<<<<<<<<<<<<<<<<<<< CRC News No.779:2005年 4月27日 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> CRC会員 各位 CRC事務局 宇宙線研支部 ******************< 第3期科学技術基本計画策定への提言 >****************** CRC総会での議論をもとに、平成16年度のCRC実行委員会でまとめました 「第3期科学技術基本計画策定への提言」です。必要なら、ご活用ください。                        平成16年度CRC実行委員会 --------------------------------------------------------------------------                             平成17年4月25日 総合科学技術会議 殿、 宇宙線研究者会議(CRC)* 第3期科学技術基本計画策定への提言 第3期科学技術基本計画においては、基礎科学における大学附置研究所や大学共同利 用機関の大型研究施設の充実を中心として、中大型規模の長期的な研究の継続的発展 が可能になるような以下の方策を強く要望する。 1.基礎科学予算の重点化 第2期科学技術基本計画では、「科学技術の戦略的重点化」において基礎研究の推進が あげられているが、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の いわゆる重点4分野で「優先的に研究資源を配分」することになり、それ以外の基礎科 学分野が基幹技術の10項目として明記されていない。第3期はこれまでに国際的に 高く評価されている将来性のある基礎科学の分野について、国の重要政策として取り 上げることを強く要望する。そして、基礎科学を一層推進するためには、基礎科学の 産業界からの支援を受け難い面を考慮し、予算面での重点的配分について十分な配慮 をしていただきたい。 2.基礎科学における大型研究施設の重要性 基礎科学の発展にとっては、歴史的にみても、各大学の研究者が共同で利用できる施 設が極めて重要である。研究者は、当該分野の大学附置研究所や大学共同利用機関に おける大型施設の利用により、個別大学では達成できない、世界的レベルでの研究を 達成してきている。宇宙線分野では、これまでにノーベル賞の受賞など日本が世界に 誇れる成果をあげており、それを可能にした基幹的施設も存在している。 例えば、 神岡鉱山の地下実験施設がそれである。 この施設は、宇宙線実験だけでなく、宇宙 暗黒物質の探索、重力波アンテナ建設、地殻変動の高精度測定などの多分野で利用で きる研究施設である。また、日本が重要な貢献をしている国際宇宙ステーション (ISS)においては、宇宙線やX線、ガンマ線観測に加えて地球大気の観測などが計画 されている。 米国ユタ州に建設されているTelescope Arrayは超高エネルギー宇宙線 のみではなく、地球環境のモニターリングにも利用できる。 このような、基幹的な 施設の充実を図ることは、宇宙線分野だけでなく広く基礎科学の振興に寄与するもの であり、このような大型研究施設をさらに発展できるような方策が必要である。 3.大学間協力による大型研究施設の可能性 国立大学の法人化により、大学間、大学、共同利用機関との共同出資による大型研究 の可能性が出てきている。今後は大学の独自性が問われる時代となるので、大学発の 大型研究も共同利用機関と連携して発展させることができるような予算措置の検討を 要望する。 この際、大学附置の共同利用研究所などでは、数10億円を越す予算を概 算要求として出すことが極めて難しくなっているので、大型の基礎研究が実現可能な 予算枠を作って、機動的に対応する仕組みも整備することが急務であると考える。 4.研究者ポストの弾力的運用 共同利用の大型施設を有効に利用し、外国とのきびしい競争に打ち勝つためには、早 期の成果をあげる必要がある。このため施設を利用する国公私立の各大学・研究所の 研究者や学生を強力に支援するための予算の仕組みを早急に整備するとともに、任期 付きの助教を共同利用研に大量に、弾力的に投資できる人材バッファー雇用システム の導入が望まれる。 5.大型研究施設の維持に関する予算の必要性 宇宙線物理学を含む基礎研究では、研究の期間が長期にわたる。このため、代表的な 競争的資金である科学研究費による研究だけでは、その交付期間が終了すると実験装 置の維持が難しい状況が生まれる。長期にわたる実験、観測に対しては、装置建設が 終了した後も、十分に研究が維持でき、成果がだせるだけの維持運転経費を保障する 予算や、技官の雇用を可能にする仕組みの導入が不可欠である。 また、基礎研究を 国外で展開している場合に、大型施設の利用が終了した時点で、実験装置の撤収・後 始末のための予算を獲得することが極めて困難である。このような場合に対応できる ような予算の項目も検討する必要がある。 6.競争的資金の審査制度の改善 現在の競争的資金の審査では、かなり規模の異なる予算であっても準備する申請書の 内容や分量があまり変わらない。さらに、審査方式が必ずしもシステム化されていえ るとはいい難く、少人数の審査員による評価システムでは、十分な内容の審査や公平 性の確保が難しいと考えられる。このような審査制度の改善策として、米国のNSFのよ うなシステムの導入により、ピアーレビューを充実させるとともに、審査員が審査に 専念できる環境で、十分な資料に基づく審査が実施されるシステムが必要である。今 後は、より一層競争的資金の獲得による研究の発展が望まれているが、審査制度の抜 本的な改正はその前提条件であると考える。                                                                      以上 *) 宇宙線研究者会議(略称:CRC) 1953年に、日本の宇宙線研究を推進するために全国の大学に所属する研究者によ って結成された、宇宙線研究者の唯一の組織である。全国共同利用研究所である東京 大学宇宙線研究所を中核として、現在約100の研究、教育機関に所属する350名余の研 究者が参加している。                                 e-Mail: crcjimu [at] icrr.u-tokyo.ac.jp http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/CRC/   ===================================