
( 資料 ) 

  1998年8月8日 CRC実行委員会 「CRC関連大学の活性化」についての討論概要報告

   CRC実行委員会では「宇宙線研究関連大学の活性化のための方策」と「宇宙線」 
  研究の将来について、各委員がまずアンケート形式の文で見解を書き、それを中 
  心に自由な討論を約４時間にわたって行った。そのおかげで密度の濃い討論をす 
  ることが出来た。ここに議論の概要を紹介する。
  これらの議論は今後、広くCRC総会，拡大実行委員会等においても進めてゆくこと 
  により、最終的なまとめを得る方針である。

主な意見・議論のまとめ
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A○①宇宙線研究のあるべき姿として、宇宙線研究所等の共同利用研を中心として大
   規模研究計画を推進することを通して活性化の達成を図る視点が重要である。 
   これらの研究に関心のある各大学の研究者が広く計画に参画し研究の推進に実質 
   的に貢献する道が体制として保証されることを希望する．

B○  しかし宇宙線研究の広領域にわたる、多様な研究内容を考えれば、規模の大小
   にかかわらず，各大学を中心とした物理的な意義が高く、緊急性を要する研究課
   題も推進されるべきである。萌芽的研究や R&Dもその様な研究に分類される。

C○④地方大学の少人数の研究者が、宇宙線研究所の大規模研究計画に主体的に参加
   できる様、各プロジェクト毎にCollaboration Board を作ることを提案したい。
   解析はもちろんであるが、共同利用の装置の制作や開発研究を各大学で進めるこ
   とが可能となる様な工夫がなされることが望まれる。

D○  CRCでは、多数の研究者は比較的規模の小さい地方大学に所属するという困難
   を打破し、これらの研究計画に積極的に取り組むために、「研究拠点」を構築す
   ることを提言する。
       第１の方法は、研究開発や研究会を地域や研究テーマに根ざして共同で行う
   ことにより、研究拠点の１つにする事である。これによって孤立化した各大学の
   交流をはかり、現状を打破していく事である。
       第２の方法は、大型研究を進めるための体制として、共同利用研の「分室」
   を［各大学に］作ることである。体制の変更を伴うため時間がかかるが、手作り
   で進めながら概算要求まで詰める必要がある。人事・予算の交流が可能となる。

E○⑤宇宙線研究所やSTE研が海外観測センターや、客員教官制度を大幅に充実して
   、国際共同研究の活性化を図ると共に地方からの共同研究参画を可能とすること
   により、地方大学の研究者をencourage することを提案する。

F○③CRCの今後のあり方としては、宇宙線研究の進展と関連研究領域の広域化に伴
   い、CRCの周辺領域の研究者が広く参加する研究者集団としてCRCを拡大・転化す 
   ることが求められる。最終的には「拡大されたCRC」が専門家集団として宇宙線 
   研究所等の共同利用研究所の将来計画や運営等に実質的な寄与ができる体制がで 
   きて行くことが理想的であろう。

G○⑥その他、次のようなことに配慮すべきである。
 　(1)若手の育成に心掛ける。（ドクター論文がたくさん作れないような共同研究
      のテーマは困る）。
 　(2)研究には自然淘汰がつきものであり、有意義な物理の成果を出すことを主眼
      においてCRCの運営をなすべきである。
 　(4)国立大学の agency化、スタッフの30%削減、物理(学科)教室が消えて行く動
      きに対抗策を出す必要がある。
　 (5)当事者による宇宙線分野の宣伝の強化。
   (6)より良い研究環境の実現のため科研費総額2,000億円の実現を要求していく。
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 討 論 の 概 略

(1)    「活性化」とは?   また現状は?  ・・・・・・

1    地方大学的な発想で言う。最近は、大学院大学の充実に見られるように、研究
   と教育の分離の傾向がある様に見える。学部レベルでも、ただ教えるだけでなく
   研究の一端に触れる事は非常に重要である。そしてその研究も、独りよがりなも
   のでなく、世界的にも評価される様なものが望ましいと思う。その様な教育と研
   究が結び付いた事が行なわれていれば、活性化していると言えるのではないか。
2    現在宇宙線研究は、宇宙線研究所を中心としてかなり活発であると思う。また
   、最高エネルギー宇宙線など、今後に期待できる魅力あるテーマもあると思う。
   しかし、これらは一大学の一研究室で運営できるサイズのテーマではない。それ
   では、各大学はどう取り組んだら良いのか、それが我々の課題であるが、まだ結 
   論を得ていない。
3    CRCの立場からすれば、共同利用研としての宇宙線研究所のプロジェクトに積
   極的に参加し、成果を挙げて行くことが「活性化」と考えられるかも知れない。
   しかし「各大学の活性化」となると、必ずしも宇宙線研のプロジェクトに直接関
   係しなければならないとは言えないと思う。
4    「宇宙線関連」の研究が活発に行われ、新しい人材が生み出され、また入って
   くる状況が「活性化」した状況と言えよう。「卒業研究生、大学院生の有無、博
   士の学位をどれくらい出しているか？」、「院生らの研究意欲が旺盛で、学会、
   研究会などで積極的に活動しているか？」なども各大学内で行う「活性化」の評
   価のための判断材料だ。
5    歴史的に見ると、研究の重心を高エネルギー・加速器関係に移したり、「宇宙
   線関連」ではない分野へ移行した研究者や研究室が生まれて来た。その様な側面
   からは、CRC全体としては弱体化していると言わざるを得ない。
6    活動的な研究者を如何にしてCRCに確保するかによりその大学、そのグループ
   は「活性化」されるものである。魅力的な研究の芽を見つけて研究を発展させら
   れる人材の確保が必要である。大学の１研究室に宇宙線の研究室をつくっても、
   優秀な研究者集団が確保できなければすたれる。
   この優秀な人材の確保の方法として次の様な方法が考えられる。
   (１)  宇宙線研究所で魅力的な大プロジェクトを推進する。これに優秀な人材を
       確保し、大プロジェクトを推進しながら将来の指導的役割を果たせる人材を
       育てる。
   (２)  宇宙線研究所で育った人材が各大学に進出して各大学の「活性化」を図る。
       この方法は、宇宙線研究所に限ったものでなく、活発に研究を展開している
       大学 、研究所の研究室に置き換えることができる。
     基礎科学の分野では魅力的な研究課題のあるところに人材は集まり、優秀な人
   材を持つグループから魅力的な研究の芽が出るものである。今、超高エネルギー
   ガンマ線やスーパカミオカンデなど宇宙線は少なくとも魅力的な研究課題を持っ
   て活発にやっている。この時期に優秀な人材の確保が大変重要である。スタッフ
   としてだけでなく共同研究者や学生、ポスドクとして確保する。
     基礎科学は厳しい競争の世界であるため、宇宙線が他の分野との競争に勝てる
   様にCRCが主導して重要かつ魅力的な研究課題を創出して行く努力が必要である。
7    「伝統的な」研究室の状況にこだわる必要はない。良い研究を行ない、人材を
   輩出したことでその研究室は価値があるわけで、宇宙線研究の内容や形態が変化
   している以上、同じ形で存続することなどあり得ないからである。活性化してい
   る状況とは、研究者が宇宙線分野に魅力を感じて研究を続けているかどうかだと
   思う。従っていわゆる「伝統的なCRC関連大学」に属していなくても、研究者が
   宇宙線研究のactivityを持っていれば、そこが「CRC関連大学」なのではないか?   
   CRCが新しい研究分野を取り込んでゆくための意識的活動をすべきである。
8    現在、われわれの教室では将来構想を練る時期に来ている。研究分野のバラン
   スも考慮すべきことではあるが、それよりも先ず大切な事は活発に研究している
   優秀なスタッフを得ることである、と言うのが一致できるところの様だ。仮定の
   話として、大学の物理系で分野を問わず人事公募をしたとき、宇宙線以外の分野
   の候補と比較して、ひけをとらない人材が複数応募して来る様な状況にあれば、
   分野として問題はないだろう。現状ではどうだろうか？
9    スーパーカミオカンデや重力波グループ以外の従来の宇宙線分野の活性度を見
   ると、宇宙粒子線の観測スペクトル、高エネルギーガンマ線天体関係、最高エネ
   ルギー宇宙線観測、太陽宇宙線観測等全般的に「上げ潮的傾向」が感ぜられる。
   しかしながら一方では歴史的に宇宙線研究を担って来た大学の宇宙線研究室が、
   他の分野の研究室に変わって行く傾向も見られる。
     かつて、宇宙線を用いていくつもの重要な発見がなされて来たが、超高エネル 
   ギーの時代になると、実験精度を上げることが困難になり、確定的な結論を積み 
   上げることが容易ではなくなった。しかしながら一方ではこれとは逆に、実験の
   精度を上げる努力を重ね、「確定的な知見」を得る事に成功する流れも生まれて
   いる。今重要な事の一つは「確定的な結果」を得られる様な計画を開拓し、それ 
   が大計画になっても必ず実現していく事である。この様な道を意識的に進まなけ
   れば宇宙線分野の活性化も関連大学の活性化も難しいのではないか。
10   巨大計画（Kamiokande,TA,....) は宇宙線研の様なところで推進せざるを得な
   いことは理解できるが、その他の中小計画（Solar C.R.、Isotope、超重核、粒
   子線等）の重要性が日本ではあまり理解（評価？）されてないのではないか。
   これはひとつにはＵＳＡ、欧州等では Voyager, Ulyssys 等を使ってすばらしい
   データを取っている（特に最近の59Ni/59Co等宇宙線加速時期についての成果等）
   ことにもよるが、次の世紀に人工衛星、スペースステーション等宇宙環境での直
   接観測の可能性が広がるため、各大学の研究者は積極的にそれらに参加して若い
   研究者を育てる必要があろう。


(2)     CRC関連大学にとっての未来, 宇宙線の未来  ・・・・・・

11   学生の宇宙線に対する好奇心は非常に強い。つまり、素粒子（無限小）ー宇宙
   （無限大）をつなげるプローベとして、むしろ加速器実験よりもロマンを感じて
   いる様子がある。各大学の宇宙線研究者は一層努力して、学生達に広い意味での
   宇宙線（Ｘ,gamma, neutrino を含む)の面白さをアピールする必要がある。また
   観測環境についても、特に飛翔体を使う研究者は今後説得力ある物理、技術を進
   (深)化させ、次世紀に備える必要があろう。
     弱小大学では博士を出すのが容易ではない。博士論文の内容は一定のレベルに 
   なければならない。しかし出さなければ学内では活性度の低い分野と評価される 
   。
12   宇宙線研のプロジェクトが排他的でなく、各大学で多岐にわたって行われてい
   る研究活動との関連を保ちつつ包容力のある体制で推進できればよい。
13   地方大学の視点に立つと、宇宙線研究はやり方によって教育と研究を結び付け
   た事が小規模でもやり易い気がする。そして独善に陥らないために、外国との共
   同研究も必要と思う。そして宇宙線を通じて、他の分野へ手を広げて行くのも良
   いと思う。例えば、宇宙線の伝播を通じて銀河の磁場構造とか、Ｃ14を通じて縄
   文遺跡と原研などの加速器型質量分析器(ＡＭＳ)を使って年代測定とその改良と
   か、こんな事が出来ないかと私は考えている。話題性はなくとも新しい事はいろ
   いろ出来るのではないだろうか。
14   今、超高エネルギーガンマ線やスーパーカミオカンデなど宇宙線は少なくとも 
   魅力的な研究課題を持って活発にやっている。この時期に優秀な人材の確保が大 
   変重要である。スタッフとしてだけでなく共同研究者や学生、ポスドクとして確 
   保する。スーパーカミオカンデの発展、超高エネルギーガンマ線源の探査、宇宙 
   線最高エネルギーの観測、重力波の観測など世界に先駆けた研究を「強力かつ速 
   やかに」進めて行くことが期待されよう。一方、次の芽を育てる努力も怠ること 
   はできない。
15　 私は特に悲観的な見方も楽観的な見方もしていない。「研究課題の枯渇」の心
   配はあまりないと思うが、ほとんどの研究テーマが人・金の両方で大きくなり過
   ぎている様に思う。この場合には地方大学が自前のプロジェクトを持つことは困
   難になる。宇宙線分野としてはＴＡの様な大きなプロジェクトは非常に大事では
   あるが、そればかりでは困る。
16   物理屋にとっては課題が枯渇するから心配なのではなくて、なにかの物理を確
   かめたり探したりするのに役に立つかどうかが感心事ではないか？ CRC関連分野
   として、「研究課題の枯渇」という心配の仕方は、他分野から冷静に見ればおか
   しなことだ。もちろん観測実験というのは、「何か訳の分からんものが出る」(
   と言うか特に宇宙線はそういう事が歴史に多かった)という予期せぬ発見も捨て
   がたいので、まったく枯渇してしまうのも考えものですが...
17   各大学が自らの力で活性化するとか、宇宙線研究所のアクティビティを借りて
   活性化しなければならない。魅力のある研究課題が見つからなければ新しい優秀
   な人材は呼べないし、入ってこない。今いる大学のスタッフが必死で魅力的な問
   題を見つけなければ将来は暗い。または、魅力的な研究課題を推進出来る人材の
   確保に必死に努力する。かって優秀な人材が集まった宇宙線研究所ではスペース
   の方に転向した人材もその分野で活躍し、所に残った人材も優秀であったため停
   滞していた宇宙線から必死に研究の芽を育てあげたため、今日の活発な状況をも
   たらしていると考えられる。


(3)    CRC関連大学の活性化という観点から、宇宙線研究所には何が期待出来る？

18   宇宙線研のプロジェクトの中心に関わっていない者としては、プロジェクトが
   「排他的な体制」で進められ部外者の（それぞれの立場からの）参加の道が閉ざ
   されぬ様に配慮することが重要と思う。
19   大学では出来ない規模の、世界的にも大型のプロジェクトを推進することが必
   要である。このプロジェクトに優秀な人材を引きつけ優秀な人材を育てる。育っ 
   た人材が各大学に入り込む。とにかく、現在シニアな層の宇宙線研究者が、宇宙
   線に関連した魅力的かつ重要な研究課題を推進する様に努力する事が、最も重要
   である。スーパーカミオカンデの発展、超高エネルギーガンマ線源の探査、宇宙
   線最高エネルギーの観測、重力波の観測など世界に先駆けた研究を強力かつ速や
   かに進めて行く事が期待されよう。一方、次の計画の芽を育てる努力も怠ること
   はできない。
20   宇宙線関係分野では、かなり以前から大規模または超大規模プロジェクトに依
   らなければ「確定的な物理結果」を得る事が困難であったと私は認識している。
   先駆的研究のおかげで一つの大型実験計画が現実的になって来た場合、各大学は
   「明確に主体的といえる協同研究の形態」によってその大型計画に参加し、それ
   を成功させるということを通してはじめて、活性化して行く事が可能となるので
   はないか。その際の欠かせない「形態」とは、研究者が各自の大学において「大
   規模プロジェクトでの貢献、すなわち装置、計画のどこの部分の開発研究に寄与
   し、どこのデータ解析を行い、どのような新しい知見を得たかについて自学内及
   び外へ向けて具体的に説明することができる」ようになることであろう。このこ
   とが自然に保証され、活発な共同研究が行われるような「形態」をCRCと宇宙線
   研究所で協力して開発することが極めて重要である。良いものが出来れば各大学
   のプロジェクトへの参加意欲は高まるだろう。
21   大型プロジェクトを宇宙線研を中心に進めることは基本的には賛成。各大学の
   参加研究者自身の姿勢の問題もあろうが、仕事分担を徹底して、各大学への分担
   金ももっと増やし、責任を持たせることが必要である。これは大学の活性化、若 
   手の育成にとっても非常に重要である。単なるお手伝いでは各大学の若手の研究
   意欲がなくなる。
22   中小計画に対する宇宙線研の役割はかってに比べると失われつつある？
   Emulsion部は比較的良い方か？ 柏移転に伴って現在の設備どうするか等、議論 
   を深める必要があろう。宇宙線研究所は柏移転について共同利用者の意見をもっ 
   と聞くべきである。
23   宇宙線研と各大学の関係は、これまでの共通認識としては
	       各大学  ＜＝＞ 研究、教育、若手育成
    	     宇宙線研  ＜＝＞ 研究、共同利用サービス
   つまり、各大学は教育、若手育成という重要な側面をもつが、研究所はそれに対 
   応して共同利用研究者に対して実験設備、施設の提供、サービスという側面があ 
   った。ただこの図式はかっての様に中小の計画（当時はあまり「中小」という意
   識はなかった？）が研究所内にあった場合には成立していたが、現在の様に大型
   計画が走り始めている場合にはいくつかのひずみが生ずるのは必然である。 
   そのいくつかを述べると
     ＊ 宇宙線研所員のいないプロジェクト（当然中小計画） ＝＞共同利用予算申 
        請を基本的にはできない。
     ＊ 若手研究員採用＝＞宇宙線研プロジェクト内若手優先 ＝＞各大学中小プロ 
        ジェクト若手不利 （若手の生活設計を考えると宇宙線研プロジェクトを進
        めるしかない）
     ＊ 旅費の扱い：全て宇宙線研への来所が前提・・・・・＝＞ もっとflexible
        にできないか（事務的に困難？）
     ＊ ＩＣＲＲ－ｒｅｐｏｒｔ・・・・・・・・・・・・・＝＞ もっと open に
        （但し、acknowledgement に宇宙線研について言及する必要はあろう。初期 
        の頃はそれさえもなかった）
     ＊ 海外共同研究センターを設ける・・・・・・・・・・＝＞ 国際協力で行っ
        ているプロジェクト（宇宙線研所員が入っていない場合でも）の支援（特
        に旅費、覚え書き、できたら研究費も）
24   宇宙線次期計画においては大規模な設備を海外に設置して実験することが必要
   であり、国際協力は不可欠である。そして現地及び共同研究参加国の研究者など
   の日本における研究制度や留学生の受け入れ等が必要である。そのためには、国
   外での発注、製作、設備維持、常駐職員(技官、事務官を含めて)、適正な派遣費
   用の確保、現地人の雇用、共同研究者の日本における滞在等が可能にならなけれ
   ば、真の国際協力は困難である。これを可能にする「国際センター」の設置が不
   可欠である。
25   最近は数10億 ~ 2・300億程度の大型のprojectが増えているが、この様な計画
   を多くの大学が共同研究で実現していくための核になってほしい。現在でも宇宙
   線研はその様な役割をこなしているが、より徹底してできないか？
26   地方大学では、その規模が小さいために、大学からは開発のための独自の支援
   がほとんど受けられない状態である。宇宙線研究所に宇宙線分野全体の開発の支
   援を行うナショナルセンターとしての機能を持たせることは出来ないか。宇宙線
   研究所は以前に比べて「共同利用研究所」としての面が小さくなっており、カミ
   オカンデで代表される巨大プロジェクトを行うところになっている様に思われる
   。
27   共同利用の施設の維持と、共同利用の公募。宇宙線研で行なわれている以外の
   テーマについても、広く開かれている事。今までも上の様な機能はそれなりにし
   ていたと思うが、更に拡大してもらいたい。小さい大学が集まって互いに協力し
   て行なう計画があっても良いのではないか。これに対して宇宙線研は何らかの協
   力・助成をして行く。
28   TeV-ガンマ線やHighest Cosmic Rays は天文分野の方から見ても魅力がある。
   急ぐべきである。


(4)    活性化のために必要な環境・施策・条件   ・・・・・・

29   宇宙線研究は開びゃく以来、宇宙と素粒子にまたがる領域を研究の場として来
   たので、生まれつき学際領域をその住み家としてきた。従って研究の立案・実施
   を通じて分野の壁を取り除いた取り組みと役割分担が必要となる。
30   各大学のなかで重要な研究課題がでた時、大学で予算確保が困難な時、宇宙線
   研究所が強力にバックアップする制度をつくる。
   客員部門は中規模または小規模のプロジェクトの推進に使うことができないか？
   現在は大プロジェクト用に使われているが。
31   宇宙線の観測サイトは国内・海外の高山、海中、地下、気球基地等における国
   際共同研究が常態であり、海外及び国内での研究をスムーズに進めるために、例
   えば宇宙線研究所に「国際センター」を設置するなどの体制作りが必要である。
32   柏移転に伴って現在新設要求をしている「宇宙線観測情報センター」の「客員
   ポスト」は有効に活用出来る可能性がある。
33   地方大学が直接海外とつながるのは活性化に有効である。例えば、一定期間を
   地方大学に滞在可能な外国人客員研究員のポストを宇宙線研究所に作れないか?  
   人選は各大学からの推薦にもとづく。そして、その外国人研究員は長期に研究所 
   を離れて推薦した大学で研究する。
34   宇宙線研以外の大学の大規模な計画もあってもよいのではないか。
35   科研費の改革が必要である。
        (1) 科研費を増額して、採択率を50%にする事が活性化につながる。
	(2) 科研費を使って海外で研究をする事の規制緩和をする。
   また共同利用研究所の概算要求が通過した時、法改正を伴った予算の各大学への
   分担・配分方式の導入が必要である。
36   CRCでは飛翔体をもっと考えるべきであり、計画立案のための取組みが必要で 
   ある。
37   プロジェクト等の必要に応じて「各大学等に」研究計画の推進に必要な「共同
   利用研の分室」(プロジェクトセンター)を設け、大学・研究所が各々の「独自性
   に基づく研究分担」を行う事を通して、学生・研究者は第一線の研究計画に参画
   することができる。「分室」へは研究所の若手が出向する等、研究者の交流拠点
   にもする。CRCでは6年前にこの事について議論している。研究分担の費用を各大
   学で執行可能にする事、客員ポストを共同利用研・大学ー分室(センター)共同利
   用研の間の有効な人事交流を進める事などが、制度的に可能となる方策が必要で
   ある。　
38   科研費の問題はもちろん宇宙線の中だけで議論しても話にならないが、現在の
   審査・採択方式は専門外の人も含めて決定している（もちろんそのメリットもあ
   ろうが）ため、有名プロジェクト、大型プロジェクトが採用され易くなっている
   。その点重点領域（公募研究）で行われている方法は専門分野の人が厳しく査定
   するので、その様な弊害は比較的緩和されているのではないか。もっと別の方法
   があれば良いが。
39   新しい研究を生み出す検出器と検出方法の開発や萌芽的な研究の育成は、研究
   計画の推進の要であり、地方大学や私立大学の活性化のためにも、大型研究の実 
   施と平行して、これらをサポートする方策と特別な予算措置が必要だ。
40   各々の宇宙線研究計画に関する国民的理解が得られる様、研究の必要性に対す
   る広義の学会はもとより社会に知ってもらい、支援してもらう取組みが必要であ
   る。人々に理解してもらえるシナリオの作成も大切な研究活動の一部である。

 
(5)     拠点大学 等について   ・・・・・・

41   大型のプロジェクトは、宇宙線研で行なえば良いと思うので、拠点大学の意味
   は？
42   優秀な学生を産める拠点大学があれば、宇宙線関連の研究の広がりを大きくで
   きる。宇宙線研以外に大きな拠点をもう1つ2つ増やす努力をせよ。
43   原子核groupはcenterが４ヵ所もあるという。CRCから見れば恵まれた環境に置
   かれているが、我々に必要なのはそういうfacilitiesだろう。
44   実験が大規模化し、一つの大学や、一つの研究所のみで実験を実施する事が困
   難となり、実験の成否は、その物理学だけでなく、適切な予算措置と研究組織の
   良否にかかっているといっても過言でない。従ってテーマの選択を適切に行い、
   機関・分野をまたがる研究組織を円滑にする工夫と努力が必要である。また、大
   型研究の実施によって、中央の共同利用研究所にのみ研究予算、研究者、設備の
   集中が起こり、地方の各大学の活性が枯渇する事のない様、21世紀にふさわしい
   新たな体制と施策が必要である。
45   活性化を図るためには、各研究者一人一人が各々の大学で研究、教育に一層の
   努力をする事は言うまでもない事だが、同時にそれらの環境を一層充実させるた
   めに、学内行政に対しても各々の立場に応じて積極的に努力する事が重要であろ
   う。

以上
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