************* 平成9年度 第1回CRC拡大実行委員会 議事要録 ***************** 期 日:平成10年1月10日(土) 時間:13:30〜17:00 場 所:素核研田無分室 第1会議室 出席者: 太田周(委員長)、村木綏、坂田通徳、松岡勝、鳥居祥二、柳田昭平、 伊藤信夫、水谷興平、南條宏肇、中畑雅行、林田直明(事務局) 依頼出席者:戸塚洋二、湯田利典、木舟正、黒田和明、山本嘉昭、梶野文義、柴田徹、 佐々木真人 §§ 宇宙線将来計画について §1.拡大実行委員会開催について趣旨説明(実行委員長)  現在宇宙線研究所においては、「スーパーカミオカンデ」後の大型将来計画の候補 として、「宇宙線望遠鏡計画」と「重力波望遠鏡計画」を取り上げ、いくつかのシン ポジュウムや研究会を企画しR&Dを進めているが、これによってCRCを含む研究 者の理解を深め研究計画の醸成がはかられているものと理解している。CRCとして は、この機会を捉え、これらの研究計画について、研究所の関係者と将来計画の推進 について率直な意見交換をお願いすることが、今後の研究計画の実施推進にとって必 要不可欠である。本日は、われわれの中核的共同利用研究所である宇宙線研究所の将 来計画に議論を集中することにする。これ以外の宇宙線将来計画については後日、期 を改めて行う。   研究所の将来計画の目的、内容、方法等について最初に紹介をお願いし、研究所の スタンス等を伺い、後半において自由に意見交換をお願いする。 §2.宇宙線望遠鏡計画 (佐々木真人)   計画を速やかに実現させる方向で、煮詰めの議論と作業を繰り返した結果、 TA計画は、「最高エネルギー宇宙線の研究」に専念することを決断した。これによ り、回路装置などの単純化、製作コストの最小化ができ、観測効率が高まったので、 本計画の最も重要な検出面積の最大化と観測時間の最長化実現の見通しがつき、研究 目標の達成に飛躍的に近づいた。 装置は、口径3m固定鏡42台で1ステーションを構成し、約1万本のPMT群で 34度x360度の視野を望む。このステーションを11ヶ所、各々約30km離し て並べる。これでAGASAの60倍の(面積 X 時間)が確保できる。 98−99年度に明野観測所にて検出器、回路、データ処理、大気モニターの試験 開発研究をする。平行して米国 Utah州 Dugway地区で、ユタ大学のハイレズ装置と連 動してステレオ観測をすると共に、最終観測地の大気、バックグランド、利便性など を調査する。99年度分に調査費を、本計画は2000年度分に概算要求し建設を開 始して、2003年からは全装置による観測に入れる様に計画を進めている。 §3.重力波の将来計画 (黒田和明)   一昨年以来、TAMAの次に来るべき大型計画としてJGWO計画を策定してきた が、国際競争性、山岳トンネルの工期、費用の点から今回これを見直した。昨年春以 来進めてきたファイバーによるレーザー鏡の冷却に見通しがついたので、熱雑音を改 善出来る低温鏡を全面に出すことを第一の柱とし、トンネルの工期短縮のため宇宙線 研の施設が整備されている神岡の廃坑を利用することを第2の柱とする。 これを Large scale Cryogenic Gravitational wave Telescope (LCGT)計画 と呼び、宇宙線研の重力波グループを中心として積極的にこれを推進することとした 。これには順調に開発の続くTAMAの技術が前提となっているが、その技術に加え て、低温鏡技術とレーザーの高出力化を目指す技術が新たに加わる。本計画は、LI GOやVIRGOなど外国の諸計画が動き出しても十分競争力のある、魅力的な計画 である。 §4.将来計画のスタンスについて(戸塚宇宙線研究所長より概ね以下のような説明が あった)  研究所の将来計画検討委員会の中間報告から5年が経過した。その間、スーパーカ ミオカンデの立ち揚げ、γ線天体の確認などいくつかの研究の展開があった。神岡実 験が立ち上がり次期計画が順序まちの段階にある。現在、共運委と教授会で議論を積 めている段階である。概略、次の3本の柱が考えられる、  (a) 超高エネルギ−γ線、(b) 最高エネルギ−宇宙線、(c) 重力波。  (a)、(b) は科研費によりR&Dを進めてきた。(c) は新プロジェクトとしてTAMA 計画が進行している。近頃の文部の予算の動向は、科研費だけが伸びていて、共同利 用研究所も科研費で研究を進める以外ない、という状況になりつつある。  種々勘案した結果、実現の早道は、 (a) は大型科研費により早期に行う。    (カンガルーの拡大、予算20億円以内(東大、東北大の例がある)) (b) は研究所の概算要求で行う。    (TAを最高エネルギ−宇宙線に特化する。50億円以内) (c) はKEK、天文台との共同事業として立ち揚げる。    (三所長覚え書きにより、KEK、天文台も熱意ある協力が期待される。 TAMAの成果待ち。概算120億円程度か) となろうかと状況分析している。   CRCでは関連大学の活性化について検討しているようだが、大規模計画の実施に は、そのサポート体制が極めて大切である。計画の選定の段階から、実施に至るあら ゆる段階で統一見解を形成できることが大切である。時間的な問題もある。1月31 日に共運委で検討し、2月5日には物研連がある。学会の支持も得たい。今後もこの 様な議論を是非して頂きたい。 §5.将来計画についての意見、コメント、提案   以上の報告を基に、以下のような意見、コメント、提案等があった。実行委員会と して、共運委等の将来計画策定の参考にして頂くこととした。 ○ この 3、4年には米国、ドイツなどで TeV-γ線の大型計画が実現しそうであり、 益々活発になりつつある。CANGAROO は南半球という利を生かして、10m鏡4台 程度に増強させたい。グラストが上がる2005年が転機かも知れない。それまで にどこまで成果を出せるかが、その後のγ線地上観測の方向を決めるであろう。 ○ TAから TeV-γ線をを切り放して highestだけにすることはやむを得ないが、最 近ハワイのマウナロアに TeV-γ線観測の適地が見つかったので、ここに観測基地 を作って、(1) CANGAROOと連携して北天と南天の観測をする。(2) Mauna Loa がだ めならチベットで行う。とにかく Mauna Loa での TeV-γ線観測の可能性を含めて 検討できないか。 ○ これからの TeV-γ線観測のキーワードは、(a)大口径望遠鏡、(b)多素子望遠鏡、 (c)全天同時観測、(d)多波長同時観測 であろう。93年の将来計画検討小委員会 中間答申には、「もし全天観測が必要であれば、南北両半球に最低2台建設する 必要がある」と明記されている。 Mauna Loa は北緯20度なので広範囲の天空をカバーできる。高度は 3400mあり、 エネルギー閾値を下げれる利点も合わせ持つ(CRCホームページ、速報.4-(図-4)を 参照)。西経156度は他のγ線観測装置が空白の位置であり、他の装置と連携すれ ばバーストなどの時間的変化の貴重な情報を提供できる。また晴天率は格段に良い 。日本から近く、現地の交通の便も良く、将来のγ線観測には絶好の場所である。 ○ Whipple + CANGAROO で全天カバ−ができる。今からでは国際競争に勝てるか。 ○ 日本グループが全天観測することに意義があるので、基地は絶対的に大切である。 ○ チベットは予算が通ったがその中ではできないのか。以前の水タンク計画はどうな ったのか. ○ チベットでは TeV-γ線の上限値しか出ていない。5年の予算の中でも難しいだろ う。 ○ CRCとしては、宇宙線研究所の計画だけではなく別の計画もあっていいはずでは ないか。 ○ 最初に断ったように、今日は宇宙線研の将来計画についての意見交換会である。 CRCにとって宇宙線研は中核的共同利用研究所である。各大学を含む将来計画に ついては後日議論することにしている。 ○ エネルギ−フロンテアを目指す所長案でよい。TeV-γ線については別計画として、 CRCで応援すればよい。 ○ TAと重力波の将来計画については、研究内容や体制について検討を加えながら推 進するとの方針に賛成する。CANGAROOのγ線観測は早い時期に重点後の計画を作成 すべきである。チベットAS実験はチェレンコフ光観測によらないγ線観測でもあ り、KNEE領域の宇宙線成分比の研究と共に期待したい。 これらと共に、飛翔体による観測計画も宇宙線研の将来計画として早急に検討す る必要がある。例えば、GeV-γ線観測と宇宙線成分比の直接観測などは日本も積極 的に参加すべきである。宇宙ステーション計画のJEMでの宇宙線観測など、スペ ースでの観測も宇宙線研が主導的役割を果たすべきである。特に TeV領域の電子観 測計画は日本が先行しており、その成果が期待できる。 米国では研究グループ間の交流関係を示す COSMIC RAY ROAD MAPというのがあり 、現状の分析と Future Perspective を考えるのに便利である。日本の現状の MAP を作ってみたが、日本ではグループ間の交差が少ない様に見える。 ○ R&Dを進めてきたというが、TA計画とは一体何であったのか。 ○ その結果として Highest Energy になった。 ○ 研究グル−プではそうでも、研究所としては未だ決めていない。 ○ TeV-γ線研究を科研費でやれというが、メインテナンスが大変である。 ○ 研究グル−プで努力して頂く。予算獲得の努力もいる。 ○ TeV-γ線は科研費に向いている。但し、早期に実施しなければ意味がなくなる。 南天の基地をキャラクターにするとよい。High Energy End を研究することはユニ ークで理解しやすい。 例えば日本の飛翔体グループは宇宙研と当初から係わってきて、衛星観測までに 発展した様に、我々も高エ研、天文台、宇宙研などとの連携プレーが大切である。 特に TeV-γ線はX線や電波との連携が必須である。他分野と協力するためには、 早い時期からチャンネルを作って置いて、体制作りの体力を養うことが大切だ。 ○ X線とTeV-γ線、重力の低温技術とサファイヤ等他分野との協力体制を作る必要が ある。 ○ COSMIC RAY ROAD MAP での結論の一つは,飛翔体実験へのPI(物理検出器)など の窓を宇宙線研で開いてほしいということだ。後日議論してほしい。 ○ ISAS等も世代交代の時期にある。宇宙線研究について理解を得る努力をしてい かないと、計画の進展がうまく行かなくなる恐れもある。 ○ TAは体制の再構築を行うべきだ。何人が本当に High energy end 計画に取り組む のか。 ○ 若手の啓蒙について、閉鎖的に見える既成グル−プもある。院生特にMC学生の訪 問研究のような方式を研究所としてサポートしてほしい。 ○ 研究所としては歓迎したい。受け入れる体制は既にあるので、具体的な申し出をし てほしい。 ○ 本日のような意見交換会を頻繁に開くべきである。                                  (以上)