******** [ 共同利用運営委員会 議事要録速報 ] ************* 開催日時 平成10年 1月31日(土) 午前11時ー午後4時30分 出席者 戸塚、大島(KEK)、村木(名大)、永井(東工大)、坂田(甲南大)、     太田(宇都宮大)、坂井(東工大)、黒田、鈴木、湯田、木舟、     佐々木(オブザーバー)、藤本(天文台、オブザーバー)、 福事務長、安岡総務主任、細淵共同利用掛長、村田施設掛長、葛西専門職員 報告 1)平成10年度予算 チベット宇宙線観測5年計画が経費削減を受けて認められ、また、田無地区の ために要求していた大型計算機が認められた。事業費は一律15%、校費は 2%削減されるなど厳しい一方、旅費はそのままのため例えば神岡関係校費は 16.8%の削減となる。 2)柏キャンパス移転 平成10年度の施設整備に向けた準備が東大施設部で進められている。 共同利用宿泊施設要求は、平成10年度は宇宙線研究所から東大本部へ出され たが、平成11年度要求では、文部省までいくように努力する。 また、柏キャンパスの合同事務部案が検討されている。 3)共同利用申し込み状況 海外3件を含み60件の申し込みがあり、そのうち新規が14件となっている。 次回の共運委で査定委員を選出する。 4)その他 拡大実行委員会の報告(太田) ・CRC拡大実行委員会において、宇宙線研究所の将来計画について、研究所の スタッフを交えて広く意見交換をした。 ・共運委の速報をスポークスマンをおいて出してほしい。 5)各研究部報告 AS ユタ州における Telescope Array 事故の賠償交渉はユタ大学に委任する ことで合意した。 GW リサイクリング原理実験でゲイン2倍を達成、300m一本腕ファブリー ペロー干渉計の位相ロックに成功、ファイバーによる発熱鏡の冷却に成功。 KM 昨年10月までのデータを解析した結果の報告。ニュートリノ振動への 質量差への許容領域をさらに狭めた。 TB 96年のデータでアレイ方向の0.3度のずれを校正した。 審議事項 1)所側から出された将来計画案について3時間近く議論がなされ、承認された。 この報告の最後に、概要文をつける。 TAについては、これまでの計画を最高エネルギーに一本化することとその サイトの候補を広げることに意見が出され、また、計画案で最高エネルギー 宇宙線の意味をわかりやすく記述すべきだというコメントがあった。 GWについては、TAMA後の大型計画を天文台が担う状況ではないことを 受けて、宇宙線研で将来進めることが了解され、100億円規模の計画を進 めるための組織作りについて議論があった。 2)研究所研究員の採用 人事選考委員の選出は研究所主任会議に一任された。 3)空きポスト 現在空いている助教授のポストとともに永野教授退官にともなう教授人事も早急 に行なう。分野を限定して公募する方針とし、詳細は次回の共運委で決定する。 4)部門の統合/整理に関する審議を今後共運委で行なう。 5)次回の共運委は、3月16日(月)の予定。 以上 ........................................................................ 宇宙線研究所において今後推進すべき研究計画について                             平成10年1月31日                             東京大学宇宙線研究所 1.はじめに  東京大学宇宙線研究所は、宇宙線の観測及び研究を設置目的とし、昭和28年 乗鞍岳に宇宙線観測所を設立し全国の共同利用に供した時をその嚆矢とする。その 後昭和51年、東京大学附置宇宙線研究所に改組転換された。  それにともない、乗鞍観測所は研究所の附属施設となり、種々の宇宙線観測が行 われた。昭和52年新たに明野観測所が設置され、高エネルギーガンマ線及び最高 エネルギー宇宙線の研究が開始された。平成7年、大型水チェレンコフ宇宙素粒子 観測装置による研究のため神岡宇宙素粒子研究施設が設置された。現在、宇宙線研 究所は、以上の3附属施設を有し、教官33人、事務職員等25人、大学院生44 人(修士20,博士24,平成10年1月現在)で構成されている。教官、事務職 員等は共同利用研究者の対応に当たり研究遂行の効率化を図っている。  現在までに行われた共同利用研究は多岐にわたるが、その主要なものを列挙すると、 宇宙線による超高エネルギー粒子相互作用の研究(乗鞍、ボリビア、気球実験) 高エネルギーミューオンの研究(田無、インドコラー金鉱) 大気ニュートリノの研究(神岡、インドコラー金鉱) 超高エネルギー宇宙線元素組成の研究(富士山、チベット) 最高エネルギー宇宙線の研究(明野、田無) 高エネルギーガンマ線の研究(オーストラリアウーメラ、チベット、 ニュージーランド、明野、ボリビア) 太陽ニュートリノの研究(神岡) 超新星ニュートリノの研究(神岡) 陽子崩壊等大統一理論検証の研究(神岡、インドコラー金鉱) 重力波の研究(田無) 太陽中性子線の研究(乗鞍) 宇宙塵の研究(田無) である。  宇宙線研究も近年、研究目的の精密化・多様化や新技術導入に伴い研究規模が拡大 してきた。明野観測所におけるAGASA装置や神岡宇宙素粒子研究施設におけるSuper- Kamiokandeはその典型的な例である。特にSuper-Kamiokandeは宇宙線研究としては画 期的な規模を誇り、今後の研究計画の標準となるものである。  Super-Kamiokandeは平成8年4月より宇宙ニュートリノ等の本格観測に入り、よう やくその研究成果が世界の注目を集め始めてきた。  しかしながら、上にみたように宇宙線研究は多様であり、Super-Kamiokandeが研究 成果をあげつつある今、並行して推進すべき研究計画を早急に立案し、実現する時期 にきている。  宇宙線研究所は、ポストSuper-Kamiokandeをにらんだ研究計画を検討すべく、すで に平成3年、将来計画検討小委員会を設置し、約3年をかけて検討を行った。その結 果はすでに将来計画検討小委員会中間報告として発表されている。(ICRRニュース No.18, 1993.9.15)それを要約すると、今後の宇宙線研究の主要な研究テーマとし て、(1)長基線光干渉計による重力波観測とそれによる一般相対性理論と宇宙物理学 の研究、(2)宇宙線望遠鏡による最高エネルギー宇宙線及び高エネルギー宇宙ガンマ 線の観測とそれによる宇宙物理学の研究、である。  その後、両研究グループは科研費等の経費により着実に試験開発研究を行ってき た。また、宇宙ガンマ線観測においては、オーストラリアにおける共同研究Cangaroo およびチベットにおける共同研究が近年大きな研究成果をあげてきた。また、将来 計画検討小委員会中間報告提出後、すでに5年近く経過しているので、中間報告結 果が現在でも先端的研究であるかどうかをもう一度検討する必要があると判断し、 平成9年10月に将来計画シンポジウムを開催し、重力波アンテナと宇宙線望遠鏡 を主に、ガンマ線等他分野との比較を含めた活発な議論を行った。本報告は、その 結果を基に今後宇宙線研究所が行うべき重点研究計画を記したものであり、宇宙線 研究所は、今後それらの研究計画を早急かつ着実に実行していく予定である。 2.今後行うべき研究計画  宇宙線研究所研究計画の主要キーワードは、 ニュートリノ、ガンマ線、最高エネルギー宇宙線、重力波 である。宇宙線研究の多様さに鑑み、宇宙線研究所は、今後以上の研究をバランス よく遂行すべきである。ただし、学術的意義が極めて高く緊急度のある研究計画を 早急に実現する必要がある場合は、本研究計画の一部見直し等の再検討を行う。  以下に研究計画の要約を記す。 (1)ニュートリノ研究  すでにSuper-Kamiokande実験が進行中である。次期計画の検討が行われているが、 現在のところ具体案は存在しない。 (2)高エネルギーガンマ線研究  10m径チェレンコフ望遠鏡4素子からなる高エネルギーガンマ線観測計画を早 急に実現する。すでにCangarooなるガンマ線研究グループが大きな実績を積んでい る。当該グループが研究主体となって推進すべきである。  設置場所;オーストラリアウーメラ周辺  必要経費;約15億円  建設期間;4年  性能諸元;10m口径解像型空気チェレンコフ望遠鏡4台       最低検出可能エネルギー50GeV   検出限界感度1×10^{-13}cm^{-2}s^{-1}(@100GeV, 100時間観測) (3)最高エネルギー宇宙線研究  3m径蛍光望遠鏡42素子のステーション8台のアレイからなる宇宙線望遠鏡を 建設し、宇宙線エネルギーの限界を極める。AGASAグループが最高エネルギー宇宙線 の世界的主導グループである。当該グループは新技術である蛍光望遠鏡試験開発を外 国グループとの共同研究により速やかに完了した後、本計画を早急に実現すべきであ る。  設置場所;米国ユタ州またはオーストラリアウーメラ周辺  必要経費;約50億円  建設期間;3年  性能諸元;10^{20}eV陽子に対して有効検出面積80,000km^{2}sr以上       稼働率10%(深夜のみ)   エネルギー決定精度20%、角度決定精度0.2度 (4)重力波研究  長基線光干渉重力波アンテナを建設し、本格的重力波検出を目指す。  国立天文台にて行われているTAMA計画グループは、今までに蓄積された研究実績 及び今後得られる研究実績をもとにユニークな長基線アンテナを他研究機関と協力 して建設すべきである。  設置場所;神岡または筑波  必要経費;約120億円  建設期間;5年(神岡)または8年(筑波)  性能諸元;kmスケール低温ファブリ・ペロー型マイケルソン干渉計       60Mpc(2億光年)遠方の二重中性子星合体イベントをS/N=10 (信号強度が雑音の10倍)で捕らえられる感度。(検出頻度年約1回) ........................................................................