<<<<<<<<<<<<<<<<<<< CRC News No.2130:2013年 7月 1日 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> CRC会員 各位                             CRC事務局 ****< 名大STE研研究集会「宇宙線による雲核生成機構の解明」7月12日 >**** 皆様 下記の研究会を開催しますので、是非ご参加ください。 参加費無料 名古屋大学太陽地球環境研究所 研究集会 「宇宙線による雲核生成機構の解明   −ラボ実験とフィールド観測からのアプローチ−」 日程:2013年7月12日(金)10:00〜17:00 場所:名古屋大学 高等総合研究館 1階カンファレンスホール http://www.iar.nagoya-u.ac.jp/~iar/wp-content/uploads/2013/04/map.pdf 大気中のエアロゾル核生成、雲核形成は地球上の雲量を左右し、間接効果と呼ば れる太陽光の反射により地球環境に大きな影響を与える。エアロゾルの生成にお いて、イオン誘起の核形成は重要な役割を果たしていると言われてきている。大 気中ではイオンは宇宙線や雷などによりバックグラウンド大気中で生成される。 宇宙線と雲量の相関がいろいろ議論されているが、イオン誘起のエアロゾル核形 成についてはこれまで、実験的にもフィールド観測でも充分には解明されていな い。今後、地球温暖化などの将来予測を行っていく上で、この過程の定量的な解 明が不可欠である。そこで今回、イオン誘起のエアロゾル核形成について、実験 室でのチャンバー実験の研究者、フィールでのエアロゾル形成過程の観測研究者 が一堂に会して、この研究のブレークスルーを見出す議論を行うことを計画して います。 名大太陽地球環境研究所の共同利用研究集会として開催します。 プログラム 10:00-10:25 持田 陸宏(名古屋大学 大学院環境学研究科) 「大気中の新粒子・雲凝結核に関する近年の研究の動向」 10:25-10:35 片岡龍峰(東京工業大学 理学研究流動機構) 「宇宙線と雲の長期変化に関する短いコメント」 10:35-10:50 草野完也(名古屋大学太陽地球環境研究所) 「核生成の積雲降水システムに対する影響について」 10:50-11:15 宮原ひろ子(武蔵野美術大学) 「赤道域におけるフィールド計測の可能性について」 11:15- 11:40三浦和彦(東京理科大学理学部、総合研究機構山岳大気研究部門長) 「富士山頂における新粒子生成の観測」 11:40-12:05 上田紗也子(名古屋大学太陽地球環境研究所) 「太平洋で観測したイオン濃度と新粒子生成イベント」 12:05-13:15 昼休み 13:15-13:30 五十嵐康人(気象研究所) 「宇宙線・雲仮説について考えること」 13:30-13:45 財前祐二(気象研究所) 「福島事故前後のつくばでの微小粒子の変動」 13:45-14:00 梶野瑞王(気象研究所) 「エアロゾルの核形成からCCN活性までの高効率な数値手法の開発」 14:00-14:25長門研吉 (高知工業高等専門学校) 「SO2,NH3を含む空気の電離で生成するクラスターイオンの研究」 14:25-14:50 鈴木麻未(名古屋大学 太陽地球環境研究所) 「宇宙線による雲核生成助長についての室内検証実験」 14:50-15:00 休憩 15:00-15:25奥山喜久夫(広島大学工学研究院) 「低温および減圧下での軟X線の照射によるイオン誘発核生成」 15:25-15:50 冨田成夫(筑波大学数理物質科学研究科) 「N2/H2O/SO2中での20MeV陽子線による液滴生成量とSO2消費量との関係」 15:50-16:15 服部祥平 (東京工業大学大学院総合理工学研究科) 「安定同位体計測を用いてイオン誘発エアロゾル生成のメカニズム解明をするた めの戦略案」 16:15-17:00 総合討論 -------------------? 講演概要 10:00-10:25 持田 陸宏(名古屋大学 大学院環境学研究科) 「大気中の新粒子・雲凝結核に関する近年の研究の動向」 大気中のエアロゾル粒子・雲凝結核の濃度に対する核生成の寄与を把握すること は、エアロゾルの気候影響を理解する上で重要であるが、核生成の機構や、核生 成と雲凝結核との結びつきに関する知見は未だに乏しい。本講演では、新粒子お よび雲凝結核に関する近年の研究を、講演者の研究を含めてレビューする。そし て、これまでに得られている知見を整理し、今後の研究の方向性について議論する。 10:25-10:35 片岡龍峰(東京工業大学 理学研究流動機構) 「宇宙線と雲の長期変化に関する短いコメント」 ISCCPを用いた、雲量の長期変化に関する解析結果を示す。2000年までは正相関 を示していた宇宙線量と低層雲量は、2000年以降に逆相関を示している。 10:35-10:50 草野完也(名古屋大学太陽地球環境研究所) 「核生成の積雲降水システムに対する影響について」 エアロゾルと雲降水システムの相互作用は環境変動の理解にとって重要である が、高度な非線形性を伴うため未だに定量的な理解に至っていない。我々は超水 滴法と呼ばれる新しい計算法を用いて、雲核生成と雲降水システムの応答関係を 調べた。その結果、核生成率が10^-2/m^2/s前後で、雲降水システムが核生成に 敏感に応答することを見出した。この計算結果に基づいて宇宙線によるイオン誘 起核生成が気候影響を与え得るかを考察する。 10:50-11:15 宮原ひろ子(武蔵野美術大学) 「赤道域におけるフィールド計測の可能性について」 概要「太陽フレアにともなって発生する宇宙線量の減少(フォーブッシュ減少) に着目することで、宇宙線に対する雲核形成の応答をフィールド計測で検出でき る可能性がある。太陽紫外線などの雲活動への影響との分離も可能である。本稿 では、赤道域の雲活動データの解析結果の現状をもとに、今後どのような観測が 考えられるかについて議論する。」 11:15-11:40 三浦和彦(東京理科大学理学部、総合研究機構山岳大気研究部門長) 「富士山頂における新粒子生成の観測」  富士山頂における夏季7年185日間の観測中、20nm以下の粒子濃度が3時間以上 継続して高濃度となるイベント(新粒子イベント)は103回観測された。しかし イオン誘発核生成と思われるイベントは2例しか測定されていない。この時、既 存粒子への凝集速度が小さかったため、小イオン濃度が高かった。また、O3/CO の値が低く、水蒸気混合比が低かったことから、上空の空気が下降してきた可能 性があることが暗示された。 11:40-12:05 上田紗也子(名古屋大学太陽地球環境研究所) 「太平洋で観測したイオン濃度と新粒子生成イベント」 白鳳丸KH-11-10およびKH-12-1航海において、太平洋広域のエアロゾル粒径分布 とイオン濃度を連続的に測定した。各海域ごとの粒径分布とイオン濃度の特徴、 特に、観測された新粒子生成イベントの頻度やイベントの発生条件について整理 した結果を紹介する。 13:15-13:30- 五十嵐康人(気象研究所) 「宇宙線・雲仮説について考えること」 宇宙線・雲仮説は、太陽活動低下時期における寒冷化や地質年代学的な時間ス ケールでのスノーボールアースを説明できそうな魅力がある一方、個別のプロセ スの連関や本当に重要なプロセスが依然不明と言ってよい。福島第一原発事故に より汚染を受けた地域では、線量率が通常の200倍以上に上昇した地域がある。 こうした地域では大気中のイオン生成率も200倍以上になっているはずであり、 イオン誘発核生成が生じているのかどうか検証するのに好適であろう。 13:30-13:45 財前祐二(気象研究所) 「福島事故前後のつくばでの微小粒子の変動」 つくばの気象研究所屋上階では、2010年8月から現在まで、SMPSの連続 測定を行っている。2011年の3月以前は、最小粒径は約9nm、それ以降は7nm以上 のサイズ分布を測定している。 9-11nmの粒子数は、事故のあたりから大きく増えている。しかし、それが放射線 によるイオン誘発核生成の影響なのか季節変化なのかは、微妙なところである。 13:45-14:00 梶野瑞王(気象研究所) 「エアロゾルの核形成からCCN活性までの高効率な数値手法の開発」 3次元モデルでエアロゾル雲の相互作用を高精度で算出するためには,数値手法 の正確さと同時に軽さが重要となる。本研究で新たに開発したトリプルモーメン トビン法を用いると,エアロゾル動力学計算において従来の手法に比べて3分の1 以下の計算機資源で同程度の精度を出せる可能性が示唆された。 14:00-14:25 長門研吉 (高知工業高等専門学校) 「SO2,NH3を含む空気の電離で生成するクラスターイオンの研究」 イオン誘発核生成は安定なクラスターイオンの生成からスタートする。大気中に は常にこのような安定なクラスターイオンが存在していると考えられているが、 その組成についてはまだ十分に明らかになっているとは言えない。本研究では SO2,NH3を含む空気中での放電によって生成するクラスターイオンの組成を大気 圧イオン化質量分析装置を用いて測定した。また質量スペクトル中に検出された クラスターイオンの組成や生成反応について量子化学計算を用いて検討を行った。 14:25-14:50 鈴木麻未(名古屋大学 太陽地球環境研究所) 「宇宙線による雲核生成助長についての室内検証実験」 宇宙線による雲核生成の助長について室内においてチャンバーを用いた検証実験 を行なっている。海上の大気組成を再現した空気をチャンバー内部に流入し、宇 宙線に見立てたβ線源と太陽紫外線に見立てたUV光を照射しイオン密度とエアロ ゾル密度の増減を測定する。これまでの結果として、イオン密度増加に伴うエア ロゾル密度の増加が確認され、イオン密度が一定値以上になると、エアロゾル密 度が飽和傾向を示した。 15:00-15:25 奥山喜久夫(広島大学工学研究院) 「低温および減圧下での軟X線の照射によるイオン誘発核生成」 SO2/H2O/N2ガスに軟X線を照射したときに発生するイオンおよびイオン誘発核生 成による帯電粒子の個数濃度および粒径分布を計測する実験システムを開発し、 低温および減圧下でのイオン誘発生成現象を条件を変えて計測した。さらに得ら れた結果をイオンの発生を含まないUV照射による均一核生成による無帯電粒子の 個数濃度および粒径分布と比較して、イオン誘発核生成が支配的となる条件につ いて検討した。 15:25-15:50 冨田成夫(筑波大学数理物質科学研究科) 「N2/H2O/SO2中での20MeV陽子線による液滴生成量とSO2消費量との関係」 我々は加速器から得られる20MeV陽子線を用い、N2/H2O/SO2中でのイオンビーム による液滴生成量についてビーム強度、および湿度、SO2濃度をパラメータとし て実験を行った。特にビーム照射によるSO2減少量との相関に注目し、ビーム照 射によるSO2の酸化プロセスの重要性を見出した。この結果について報告する。 15:50-16:15 服部祥平 (東京工業大学大学院総合理工学研究科) 「安定同位体計測を用いてイオン誘発エアロゾル生成のメカニズム解明をするた めの戦略案」 これまでCERNやSvensmarkラボでの実験において、イオン化が硫酸エアロゾル生 成を誘発していることが明らかになってきている。SO2から硫酸が生成する酸化 過程として、気相中におけるOHラジカルによる酸化反応や、液相中におけるH2O2 やオゾンによる酸化反応が知られてきたが、イオン誘発によってどのようなメカ ニズムが駆動し硫酸エアロゾル生成が高めているかはわかっていない。本発表で は、Enghoff, Bork, Hattori et al. (2012, Atmos. Chem. Phys.)において発表 者らが行った安定同位体計測を用いたアプローチを紹介し、今後の安定同位体計 測を用いてメカニズム解明というブレイクスルーを狙うアイデアを公開すること で、名古屋大学との共同研究の具体化を目指す。また、せっかくの機会なので、 フィールド観測における応用に関してもあれこれアイデアを出し、今後の研究計 画に向けて案出しを行う。 **************************************************************************