道、プロジェクトなど、どの様な可能性があるでしょうか? 3) CRC関連大学の活性化という観点から、宇宙線研究所には何が期待出来るでしょう か? 具体的に宇宙線研と各大学との関係はどうあるべきでしょうか? 今後にと って望ましい姿、形態はどの様なものでしょうか? 4) その他、今後の宇宙線分野と各大学の活性化のために必要な環境・施策・条件は ? 科研費、研究者の流動化、客員研究員制、共同研究関連経費の自由化 その他 多くの工夫・改良案などについて、お考えやアイデアをお願いします。 5) 拠点大学をいかに作るか? [アンケートに対する回答] (回答.A) 1)ここで大学の講座を研究の構成「単位」とする。その「単位」が相互に関連しあ い、ある目的によって統合されたものをここでは「システム」としよう。宇宙線実験 の高度化は好むと好まざるとにかかわらず組織の巨大化を促し、「システム」の効率 と発展性がより重要となる。「単位」の活性化とは、この「システム」の発展性のこ とであると考える。そこから、「単位」の機能についての演繹が行われなければ議論 は空転する。「単位」なくして「システム 」は有り得ない。しかし、「システム」な くして学の発展は現在・将来において考えられないであろう。 2)アメリカのアポロ計画によってシステム工学が急激に発展した様に、我々はより 高度かつ重要な研究目的のために「システム」がいかにあるべきかを真剣 に議論しな くてはならない。そこで、重要なのはノスタルジアでも一時的なパッションでもなく 、科学的な分析ではないだろうか。我々にはそれが欠けているのではないか。 3)開発を行う際、効率の点で最適な人数は3人と言われている。それ以下では実質 的に進まず、それ以上でも会議や調整などのオーバーヘッドのため、効率は落ちる。 従って、「システム」を管理する際、重要なのはサブプロジェクトを上手く3人程度 で実現できるサイズに切り分けることである。これは大学の講座と「単位」が人数の 上では適している。 4)上手く仕事が「単位」当たりに切り分けられたとしよう。問題はこの「単位」の システム化である。それには、まず「単位」が共通の目的意識を持つことが 最重要 である。更に「単位」が滋養され成長できるような還元を持ち得る、ある種の「経済 」がそのシステムの中に生じなくてはならない。 5)そこでは「物理学者は何を求めて生きているか」という極めて形而上的な問題とな ってしまうが、私見ではそれは多分「知識欲」,「名誉欲」,「責任感」などの複合的 なものに支えられている。それを総括的に「クレジット」と呼ぼう。「クレジット」 が、我々のシステムにおいて「循環」すべきものである。そして、この「システム」 と「単位」の活性化を精緻に考えるのであれば、その「経済学」を探るべきである。 6)具体的にはどうするのか? 「クレジット」の流れを管理するメタ組織が必要であ る。それをまず「単位」から選出して、研究グループの経済を統括させる。そこでの 第1の原理は「公平」であるということである。それを「代表者会議(CB)」とする。 これは、よくある委員会や諮問ではなく、研究「システム」の利潤を追求するもので ある。すなわち、「単位」に対してはメタ組織であるが、より広い経済競争フィ−ル ドにおいては、会社の重役会議と同様、(金ではなく)「クレジット」を追い求める「 単位」を運営するものである。その競争フィールドを意識することがCBの公正化と工 夫の努力を促すであろう。中間的な委員会や調停機関になってはいけない。活動力の 高い「単位」に対し、適正なオーソライゼーション、発表機会の提供、資金助成など で更に活動力の向上を図り、「クレジット」をそこへ配分・集中化する。 7)「単位」には選出されたCBの「公平さ」への監視とともに、強い「協力」が要請 される。それが自覚として絶対必要である。それを促すのは、やはり「システム」内 での競争原理であろう。 8)複数の拠点化という議論には賛成できない。研究目的を伴わない組織は、新たな る腐敗を生む。まず、目的が先であり、そこへの賛同「単位」が「システム」を希求 し、「CB」を結成する手順で始まる。そしてその「システム」の全体の活動力が低下 し、外的な競争力を失えば、即解散に向かう俊敏な流動性がこれから重要である。 9)宇宙線研究所はその「港」(現東大総長の言葉)となると良い。 内外からノマドが ある時機、集い、「システム」を作り、「クレジット」を貯めて、次の目的地に船出 する。その機能と場を提供すると良い。 10)私の楽観では、研究規模はますます増大すれば良い。それを支える「システム 」へ我々の対応が柔軟で創意あるものであれば発展の可能性は大きい。 (回答.B) 1)今ほど宇宙線研究の分野が活性化しているときはないと言っていいほどactiveに 研究が進んでいると思います。この分野と大学の研究室レベルで活発に研究が進めら れていることとは別もので,アンケートに挙げられた衰退の元は,単に研究者が高齢 化していることです。これは,どんな組織でも避けられないことです。大きい大学の 組織は若い人々まで抱える余裕があるためにこのことが表面化していないだけのこと だと思います。CRCの活動を大学単位でみるか研究グループを単位としてみるかの 違いと思われます。 2)研究課題が枯渇する場合はその分野の研究が終了したということでしょうから, これを無理に蘇生させる必要はないと思います。 3)宇宙線研究所は大型のプロジェクト推進のために貢献する一方で一次線分野の研 究のように小さい研究室単位の研究も進められるよう努力しています。各大学研究者 の要望や支援で宇宙線研究所のプロジェクトが進む一方,小さい研究グループの研究 は宇宙線研究所を頼りにして進められるという関係が最もいいと考えられます。しか し,現在はこの関係を維持する枠組みは大変弱いと思います. 4)重力波プロジェクトの推進を例にとると,宇宙線研究所とKEKでの共同研究,宇 宙線研究所と天文台との共同研究にCRC関連大学の研究者に参加してもらい,研究を 分担してもらいます。研究としては,まだ開発研究しかありませんが,例えば,手つ かずになっているものとして以下の様なものがあります。 (1)防振された真空フィールドスルーの開発,(2)縦方向防振装置の開発,(3)レーザ 干渉計のロックシステムのシミュレーション,(4)レーザ干渉計の危機回避システム の開発,(5)バースト波同定処理法の開発,(6)ラインノイズ,線スペクトルノイズの 除去法の開発,(7)信号スクリーニング法の開発.  ちなみに現在及び近い将来の研究は,  (1)低温鏡の開発,(2)サファイヤ高反射率鏡の開発,(3)新しい鏡制御法の開発, (4)干渉計シミュレーションプログラムの開発,(5)20m干渉計の運転,(6)銀河系 モニターアンテナによる宇宙線との相関観測,などです。 5)拠点大学は高齢化の問題を避けられる,規模の大きい大学にすべきです。 (回答.C) 1) 大型の基盤研究は必然的に共同利用研究になりますが、それへの参加と、大学の先 生方に強い希望のある個人的な小規模の研究とをどういうふうに整合性をつけるのか 。 2) 高エネルギー実験では加速器が必要なため、共同研究に参加せざるをえないわけ ですが、宇宙線研究者にはどうしても個人的小規模研究が必須なのか。 3) 個人的小規模研究は今後大学における外部評価の対象になります。またそれを行 うためにはいわゆる競争的資金(科研費等)を自分で獲得すべきですしそうしなければ なりません。科研費等の取得状況の調査と今後それを改善する方策が重要になると思 います。 4) 大学における宇宙線関連の講座が減少している様な気がします。是非その調査を お願いします。その原因は何か研究する必要があると思います。それがわかれば対策 をとることができます。 どうやら宇宙線と宇宙が混同されている様です。これは当 然ですが、宇宙との競争にやはり勝つ必要があると思います。宇宙関連の研究はなぜ 人気が出てきたのでしょうか。彼らはやはり個人的小規模実験で成果を上げたのでし ょうか。 5) また、宇宙線関連講座を新設する努力を大学の先生方はどの様にしたらよいのか 検討すべきと思います。