宇宙線連続観測データに関係する各位       理研板橋宇宙線連続観測所閉所のお知らせ   1998年2月28日 理化学研究所 宇宙放射線研究室 松岡 勝 [ 概要 ] 理化学研究所でこれまで続けてまいりました、中性子計 (Neutron Monitors) による 宇宙線の連続観測について、次のように変更になりますのでお知らせします。  東京の板橋で続けてきた連続観測 (中性子計[NM64] 28本) は、1998年3月末を目処に 閉鎖し、中国のティベット羊八井にもって行きます。ティベットでの観測は1998年秋か らデータが取れる予定です。このデータについては中国の高能物理研究所(北京)と理研 が当分の間お世話します。データが必要な方は理研にご相談ください。 一方、乗鞍岳の宇宙線研究所に設置されている12本の中性子計はそのまま運転を続け ます。この維持管理については近いうちに名古屋大学太陽地球環境研究所に移管の予定 です。 [ 説明 ]  理研の宇宙線研究室は時代とともに変化し、伝統ある中性子計 (NM64) による連続観 測は、板橋分所と乗鞍岳でつづけてまいりました。板橋分所のデータは宇宙線強度の長 期モニターとして世界的に信頼性の高いデータとして多くの関連研究者に使われてまい りました。乗鞍岳の中性子計のデータは短期の宇宙線強度のモニターや太陽宇宙線、特 に高エネルギー中性子の観測で重要な使命を果たしてまいりました。  何かと利用されている宇宙線連続観測も、地味な研究のためか引き継ぐ人材が少なく なり、最盛期には100ほどあった世界の宇宙線観測所も次第に少なくなりつつあります。 理研での観測もその例外に漏れず、観測装置を維持する技術者やこのデータを使う研究 者の定年退職とともにこれまで通りに持続することが難しくなっております。  このため、これまで貴重な装置そのものまで停止させない方法を検討してまいりまし た。このほど、理研の中性子計を継続して動作させる次の方法が決まり、現在その移行 の準備を致しております。  まず、乗鞍岳にある12本の中性子計は、当分の間そのまま引き続いて運転を継続する ことになりました。保守管理は形式的には名古屋大学の太陽地球環境研究所に移行する ことになりますが、実質的には信州大学の宇宙研究者の方々が保守管理からデータの有 効な管理まで引き継いでくれることになりました。勿論、理研側の関係職員の現役の間 はこれまでの経験を十分に活かして信州大学の方々と共同して行くことになります。  次に、板橋分所の28本の中性子計は、理研が板橋分所そのものを長期に維持するもの ではないとの方針にしているため、何処か安住の場所に移動させることが得策かと検討 を重ねてまいりました。1年半ほど前に、中国の北京にある高エネルギー物理研究所(中 国科学院) から中性子計をチベットの羊八井(高度: 4300 m) の宇宙線観測所(東大宇 宙線観測所が空気シャワーで超高エネルギーガンマ線等を観測している)にもって行く と言う共同研究の呼びかけがあり、これに応えることにしました。理研当局もこれを了 承し、理研と高エネルギー物理研究所(中国科学院)は「覚書」を交わし昨年から28本 の中性子計の移行準備を行っております。チベットでの観測は1998年度中に移行を完了 し観測に入る予定です。このため「中国側は観測小屋を建て維持管理をすること、理研 側は観測装置一式を天津まで移動し設置時には理研から研究者・技術者が行って完成さ せる」と言うことになっております。この取り決めは、当面1998年から5年間の予定で すが、装置の故障時には出来る限り理研から技術者の派遣が行なわれることになるでし ょう。また、中国の宇宙線観測所は当分安定してデータ取得のため、中国側が維持管理 をすることになっております。  得られたデータ (太陽高エネルギー中性子観測と宇宙線連続観測) は理研も十分な権 利を保有しているため、理研の現役研究者・技術者がいる限りデータを使った研究は自 由に継続する予定です。  以上のような状況のため、伝統ある板橋分所の宇宙線連続観測は、当面1998年3月を もって終了することになります。これまで直接、間接に中性子計の仕事に携わってこら れた関係の方々に深く感謝致します。  また、理研のデータを使われてこられた方々には何かと不便をおかけすることをご容 赦下さい。なお、ティベットのデータ (予定:1999年以降) については当面、理研・宇 宙放射線研究室の坂本恵美子 (Tel:48-467-9335[直], Fax:048-462-4640, E-mail: r11231 [at] postman.riken.go.jp:)を窓口として お問い合せ下さい。