<<<<<<<<<<<<<<<<<<< CRC News No.1885:2012年 5月 14日 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> CRC会員 各位                             CRC事務局 **********< 2011年度第2回測定器開発・優秀修士論文賞の選考結果 >********** CRCの皆様 2011年度第2回測定器開発・優秀修士論文賞が決定いたしました。 受賞されたお二人には、心からお祝いを申しあげます。 <<受賞者および受賞論文>> [優秀修士論文賞] 小野善将氏 (東北大学)  「高エネルギー実験のためのSOI技術を用いたPIXOR(Pixel OR)半導体 検出器の研究開発」 冨田夏希氏 (京都大学) 「大面積・高時間分解能Resistive Plate Chamber の開発」 本年度は昨年度に続いて2回目となり、応募数は13編と昨年度に比べて 減ったものの、少数精鋭でいずれもレベルが高い論文を応募いただきました。 事務局といたしましては、応募していただいた学生諸君や指導教官の 皆様に厚くお礼を申し上げます。 また、お忙しい中、限られた期日の中で審査をしていただいた選考 委員の方々には、多大な時間と大変な労力を割いていただき、厳正か つ綿密な審査をしていただきましたことを、心よりお礼を申し上げます。 秋の物理学会において、授賞式と受賞記念講演を開催すべく準備を進めております。 詳細が決まりましたら、またご連絡させていただきます。 来春にも2012年度の候補論文の募集を行いますので、関係の皆様方には何卒よろ しくお願いいたします。 受賞された論文、選考結果は、以下のURLからも参照することができます。 ┌───────────────────────────┐ │http://rd.kek.jp/ronbun/award2012.html │ └───────────────────────────┘ 問い合わせ先 〒305-0801 茨城県つくば市大穂1-1 高エネルギー加速器研究機構 測定器開発室 「測定器開発優秀修士論文賞」事務局 TEL: 029-864-6242 E-mail: dtp-ronbun [at] kek.jp ============================================================ 2011年度  測定器開発・優秀修士論文賞の選考結果 選考委員会(委員長 幅淳二) <<選考の経過>> 1. 一次選考(3/10 ~ 3/30) 10名の選考委員を2グループにわけ、それぞれ6~7編の論文を審査し、 各人の評価により順位をつけ、グループごとに上位の4編を二次審査に ノミネートした。評価項目は以下のとおり、 1) 論文の完成度、 2)背景技術の理解度、 3)開発された測定器技術の意義、 4)研究の独創性、 5)研究における本人の独創性、主体性 6) 測定器開発にかける熱意、最後までやりとげる意志 7) 総合評価(上記以外の特筆すべき点を含める) 2. 二次選考(4/3 ~ 4/23) 一次選考でノミネートされた計8編の論文を審査、各選考委員が 上位3編を選出した。 3. 最終選考 (4/27) 選考委員会を開催し、二次選考の8編の論文を審査して、委員全体で 意見交換を行った。その結果、論文の完成度、内容に優れた 2編に優秀修士論文賞を授与することに全会一致で決定した。 <<総評>> 今回は、震災直後の第一回につづく2度目の優秀修士論文賞となった。震災のために イレギュラーとなった昨年と違い、今年は物理学会秋の分科会・企画講演の締め切り である4月末に選考を間に合わせるべく、出願締め切りは2月末日となった。そのた めか応募総数が13編と昨年の22編と比べると少しさびしいことは否めないもの の、それぞれの質の高さにいささかの変りもなく、選考委員一同にとっては苦渋のし かし刺激に満ちた2か月間であった。 応募論文を分野別にみると、宇宙関連分野が5、素粒子3、原子核3、ビーム物理2 という内訳となり、宇宙分野やや優勢ということのようだ。またこれを検出器であえ て分類すれば、半導体5、ガス/液チェンバー2、レーザー2、電子管1、シンチ レータ1、Readout Electronics1、ビームパイプ1と、半導体関連がやや隆盛のよう だ。いずれにせよ多岐にわたる分野から、バラエティに富んだ開発研究の成果がよせ られており、我が国の測定器開発の前線が日本中で着実に進展しつつあることを実感 できる結果となっている。   昨年度は、100ページを超える秀作ぞろいからの難しい選考であったが、大実験グ ループの研究成果がそつなくまとめてあるため著者自身が見えにくいものも多いと いった感想も出ていた。今年も同様の秀作ぞろいは変わりないもの、著者の主体性・ 個性やこだわりの感じられる論文がいくつもあり、審査員一同閲読をおおいに楽しむ ことができた。もちろん論文賞であるからには、論文としての完成度も抜きにして語 ることはできない。最終的な受賞論文もそんな総合判断から選ばれている。 さて、今後望むらくは測定器開発という「研究」も、実験の要件を満たすべく検出器 性能を評価する/最適化するというだけにとどまらず、そこに内在する科学を意識し たものとして進められていければさらに大きな世界として拡がるものと考える。我が 国の測定器開発修士論文のさらなる発展と、本論文賞へのますます多くの応募を期待 するものである。 <<受賞論文>> 「高エネルギー実験のためのSOI技術を用いたPIXOR(Pixel OR)半導体検出器の研究 開発」 小野 善将 東北大学大学院理学研究科 新しい半導体技術であるSilicon-On-Insulator(SOI)によるピクセル検出器の開発が本論 文のテーマである。SOI技術に対する深い理解に基づき、半導体シミュレーションであ るTCADコードを使いこなして、放射線ダメージやクロストークなどの詳細な検討がな されている。問題解決のためにいくつか独創的な改善を提案し、それを実現・X線を用 いた検証まで行っており、測定器の開発研究として極めて完成度が高い。またそれを まとめた論文も要所を抑えたバランスの良い仕上がりとなっており、総合的に見て授 賞にふさわしいものと審査員全員の評価が一致を見た。 「大面積・高時間分解能Resistive Plate Chamber の開発」 冨田 夏希 京都大学大学院理学研究科 RPCを大面積高精度TOF測定の装置とするための基本動作試験やパッド形状に関する研 究が本論文のテーマである。著者自身が試作したプロトタイプを用いて丹念に実験と 考察を繰り返し、50ピコ秒の時間精度を達成した。背景技術の理解度、検出器開発 に対する熱意ともに十分であり、開発の際に経験した失敗などについて具体的に述べ られているなど自ら主体的に開発に取り組んだことがよく理解でき、これぞ修士論文 の研究であると審査員の評価が高かった。論文自体も非常に読みやすく図や写真など も丹念に仕上げられ、完成度も高く、審査員全員一致で授賞を決めた。 <<選考委員リスト(敬称略)>> [最終(二次)選考委員(9名)] 荻尾彰一、小沢恭一郎、住吉孝行、村上哲也、田島宏康、竹下徹、 宇野彰二、三部勉、幅淳二 [一次選考委員(10名)] 最終選考委員メンバーに加えて、吉村浩司 =====================================