<<<<<<<<<<<<<<<<<<< CRC News No.1668:2011年 3月 17日 >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>> CRC会員 各位 CRC事務局 宇宙線研支部 **************< RCNP研究計画検討専門委員会の議事録(案) >************** (原稿受信日時: Sun, 13 Mar 2011 15:49:49) 各位 平成22年12月22日に開催されました大阪大学核物理研究センター研究計画検討専 門委員会の議事録(案)をお送り致します。 なお、この議事録(案)は正式承認前の案であることを申し添えておきます。 研究計画検討専門委員会 委員長 上坂友洋 幹事 若狭智嗣、福田光宏、 (過去の議事録は以下のURLより閲読できます。 http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/Divisions/plan/p-pac/giji_index.html) ----------------------------------------------------------------------- 大阪大学核物理研究センター研究計画検討専門委員会議事録(案) 日時:2010年12月22日(火)10:00−17:00 場所:核物理研究センター本館2階会議室 出席者: ・委員:上坂(東大CNS、委員長)、若狭(九大、幹事)、川畑(京大理)、阪口 (阪大理)、秋宗(甲南大理)、延與(京大理)、萩野(東北大理)、荻尾(大阪 市大理)、山本(大阪市大理)、高宮(京大原子炉)、民井(RCNP)、保坂(RCNP)、 與曽井(RCNP)、オン・フィージン(RCNP)、福田(RCNP、幹事) ・センター長:岸本(RCNP) ・研究企画室:畑中(RCNP) ・研計委要請:能町(阪大理)、池上(ウプサラ大) 欠席者: ・委員:小林(東北大理)、菅沼(京大理)、中田(千葉大理) 配布資料: 議事次第 (資料1) Letter of Intent「Reaction particle breeding test       towards a new reactor」 (資料2) 今年度のPPACの活動について (資料3) 世界の加速器施設の動向調査:ハドロンマシン (資料4) H22年度研究会(前期・後期)報告書(6件) (資料5) 研計委委員選出と交代に関するガイドラインの改定(案) (資料6) 前回議事録(案) [1] 報告事項 =============== 1. 一般報告(概算要求、人事、将来計画など) (センター長:岸本) ---------------------------------------------------------------- 岸本センター長より、予算関連では、サブアトミック科学研究拠点のH23年度運 営経費が2千万円程減額になる見込みであること、H24年度概算要求の情勢も厳し く、大学で重点化した項目(光科学、イメージング、グリーンイノベーション) に上手く乗せることが求められていること、H24年度概算要求ではMUSICのミュー オン輸送部分が主になることなどが報告された。人事関連では、理論部の教授に 保坂氏(RCNP)が9月に着任したこと、それに伴い、准教授の公募を開始したこ と、拠点化に伴う特任助教の人事では、陽子ビーム強度増強のために植田氏、 CANDLES推進のために梅原氏、LEPS推進のために郡氏が着任したこと、残りの1 名は実験系の教授人事が決まるまで保留とすることなどについて報告があった。 また、将来計画については、学術会議で審議されている大型プロジェクトへのタ マ出しが重要であることから、核物理委員会での議論も踏まえ、サブアトミック 科学を柱に据えた中期計画の範囲内で発展させる形で二重ベータ崩壊実験のため の48Ca同位体濃縮技術の開発、MUSIC計画のミューオン引き出しビームライン整 備、UCNを用いたEDM研究、MUSIC計画のための新入射器の導入とビーム強度増強 を中心とした50億円規模のプロジェクトを学術会議に提案したこと、LEPS2は東 北大の光科学プロジェクトと合体させる形で共同提案していることなどが報告さ れた。なお、学術会議に提案したプロジェクトの内容については、次回の研計委 で詳しく説明する予定。 2. 原子核実験施設とRCNPの統合について (能町 阪大理) ------------------------------------------------------- サブアトミック科学研究拠点形成において前提とされている理学研究科附属原 子核実験施設とRCNPの統合について、阪大理の能町氏より進捗状況が報告された。 その中で、元々、阪大内の原子核研究施設が2つあることにより生じている予算 要求等での弊害を解消し、サブアトミック科学研究拠点の枠組みの中でそれぞれ の役割分担を明確にした上で発展的に統合するのが目的であること、組織として 人員や研究の幅を拡大するという点でも重要であることなどが説明された。現在、 理学研究科内のプロジェクト推進の母体として「基礎理学研究推進センター」を 新たに設立する方向で検討が進められており、サブアトミック科学研究拠点の計 測器開発を担う部署がその中で位置付けられるように提案中であること、全国共 同利用研の重要な役目である原子核物理の教育拠点としても位置付けたいこと、 理学研究科・RCNP・核運委・研計委などの意見を取り込んで将来の発展につなが るような形での統合を目指していること、豊中地区のアクティビティを特色ある ものにしたいことなどについても説明があった。 これに対し、統合の理念を明確にした上でRCNPとしての組織が拡大する点にお いては好ましいことであるが、教育と研究の役割分担を明確にしようとすると理 学研究科内の原子核研究基幹講座の存在意義が問われるなどの指摘があった。 3.Letter of Intent「Reaction particle breeding test towards a new reactor」 (池上 ウプサラ大) --------------------------------------------------------------------- ウプサラ大の池上氏より、(資料1)に基づいて「Reaction particle breeding test towards a new reactor」に関する報告があった。それに対して質疑が行わ れ、次のような意見が出された。 ・萌芽的な研究テーマとして興味深いが、物理の議論や実験としてのconfirmが 必要 ・RCNPで実験を行いたいという要求に対しては、RCNP側でどのようなサポート (人員やスペースなどを含む)が可能かを十分に検討すべき ・RCNPで実施される場合には、feasibilityを見定めるために1〜2年経過した時 点で報告を求めるべき 4. RCNP各部報告 ----------------- 4.1 サイクロトロン加速器の現状報告 (畑中 RCNP) --------------------------------------------------- RCNPの畑中氏より、サイクロトロンの運転状況、陽子ビーム強度増強に向けた2. 45GHz ECR陽子源の開発状況、AVFサイクロトロンのビーム引出部の改良などにつ いて報告があった。その中で、陽子源については、引出電極部の改造により耐久 性を向上させたこと、2kWマイクロ波電源の導入によるパワー増強などが進めら れていること、AVFサイクロトロンの引出部においてはビームの軌道と拡がりを 確認するために既存のファラディーカップを活用したビームプロファイル測定を 試みていること、トラブルではAVFサイクロトロンのバレーコイル冷却水の漏れ により真空リークが発生したことなどが説明された。また、陽子ビーム強度増強 に向けて新しい入射器の検討に着手したことなども報告された。 5. 平成22年度研究会報告 (福田幹事 RCNP) ------------------------------------------- 福田幹事より、(資料4)に基づき、平成22年度に開催された研究会(6件)に 関して報告があった。 a)「Fundamental Physics Using Atoms 2010」  開催日:2010年8月7〜9日  開催場所:大阪大学・豊中キャンパス・シグマホール(基礎工学部国際棟)  参加者:94名(国外3名、国内91名) b)「少数粒子系物理の現状と今後の展望」  開催日:2010年8月20〜21日  開催場所:福岡国際会議場  参加者:約70名 c)「重イオン蓄積リングの物理」  開催日:2010年9月24〜25日  開催場所:RCNP  参加者:約40名 d)「RCNPにおける核医学プログラム展開の可能性」  開催日:2010年9月29日〜10月1日  開催場所:RCNP  参加者:54名 e)「核構造の真の理解に向けて−テンソル力と高運動量成分−戦略会議」  開催日:2010年11月25〜26日  開催場所:RCNP  参加者:約30名 f)「Baryons10」  開催日:2010年12月7〜11日  開催場所:大阪大学コンベンションセンター  参加者:176名 6. その他 ------------ 特になし [2] 協議事項 ============= 1.研計委委員選出と交代に関するガイドラインの改定について ----------------------------------------------------------- 前回の研計委における、原子核実験・理論分野のセンター外委員の再任を連続2 期まで認めるという決定を受け、「研究計画検討専門委員会委員選出と交代に関 するガイドライン」の改定(案)(資料5)について審議が行われ、次の項目を追 記することが承認された。  ・センター外の核物理実験系および核物理理論系の委員は、2期までの再選を   妨げない。但し、2期目の任期終了後1年間は再選されない。その他の委員   は再選を妨げない。  附則  1 このガイドラインの改正は、平成22年8月10日から施行する。 2.核反応データ整備に係るミニワークショップ開催について --------------------------------------------------------- 核反応データ整備に関わっている複数の研究機関が有機的に連携し、戦略的に核 反応データを取得していくためのミニワークショップの開催について上坂委員長 から説明があり、先日、九大と原子力機構が共同で開催したワークショップの結 果なども踏まえ、関係者の間で内容を調整した上で半年以内を目処にミニワーク ショップを開催したい旨、提案があった。これに関連して、RCNPの畑中氏からは、 最近、韓国ポハンで開催されたJAAWS(Joint Asian Accelerator Workshops)にお いてもアジア諸国の核データへの関心は高いこと、中性子の核データについては 低エネルギーから高エネルギーまで幅広く整備が求められており、役割分担を明 確にしてデータを取得していくべきことなどのコメントがあった。開催予定のミ ニワークショップにおいては、RCNPがカバーするエネルギー領域の荷電粒子及び 中性子の核データを中心に議論する方向で了承された。 3.将来計画について --------------------- 3.1 世界の加速器施設の動向調査 --------------------------------- 3.1.1 ハドロン (阪口 阪大理) --------------------------------------- 阪大理の阪口氏より、国内外のハドロン加速器施設の現状とプロジェクトの動向 について報告があった。現時点では、J-PARCがハドロン物理の先導的な役割を担 っており、ハドロン2次ビーム、ニュートリノ、高運動量陽子などの物理を目指 している。国外のハドロン加速器施設では、GSIのFAIR計画、BNLのRHIC-IIや eRHIC(e-Aコライダー)、中国蘭州の重イオン・クーラーリング、中国原研の原 子炉を用いたRIビーム施設などのプロジェクトが進行中あるいは計画されている。 具体的には、GSIのFAIR計画では、多彩な高エネルギー重イオン・陽子加速器群 を整備し、重イオン衝突、超重核元素、mesonic nuclei、p-barなどの物理を目 指している。COSYでは2.88GeV陽子ビームを用いたストレンジネスやη-mesonic nucleiなどの物理が特徴。 従来、コライダーは単目的で作られていたが、固定ターゲットのように高いルミ ノシティで多目的なものができれば大変面白い。エキゾティック・ハドロン物理 はB-factoryに代表されるようにlepton/photonマシンが主流。中間子-原子核物 理ではπ-mesonic nuclei以外は最適な生成反応が確立していないものの、固定 ターゲットならば数〜100GeVのエネルギー領域のビームが必要。バリオン-原子 核物理用としてはJ-PARCやGSIなどに代表されるようにかなり高いエネルギーの 加速器が必要で、重イオンビームによる生成は数例、陽子ビームではまだ成功し ていない。高エネルギー重イオン衝突物理はLHCやRHICが代表的。 3.1.2 大強度陽子 (福田 RCNP) -------------------------------------- RCNPの福田幹事より、大強度陽子加速器施設の現状とプロジェクトの動向につい て報告があった。大強度陽子加速器の開発は、中性子・パイオン・ミューオン・ ニュートリノ・RIBなどの2次粒子ビーム強度増強が主目的であり、素粒子・原 子核物理以外の用途として加速器駆動型未臨界炉(ADSR)や核変換消滅処理など を目指した10MW以上のハイパワーマシンの開発も進められている。PSIでは最近 590MeV×2.2mA=1.3MWの加速に成功し、パイオン/ミューオンや中性子を利用し た多分野の研究が行われており、3mA、1.8MWのゴールに向けて開発は進行中であ る。TRIUMFでも500MeVの陽子ビーム強度を400μA(0.2MW)まで増強するプロジ ェクトが進行中であるほか、ISAC-II(50kW超電導LINAC)やARIEL(10mA、50MeV 電子LINAC)によるRIビーム生成も目指している。 3.1.3 不安定核 (上坂委員長 東大CNS) ----------------------------------------------- 東大CNSの上坂委員長より、不安定核ビーム施設の現状と将来計画について報告 があった。世界各地で新たなRIビーム施設の建設・整備計画が多数、進行中、或 いは提案されており、主なものは次の通り。最も先行している理研のRIBFでは、 多種粒子測定装置SAMURAIや不安定核標的SCRITなどが数年以内に動き出す予定。 アジアでは、中国蘭州のHIRFLやCAEAの原子炉でRIビーム利用に向けた施設拡張 が進められている他、韓国では大規模で野心的なKoRIA計画が提案されている。 欧州では、GSIのFAIR、GANILのSPIRAL2、CERNのHIE-ISOLDEが進行中。特にFAIR では、1.5GeV/uの238Uビーム強度の増強(従来の100〜1000倍)とUビームの高エ ネルギー化(〜34GeV/u)などが計画され、e-A collisionや重イオン衝突、p- barなどをはじめとした多彩な物理の展開を目指している。GANILのSPIRAL2計画 では、数十MeV/uまで加速できる超電導ライナックを新規に建設し、一次ビーム を用いた超重元素だけでなく、UCターゲットで生成した不安定核を既存のサイク ロトロンで再加速することも想定しており、第1期までは予算が認められている。 長期的にはCERNのHIE-ISOLDEと共にEURISOL(予算〜1.3Bユーロ)に統合され、 132Snなどの不安定核を150MeV/uまで加速する予定。北米では、MSUのFRIB、 TRIUMFのARIEL、ANLのCARIBUなどの計画があり、特にFRIBでは、超電導ライナッ クで加速した200MeV/uのUビームなどを用いて核破砕反応により不安定核を生成 し、そのまま利用、Heガスで減速させて利用、さらに多価イオンにして再加速し たRIビームを利用することも計画している。 3.1.4 電子 (與曽井 RCNP) ---------------------------------- RCNPの與曽井氏より電子加速器施設の現状と将来計画について報告があった。電 子加速器施設では、加速器の性能のみならず、検出システムにどういう特徴を出 せるかがkeyになる。第4世代に位置付けられるJLabでは、6GeV、270μAの電子ビ ームや偏極ビームが利用可能だったが、現在は、12GeVにアップグレードするプ ロジェクトが進行中で、実験ホールも拡張予定。JLab以外の施設ではtagged photonとcrystal ballを組み合わせたものが主流だが、新しい原子核・ハドロン 物理を目指すプロジェクトが計画されているところはない。Duke大学ではFELと の組み合わせで低エネルギー光子を原子核共鳴や天体核物理などに利用している。 放射光を用いた逆コンプトンガンマ線の利用はSpring-8やニュースバルなどが先 行。RIビームとの組み合わせによるe-Aコライダーも出始めている。 3.1.5 蓄積リング (川畑 京大理) --------------------------------------- 京大理の川畑氏より、重イオン蓄積リングの現状と将来計画について報告があっ た。現在、稼働中の重イオン蓄積リングは、GSIのESRと中国蘭州のCSRのみで、 stochastic coolingやelectron coolingと組み合わせたschottky法及び isochronous法による不安定核の質量分析とβ崩壊の寿命測定が主たる物理。ESR では、重イオンを減速・トラップして質量測定を行う装置HITRAPにより QEDの検 証を行うなど、原子物理も併せて行われている。シンクロトロンを2台、蓄積リ ングを4台装備するFAIR計画においても、より重い不安定核の質量分析やβ崩壊 寿命測定が行われる他、逆運動学の直接反応やe-A散乱による物理も実施される 予定。予算規模は約1200Mユーロ(加速器本体は530Mユーロ)。 RCNPの将来計画の一つの選択肢として検討を進めている蓄積リングの案では、ラ イナックを入射器としてリングサイクロトロンで加速した大強度のパルスビーム を用いて不安定核を生成し、それを蓄積・加減速・冷却するリングと後続の実験 専用蓄積リングを想定している。これにより、FAIRと同様にschottky法を用いた 質量分析やβ崩壊寿命測定が行える他、全反応断面積測定、磁気モーメント測定、 非弾性散乱の高分解能測定などの新たな提案も出されている。加えて、インディ アナ大では実現されなかった奇数中重安定核の精密測定などにもこの蓄積リング は有用である。また、他にはない初めての試みとして、不安定核ビームの衝突リ ングの提案もあり、数十ミクロンオーダーのビームサイズでの衝突により、10** 24〜26オーダーのルミノシティが期待されることが示された。また、一次ビーム の加速と、不安定核生成用内部ターゲットによるエネルギー損失をリカバリーす る機能を兼ね備えた新しい概念のFFAG(MERITS:Medium Energy Rare Isotope Transfer and Separator)の提案も行われ、1バーン程度の全反応断面積を仮定 すると、1000〜2000ターン程度周回させることにより一次ビームを全て核反応で 使い切ることができ、核反応の収量が50倍に上げられること、薄いターゲットを 用いることにより低エネルギーRIビームの生成も可能になることなどの利点が明 らかにされた。 3.2 将来計画についてのコメント−RCNP内部より− (民井 RCNP) ------------------------------------------------------------------ RCNPの民井氏より、従来、RCNPが得意とする励起状態の精密核分光を発展させた 「High resolution spectroscopy of proton-rich unstable (and stable) nuclei with light-ion reaction」をベースとするプロジェクトの可能性につい て報告があった。リングサイクロトロンの新入射器整備計画に基づき、既存の AVFサイクロトロンで得られる大強度の軽イオンビームを用いてfusion reaction により寿命の比較的長い陽子過剰不安定核を生成し、それを分離して10μm程度 の小さなスポットを形成してターゲット物質(固体水素や、金、CHOなど)に注 入。さらに、新入射器とリングサイクロトロンにより加速した高強度の軽イオン ビームをその不安定核ターゲットまで輸送し、10μmの小さなスポットを形成し てルミノシティを高め、既存のGrand-RAIDENやLASを用いて高分解能測定を行う というもの。1pμA程度のビーム電流を10μmくらいに集束させると、1mb/srの反 応断面積では1000sec当たり1イベントの収量がGrand-RAIDENで期待される。不安 定核の寿命との兼ね合い、バックグラウンドの低減、S/Nの向上などが課題。大 立体角の高速同時計測検出器や、偏極RIターゲットと偏極軽イオンビームの組み 合わせによる反応を用いた実験なども期待される。 3.3 議論 -------------- 以上の動向調査や将来計画に向けた検討の報告などを踏まえ、議論が行われた。 そこで出た主な意見は次の通り。 ・精密核物理は我々にとって大変興味深いが、他分野の人たちからも広く賛同を 得るためには、何を目指しているかをわかりやすくアピールすることが必要。 ・科学的な見地で目標を明確にし、他の施設にはない、魅力ある加速器施設の実 現により新たに開拓できる領域を目指すべき。つまり、他に優るような加速器・ 実験装置と物理の両立が重要。 ・理論の観点では、例えば、ω中間子交換、π中間子交換、Σ粒子交換などに関 して未解決の問題が残されており、それらを追求するような将来計画の方向性が 打ち出せないか。その際、「中間子なのか、クオークなのか」といったわかりや すいキーワードでアピールするのが効果的。「多体効果として現れる多様性」も ホットな話題。 ・蓄積リングは、誰も手を付けていない領域や既に探求をやめた領域を開拓する 可能性を秘めている。 ・安定核の実験テクニックを不安定核に応用し、発展させるべき。高精度精密核 物理はRCNPの売りであり、安定核近傍の陽子過剰核などに対象を拡張するのは他 ではやられていない方向性。 ・実験精度の向上とともに、実験結果を裏付ける理論計算の精度を上げる努力も 必要。実験精度をどこまで上げるかは程度問題だが、理論と実験の差を厳密に議 論できるようになれば、狙いを定めて実験精度を向上させる価値が高まる。 ・数十MeV/uの不安定核ビームは魅力的。FRIBやSPIRAL2に優るような物理を具体 化して進める方向もあるが、明らかに他の施設と競合するような領域では予算が 通りにくいため、新しい切口が必要。不安定核の質量測定などは主テーマになり にくい。 ・従来とは異なる視点でのアプローチが必要。これまでにやってきたこと、やら れていないことの整理が必要ではないか。核子多体系の問題は、まだ理解されて いないことが多い。 ・ハドロン物理を主体にしてJ-PARCを超えるような大規模な施設を要求するのは あまり現実的ではないが、ハドロン物理のある部分を担えるようなCOSYクラスの 中規模な加速器施設ならRCNPでも可能。どういう新しい道具を持つかが鍵になる。 コアになるテーマだけではなく、拡張性を持たせることも重要。 ・他の施設との直交性は必要。一次ビームだけでなく、二次ビームの質も上げる ことにより他との差別化は可能。 以上の議論を踏まえ、次回のP-PACにおいては、以下の項目を念頭に審議を行う こととなった。 ・将来計画で目指す方向性のキーワードを整理し、装置としてどこで勝負するの かを明確にする。必要に応じて研究会などを企画する。 ・勝負すべき物理の内容とテクニカルな課題を検討するワーキンググループなど を立ち上げて、23年度内にLetter of Intentをまとめられるように準備を行う。 ・並行して行われている「日本の核物理の将来」精密核物理WGでの議論も参考に していく。 4.前回議事録承認 ------------------- 2010年8月10日に開催された研計委の議事録(案)(資料6)を承認した。 5.その他 ----------- 5.1 次回の研計委開催日程に関して ------------------------------------ 次回の研計委については、2011年度の新委員が決まり次第、日程調整を行うこと になった。 以上 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