平成9年度第2回宇宙線研究所共同利用実施専門委員会議事要録(文責;中畑雅行) 日時 平成10年3月27日(金) 場所 宇宙線研究所会議室 出席者 村木綏(委員長)、松原豊、倉又秀一、大橋英雄、梶野文義、川上三郎、 宗像一起、堀田直己、戸塚洋二、中畑雅行(幹事)、佐々木真人、湯田利典、 永野元彦 オブザーバー 手嶋政廣 1. 研究所の近況報告(所長) 研究所の将来計画についてシンポジウム等を開き議論してきた。今後は、ガンマ線、 最高エネルギー宇宙線、重力波を進めていく予定である。平成12年度に研究所は柏 に移転する予定である。平成10年度予算で研究所の電子計算機システムが認められ、 平成11年1月頃導入の予定である。「宇宙線観測情報センター」を文部省に要求して いる。平成10年度に宇宙線研究所は今後の研究体制等に関して外部評価を行う予定で ある。それに伴いユーザーサイドから見た研究所の評価を実施委員会にお願いしたい。 2. 研究所付属施設の近況報告  (a) 明野観測所(永野) 平成9年11月29日に明野観測所20周年記念式典が開かれた。それに伴い「明 野観測所共同利用研究成果報告書」がまとめられた。明野観測所のAGASA装置は、 現在世界で稼働している唯一の最高エネルギー実験装置である。その他の共同利用 研究として、鉛サンドイッチ検出器、水チェレンコフ検出器が稼働中である。 (b) 乗鞍観測所(湯田) 平成8年度に更新された2台の発電器を含め全3台が順調に稼働している。平成9 年度に観測所員1名が退職したが6月から研究支援推進員として1名補充された。 平成10年度から1名欠員になるが国立天文台コロナ観測所から1名が4月1日付 けで来ることになった。現在、観測所員7名、研究支援推進員1名の計8名で運営 している。通常2名、ただし冬季は名大STE研と信州大学から1名以上の支援を受 けて、観測に当たっている。天文台のコロナ観測所は今後冬季間は閉鎖することに なる。研究プロジェクトとしては、名大STE研の太陽中性子観測装置、高精度中間 子観測装置、理研の中性子モニター、大橋氏の宇宙線ミューオンモニターが定常観 測を行っている。理研の中性子モニターは、4月から名大に管理が移る予定である。 (c) 神岡宇宙素粒子研究施設(戸塚) スーパーカミオカンデは、2年前から順調に観測を続けている。大気ニュートリノ、 太陽ニュートリノ、LINACキャリブレーション、陽子崩壊等の論文が近いうちに出 版される予定である。大気ニュートリノについては、ミューオンニュートリノの欠 損、天頂角分布の異常がカミオカンデを格段に越える統計精度で観測されている。 今後は太陽ニュートリノ欠損の解明が重要な課題である。1998年の6月に高山 でNEUTRINO 98国際会議が開かれる。平成11年3月頃から3年計画でKEKか らニュートリノを飛ばす実験(K2K)が始まる。旧カミオカンデの実験場所で東北 大学のKam-landプロジェクトが始まり坑道の拡幅工事が今年から始まる。平成1 0年3月に計算機システムが更新された。現在、スタッフ11名、大学院生約10 名、共同利用者約10名の総勢約30名体制で研究をしている。2年後頃には外部 評価をしたいと考えている。 (d) 田無微弱放射能測定施設(大橋) 昨年の梅雨の時期に結露した。夏休みにかけて揚水ポンプを設置した。地下の温度 湿度をモデムを使って常時モニターしている。共同利用としては、山形大学の雨水 中の放射能測定、南極の宇宙塵の測定を行っている。柏キャンパス新研究棟に予定 している地下実験室の更なる有効利用を考えてほしい旨コメントがあった。 3. 議事 (a) 乗鞍観測所の将来について 松原委員より、乗鞍に設置されている太陽中性子望遠鏡について説明があった。 平成7年度の補正予算で装置を64m**2に拡張し観測を行っている。世界で 5カ所に装置を配置し、太陽を24時間体制でモニターしている。その装置の中 心に当たるのが乗鞍の装置である。今後、2004年頃までに約100例の太陽 フレアーを観測できる予定である。そのため、2005年まで観測所を運営して ほしい。 これに対して次のような質問、意見が出された。 ・ 電気量はどのぐらいかかるのか。 (答)3.2 kW程度 ・ どのぐらい人が付いていないといけないか。 (答)遠隔地からモニターができない ため、現地でデータ取得のモニター、テープ交換をしなくてはならない。 ・ 一日のデータ量はどのぐらいか。 (答)一日あたり9メガバイト。 ・ 電話回線でデータは送れないか。 (答)緊急用回線として使用しているため使 用できない。 ・ 遠隔地でオペレーションはできないか。 (答)高電圧等の復帰ができない。 ・ 冬も観測しないといけないか。 (答)観測する必要がある。 ・ 拠点を乗鞍でなくチベット等他にできないか。 (答)乗鞍の方がアクセスし易 い。 ・ 2004年以降はどうするのか。 (答)100例の現象をみてから考えたい。 ・ 乗鞍の他の共同利用数は。 (答)今年の共同利用は環境関係も含めて8件程度。 ・ 外部評価のために乗鞍での研究について成果報告書が必要である。 ・ もっと施設を研究活動に有効利用する方策はないのか考えるべきである。 (b) 明野観測所の将来について 手嶋氏より資料「明野観測所の今後」について説明があった。世界の最高エネルギ ー宇宙線実験装置が観測できる現象の数は、2003年頃までは明野AGASAが世界で 最高の統計量を誇る。その後1年程度HiResが越えるかもしれないが、その後は telescope Arrayが急速に統計量を増やして行く予定である。したがって、1999 年以降も5年間AGASAを延長して2004年までは、データをとり続けて行きた い。また、Auger projectの準備、新しい技術の開発研究としてしてもAGASAを使 用して行きたいと考えている。 これに対して次のような質問、意見が出された。 ・ 大事な研究なので後5年間は続けた方がいい。 ・ Cyg X-3からのEeV領域中性粒子の結果に非常に興味がある。 ・共同利用実験者は何人ぐらいか。 (答)30−50人位。 (c) 宇宙線観測情報融合センターについて 戸塚所長から資料「宇宙線観測情報融合センターとは何か」に沿って趣旨説明があ った。実施委員会で今後議論を進めて行ってもらいたい旨、所長から要請があった。 このセンターにより融合的な研究の企画、広報関係を進めて行きたい。 これに対して次のような質問、意見が出された。 ・ 海外への接続の回線経費は要求できないか。 ・ 電子計算機システムの管理運営はこのセンターで、できないか。 (d) 共同利用研究、研究成果の発表方法について 来年度から共同利用の成果報告を求め、共同利用成果報告集としてまとめることと なった。また、分野を定め、実施委員会主催の基で口頭発表の場を設けることとな った。